16話目

「あの」

肩を叩かれ振り返ると少し息を切らせた男性が何かを差し出した。

「落としましたよ」

見覚えのある定期入れに「えっ?」とポケットに手を入れてみるけれど当然なくて「すみません」と慌てて受け取れば「どういたしまして」と微笑んだ彼。

そのまま去っていく彼から目を逸らせなかったのは……。

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