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「ここ?」


 クリガーマン教授と一旦別れ、再び合うまで時間が相当あった。

 いかにして暇を潰すか、それが問題であった……?

 いや、そんなに時間を潰すなど無かった。

 実は冒険者ギルドに依頼を見に行った際にいろいろと仕事を見つけてしまい、暇をもてあそぶなんて事は無かった。

 だけど、三人共が匂いがキツイところに行かなくてはならなくて、帰って来た時には体中から鼻をつままなければならないほどの匂いがしていたのはどうなのだろう?

 冒険者ギルドで報告をした後、公衆浴場に入り着替えをして何とか匂いは落ちたと思うのだが……。


 それはともかく、公衆浴場を出た後にヴィリディスにとある店に案内された。

 それが今の状況だ。

 何というか、流行りそうな場所でありながら人目に付きにくい?

 そんな場所だ。

 だから、目の前のお店に入ろうとしている人は一癖も二癖もありそうな人ばかり。

 ん?

 って、事はヴィリディスも、そうなのか?

 あ、うん。

 そうだな。

 そんな感じする。


「と言う事で、ここで教授と落ち合う事になってる」


 場所は先程思った通りだけど、建物はだいぶ異なる。

 一見ボロそうに見えるんだけど、そういう作りみたい。

 流行ってそうに見えないって、こういう建物の事を言うんだろうね。


「ここは何処の陣営にもくみしていない。教会にも、冒険者ギルドにもね」

「ん?教会はわかるけど、冒険者ギルドも関係があるのか?」

「あれ?大ありなのは知らんのか?」


 知らんよ。

 冒険者ギルドと教会が手を組んでいるなんて。

 どういう事?


「冒険者ギルドで怪我人が出るとするだろう。そうすると怪我を治さなきゃならん。どうやって直すと思う?」

「あぁ、そういう事か。教会に強力を仰ぐって事だな」

「それで正解だ。まぁ、王都の教会くらいだけどな。冒険者も貴族の三男とか、金持ちがいっぱいいるから、当然と思ってくれていい」


 確かにヴィリディスが口にした通りだ。

 教会の奇跡、--光属性魔法だと僕たちは知っているけど、あえてこう呼ぶ--、を期待するとどうしてもお金が掛かる。

 そのお金を持っているのは貴族や豪商などだから、冒険者ギルドと教会が癒着していても可笑しくない。


 もし、冒険者ギルドで教授との会話を聞かれでもしたら、教会に知られて思いもよらぬ事が起こる可能性があるからね。


「と言う事だ。ここで立ち話をしていても仕方ない。入るとしよう」


 僕たちはここで話していても何も始まらないと、話を切り上げ目の前のお店に入るのだった。


「ほぉ、広いな……」

「わたし、こんな所初めてヨ……」


 田舎者丸出しの感想を口にする僕とフラウ。

 元貴族だった僕は広い屋敷ってのは何となく見慣れているけど、市井にあるお店でこんなに広いホールを設けているのは初めてだ。

 フラウは……。何も言うまい。


「すまない。教授と会う約束をしているのだが……」


 僕たちが田舎者丸出しの感想を口にしているのを横目にヴィリディスは近くの店員に要件を伝えた。

 名前を出さなくてわかる訳無いと思うのだが……。


「ええ、聞いております。まだお見えになってはいないですけが」

「そうですか……」

「ですが、お部屋は用意してありますのでご案内いたします」

「それはどうも。ほら、二人共。ボーッとしていると置いて行くぞ」


 店員さんは僕たちを微笑ましい眼差しで見て来る。

 田舎者って思っているんだろうな。

 まぁ、実際田舎者なんだけどね。


 辺境伯領と言う大きな都市に住んでいたけど、王都に比べれば月とスッポン。

 田舎者に相応しい?だろうね。

 うん、ちょっと目から汗が流れて来たな。


 それから、垢抜けた店員さんに案内され、店の奥の部屋へと通されるのだった。

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