#004 あなたを映し出す風景
あなたは今、どのような姿をしているだろうか? 見知らぬ風景の中に見慣れたあなた自身が突然放り出されて、困惑しているだろうか?
どうか、そのような困惑――それは得難い経験だ――を忘れずにいつつも、物語が「あなた」と呼びかけることに慣れていってほしい。物語はあなたの外見を敢えて細かく定めない。それは、物語の展開に合致する限りにおいて、あなたが想像したい通りの姿である。あなたは特に場違いな姿をしてはおらず、誰もあなたのことを特に気に留めはしない。あなたは一介の、三十路の男の旅人である。
折しも一人の男がすれ違いざま、あなたに声を掛けて去っていく。
「雨が降りそうだぞ、急ぎな」
あなたは彼に返事する。
「わかった、ありがとう」
あるいはあなたは、先のパラグラフで選択を迫られたことについて不満を抱いただろうか? なぜ読者である私がいちいちそんな面倒なことをしなければならないのか、と。
どうか、そのように選択を迫られることにも慣れていってほしい。あなたは一本道の物語を他人事のように辿っていけばよいのではない。あらかじめ言っておくと、選択を迫られるシーンはそれほど多いというわけではない。ただし、選択によっては、その後の物語展開が大きく変わる。あなたは様々な選択を迫られ、別の選択をしたらどうだっただろうかと気を揉みながら、あなた自身の旅を続けねばならない。
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