-29- トロール狩り1
トロール。
人を食料としか思っていない凶暴な魔物である。
身長は二メートル五十くらい。ゴブリンとは比べ物にならない程の膂力を持ち、扱う武器はどんな物でも死をもたらす。
身体を傷つけられても少し経てば治ってしまい、不死身なのか?と思われる能力を持っている。しかし、傷口を焼いてしまえば能力を発揮できないので、火魔法を使える人を同行する事が必須とされている。
また、切り落とした腕や脚が勝手に動き回るなど、信じられない目撃例もあるので、出会ったら即座に逃げる事をおススメされている。
「トロールかぁ……。苦戦するだろうなぁ」
僕たちはクリガーマン教授率いる兵士たちと共に件の遺跡へと向かっている。
あと少しで到着だな。
”初めまして”と挨拶してからすでに二週間。
教授の助手としての仕事は直ぐに終わり、遺跡遠征のための準備をしていたためにそれだけの時間が掛かったのである。遺跡までは三日だったがそれまでが長かった……。
その用意も当然だろうと思う。
兵士が十七人いる。内訳は隊長が一人と槍使いが十人。剣と盾を用意しているのが四人だ。そして、魔法兵が二人。恐らく火魔法が得意なのだろう。
さらに教授の手伝いで三人。荷物持ちを兼ねている。
人員や食料などを用意するのに手間取ったのだろう。
恐らくね。
ちなみにであるが、教授らはあの演習場に泊っている訳ではなく、サラゴナの街に王立高等教育学院の出先機関があり、そこに泊っている。
王立高等教育学院って結構お金持ちなのね……。
あ、王立だから当然か。
「それにしても結構な数ね。楽勝じゃない?」
クリガーマン教授が率いる部隊は彼を含めて二十人程。内訳は先程言った通り。
少数とは言えかなりの部隊と思っていいよね?
トロール一匹二匹なら後方から魔法の支援が受けられるから楽勝だろう。
普通の魔物ならそう考えるのが普通だ。
「フラウ、たぶん苦戦するぞ」
「そうなの?」
実は、フラウが想像している様な簡単なお仕事ではない。
夜行性のトロールとは言え、暗い森の中なら昼夜問わず歩き回っているだろう。
豊富にある森の食料を求めて。
それが一匹?
トロールが一匹である筈がないのだ。
「たぶん、トロールは何匹もいるぞ。ゴブリンほどの数が集まる……って事は無いけど、十はいるんじゃないのか?最悪……」
「ゲッ!」
カエルが潰された時に発するような鳴き声を出すのは理解する。
十匹、いや、十体のトロール……は少し大げさか?を相手にするんだからこれだけ人数では、普通は足りない。
兵士が鍛えているからと言ってもね。
そこで役に立つのがこの人、ヴィリディス。
火魔法のスペシャリスト。有名かどうかは置いといて、僕は彼以上の使い手を知らない。
王城には彼以上の使い手がいるかもしれないけど、こんな事では動いてくれない。
「ま、一体一体駆除して行けば、何とかなるだろう」
「気楽でいいわね~。ワタシは気が重いわ……。はぁ~」
フラウの心配もわかる。
トロルに決定的なダメージを与えるのは火魔法であることは間違いない。他には首を落とすくらいか?
腕や脚を切断するには剣や斧、また
うん、心配なのは当然だね。
トロールに効く毒があれば別かもしれないけど……。
そんなの無いよね?
ただ、彼女は最近、”狙った場所から外れた!”とか言いながらもヘッドショットを決めてるから、間違えて眼球を射貫いてしまう事があるかもしれない。
眼球を射貫かれて、平気な生き物っているのかねぇ?
まぁ、彼女にはそれを期待したい所だ。
「遺跡が見えて来たぞ、気を引き締めて行くぞ!」
教授の張りきった声が上がった。
さぁ、楽しい(訳ない)楽しい(訳ない)トロール狩りの始まりだ……。
※トロール
DQに出てくるトロルや、ムー●ンと付いたり、サツキとメイを乗せて飛ぶト●ロだったりしません。
指輪物語では光が苦手とありますが、流石にそれだと昼間に歩き回れないのでそれだけはカットしています。
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