追放された付与魔法使いの成り上がり 〜勇者パーティを陰から支えていたと知らなかったので戻って来い?【剣聖】と【賢者】の美少女たちに囲まれて幸せなので戻りません〜

蒼月浩二

第一章

第1話:付与魔法使いは追放される

「アルス・フォルレーゼ……お前はクビだ!」


 な、なんだって……?

 俺は、耳を疑った。


 俺は付与魔法師として勇者パーティで活動している。


 勇者パーティは世界を脅かす魔王・魔族に対抗するために各国が共同で組織した選りすぐりのパーティだ。

 歴史的にはかなり古くからあるらしい。 


 そこで、俺は主に強化魔法を味方に付与し、仲間をアシストする役割として勇者パーティに入った。

 誰よりも付与魔法に関しては実力がある自負がある。


 俺がパーティに入ってから、勇者パーティは苦戦していた魔物を余裕をもって倒せるようになったし、移動速度を向上することで余計な時間を削減できるようにもなった。


 飛躍的に効率が上がった。

 そのはずだったのだが……。


 朝食を食べ終わった後、朝の定例会議で俺のクビを宣告されてしまった。

 俺が何かとんでもないことをやらかしたわけではない。


 いつも通り朝を迎え、今日も一日頑張ろうと気合いを入れていたところだった。

 俺は動揺を殺し、落ち着いた声で勇者パーティのリーダー、ナルドに聞き返す。


「な、なんだよ急に……。何かの冗談か?」


「冗談なわけねーだろ! さっき決めた、お前はクビだ。何度でも言うぞ! お前はクビだ! クビ! クビ! クビ!」


 さっき決めたって……。

 普段から気分屋だとは思っていたが、まさかパーティメンバーの進退まで安易に決めてしまおうとは……。


「アルス、確かにこれまでお前の強化魔法は重宝してきた。だがな、強化魔法はポーションで代用できるんだよ!」


「で、でもポーションより俺の方が効果は——」


「ああそうだ! ポーションよりお前の強化魔法の方が強い。だがな……その差はお荷物を抱えるほどじゃねえんだ! 経験値泥棒が!」


「……!」


 この世界では、魔物を倒すことで経験値を獲得でき、その経験値量に応じて人はより強く成長することができる。


 魔物を倒して得られる経験値は一定であり、パーティメンバーが増えれば増えるほど一人当たりの経験値量は減ってしまう。


 要するに、より多くの経験値を得るために俺をパーティから追い出したいというわけだ。


 しかし、俺だって立派に勇者パーティに貢献しているつもりだ。

 急にクビだと言われても納得できない。


 きちんと俺がパーティの役に立っていることを説明して考え直してもらおう。

 秘密にしていたわけではないが、説明するまでもないことだと思って言ってなかったことがある。


 これを言えば、考え直してくれるかもしれない。


「ナルド、実は——」


「ああうるせえ! お前のクビはもう決定事項なんだよ! 何を言おうが覆らねえ! 出ていけ!」


「……っ!」


 長年——とまでは言えないかもしれなが、三年も一緒に冒険をしてきたパーティメンバーの言い訳など聞く価値もない、か。


「そうだ! てめえは邪魔なんだよ!」


「お前のせいで俺まで割り食ってんだからな! そこんとこわかってんのか?」


「空気読んでよね〜」


 今まで仲間だと思っていたパーティメンバーたちから、次々と心ない言葉を投げられた。


 そうか、そうかよ。


 そっちがその気なら、もういい。


 俺は、固く拳を握りしめた。


「わかったよ……。後悔しても知らないからな? こんな形で追い出されて、俺が戻ってくると思うなよ?」


 俺がそう宣言すると、パーティメンバーたちは顔を見合わせて俺を嗤った。


「どの口が言ってんだテメー。お前なんか呼び戻すわけねーだろが!」


「そうだ! 勘違いも大概にしろ!」


「これで効率が上がるな!」


 …………。


 やれやれ、何か勘違いしているようだな。


 このパーティは、俺が——というより付与魔法があったから成り立っていたと言っても過言ではない。


 そのことを理解せず……いや、理解しようともせずに追い出そうとするとは。哀れでしかない。


 俺は、勇者パーティ自体には大した思い入れはなかった。俺の家族を奪った魔王、魔族に仇討ちをするのと同時に、これ以上の災厄を未然に防ぐために勇者パーティを利用していた。


 既存の組織を使った方が簡単だと思っていたが……そうではなかったようだ。

 この辺りが限界らしい。


 十中八九、勇者パーティは俺がいなくなったことで困り、俺を呼び戻そうとするだろう。

 しかし、宣言したように俺はもう戻るつもりはない。


 俺は、完全にこのパーティを見限ったのだ。


「じゃあな」


 元パーティメンバーたちに一言声をかけるが、ジロジロと見るだけで返事を返す者は誰一人としていなかった。

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