第21話 「けど好きだろ?」
夏が訪れた。今年は異常気象だというニュースキャスターの声に、そっとカーテンをめくってみる。
暑い、というより痛い。大げさではなく、怒り狂った太陽が人間を痛めつけた。
「ほんとに行くの?」
「コテージだからそんなに暑くはないだろう。なんていったって、エアコン完備だ」
「でもバーベキューは外でしょ?」
「簡易キッチンも一応ある」
一応とつけたのは、使うつもりはないのだろう。
春頃に、ふたりでバーベキューをしようと約束した。紅野家では、夏や秋になると外で肉を焼くのだそうだ。家族を作る儀式めいたものであり、環境が変わってもしたいという。
バーベキューセットは向こうですべて貸してくれるようで、自分の荷物だけを持って助手席のドアを開けた。
都会から車で一時間ほど走らせると、高層マンションやビルからかけ離れた場所に到着する。目の前には泉があり、子供たちが大声を上げて水を掛け合っていた。
真夏でも緑に囲まれた
「鍵もらってくるから、待っててくれ」
頬にキスを残し、千秋は大股で案内所へ向かった。
小さな別荘だ。庭にはバーベキューの準備がされていて、あとは火と材料があればすぐにでも始められる。
再び、子供たちの絶叫が聞こえた。滑って転んだらしく、全身びしょ濡れだ。
「入りたいのか?」
「うん」
「え」
驚いた、と言わんばかりの声だ。
「着替えは余計に持ってきてないぞ」
「どうせこの天気だしすぐ乾くよ。ね?」
「最近、可愛い子ぶるのがうまくなってきたな」
わざとらしく息を吐き、ひとまずコテージの中へ入った。
いつもの流れで覚悟はしていたものの、いざ熱い手が服の中へ侵入してくると、うっとりと身を委ねそうになる。
誘いを避けると、千秋は怪訝な顔をした。
「お腹空いた」
「性欲より食欲か」
はは、と微笑し、千秋は手を引き抜いた。
指先が胸の突起にわざと触れていき、声を漏らすのをこらえた。
「冷蔵庫の中に肉入ってるってよ」
駆け引きが得意なのは千秋も同じだ。未練がましい目をもろともせず、冷蔵庫のドアを開ける。
ふたり分にしては多い食材だ。焼きそばも入っている。
千秋は火おこしも手慣れていて、自ら買って出てくれた。
「すごいすごい」
「文明の利器って便利だな」
「小学生の頃に泊まりがけで山にこもって自然と触れ合うってイベントがあったんだけど、マッチやライターなしで火おこしさせられたんだ」
「ああ、そういうのあったな。結果は?」
「マッチ最高」
「分かる。縄文人じゃないんだから、最初からマッチよこせってぶうたれてたな」
焦げ目のついた肉からは、お腹を刺激する香りがする。持参した焼おにぎりも焼き、熱いうちに口の中へ放り込んだ。
「炭で焼いたのって、やっぱり味が違うよね」
「ああ。家でもやりたいくらいなんだがな」
男ふたりではあっという間に平らげ、デザートにマシュマロも焼いた。
夕方になると、泉にいた子供たちは引き上げていった。
心地よい風が吹き、水面を揺らしている。
「入りたくてうずうずしてるな」
「一緒に入りたい」
ハーフパンツだった大地は靴と靴下を脱ぎ、千秋はズボンごと膝上まで上げた。
ほどよく筋肉のついた足は、まったく日焼けをしていない。
大地は盗み見しつつ、つま先からそっと沈めていく。
ほどよい冷たさで、氷のようではない。ずっとつけていられる温度で、ぱしゃぱしゃと音を立てた。
「足だけでいいのか?」
「身体も浸かりたいなあ」
「たまには童心にかえろう」
千秋はシャツを放り投げ、ズボンのまま顔ごと泉に突っ込んだ。
「ほら、来いよ」
「う、うん……」
シャツを脱ごうか迷っていると、いきなり腕を引かれて身体ごと沈んだ。
「ちょっ……」
「はは、童心にかえるって言ったろ?」
「な、なに……」
千秋の視線をたどると、胸元に落ちたまま動かない。
内側から押しやる粒が、白い布地に浮き出ている。
咄嗟に隠すが、押し留められてしまう。
恥ずかしくなって視線を下げると、濡れたズボンにくっきりと浮かび上がっているのは雄の象徴であり、苦しげに頭をもたげている。
隠そうともせず、男は茂みに腰を下ろすと、堂々と膝を開いて手を後ろについた。
吸い寄せられるように内股に膝を立てて座るが、すんでのところで持ちこたえた。
「……………………」
「そんな顔するなよ」
「水浴びするって言ったのに」
「我慢できなかった」
悪びれもなく、大地の腕を掴むと強制的に立たせた。
幸いなことに、子供はいなくなっていた。帰ろうと荷物をまとめている大人だけで、こちらの様子を気にする素振りもない。
子供は残酷だ。平気で指を差すし、淡々と違和感を大人に訴える。
大きなタオルを腰に巻き、いそいそと泉を後にした。
「大地」
扉を施錠したと同時に、服をすべてはぎ取られた。
生まれた姿のまま五感すべてを絡みつかせ、ベッドに寝転んだ。
「腰だけ持ち上げて」
「それ、恥ずかしいんだけど……」
「けど好きだろ?」
不敵に笑い、大地の腰だけを高く持ち上げる。
「ひっ……あ……」
ぬめりとした感触が広がり、引きちぎれそうな声を上げる。
ひぐらしの鳴き声も耳に入ってこない。それほど、神経が研ぎ澄まされていた。
官能を刺激する水音が響き、臀部に力を込めた。
許さないとばかりに、親指が双方の間に埋められ、外側へ押しやる。
「ああ、あ……う…………」
蠢きながら妨げようとする肉壁を背き、奥までのめり込んでくる。
歪に秘穴が曲げられるたび、次第に歓喜の悲鳴が上がり出す。
真っ黒な空間が表し、奥を覗きながらにんまりと笑う。
「だいぶ広がったな」
「あ、あう……」
「後ろだけでいってみ」
恐ろしいことを言ってのける男を睨むと、すでに繋がる体勢だった。
先端は光り、赤黒く、へそまでそそり立つ。何度か扱き、めくれた先端をとろけた秘穴へ攻め入った。
「あーっ……」
宣言の通り、決して前に触ろうとはしなかった。
緩急をつけて繰り返されるたびに、膨らんだ性も上下に揺れる。
「ダメだ。後ろだけって言っただろう」
かすれた声で、千秋は笑う。
「ほら、頑張れ」
「いいとこ……ついてっ……」
最奥へ突かれると、小刻みに揺れて前部の先端から透明な糸が布団に垂れる。
「あっだめ……いく、いく……っ」
薄めの尻が元の形に戻ろうと収縮を繰り返す。
最奥で精が放たれると、じっと動かなくなった。
一滴たりとも漏らすまいと蓋をして身体に馴染ませていく。
布団に擦れた先端から、濃厚な愛液か溢れ出す。
「いけたな」
千秋は穏やかな笑みをこぼし、背中に胸元をくっつけた。
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