【10】 新生活

 二階の奥の部屋を俺、そのとなりをルナの寝室にした。理由は単純、見晴らしが良いからである。


「残りはまあ、物置部屋でいいだろう」

「ええ、家具も増やしていきたいですね。……あ、そうだ、そろそろご飯にしましょうか。買出しに行ってきますね」


「ああ、じゃあ俺も行こうかな」


「いえ、こちらはお任せ下さいませ。カイト様には、この家の整理とかをお願いしたいのです」

「ちょっとホコリっぽいもんな。分かった。こっちは掃除をしておくよ」


「お願いします」


 ぺこりとお辞儀じぎして、ルナは買出しへ向かった。


 そして、ひとりになる俺。


「ひとりだとさびしいものだな~」


 けど、そうも言っていられない。

 こんな広々とした家だ。掃除は大変だぞ~。



 ◆



 ルナが帰ってきた。

 大男を連れて。


「なっ……なんだお前ら! ルナを放せ……!」


「ヒッヒッヒヒ……。おいおい、聞いたかアニキ」

「ああ、弟よ。このクソガキは女を放せと言ったな。誰に向かって言っとるんじゃボケがあああああああ!!!」


 大男は威圧しながら寄ってくると拳を振り上げ、俺の顔面を殴ってきた。



「ぐはあぁぁっ――――――!!!!!」



「カイト様……! そんな……」



 世界がぐるぐる回り、壁に叩きつけられた。

 くそ……! いきなりとか、受け身を取る余裕すらなかった。くぁ、頬に激痛が……ジンジンする、クラクラする。どうかなりそうだ……。

 この二人組、ルナを人質にして土足で家に入ってきたかと思えば、途端とたんに暴力かよ。いったい何が目的だ……?


「いいか、小僧。俺たちはこの近辺を仕切ってる『グラットン兄弟』ってモンだ。余所者よそものが店を開くだとか噂を聞いてやって来たが、挨拶あいさつがねぇとはどういう事だ」


「し、知るかよ……」


 ゲシッと今度はられた。


「…………かぁっ」


 やべぇ、殺される。

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