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「う~ん、判らん。何だこれは」


 虫メガネ型の鑑定具をかざして鑑定結果を見たヴィリディスは頭を抱えていた。

 鑑定結果に納得できないのだろう。

 僕なんか、知らない物や生物を鑑定しても、”物”とか”獣”位しか出ない時があるから何となくわかる。

 でも、露店で売られてて何時も使っている鑑定具が役立たずとなれば頭を抱えるのも判ってしまうのが辛い。

 普段陰気な表情が更に陰気になってこの世の終わりか、みたいな表情になるのはどうしたものかとこっちが頭を抱えたくなる。


「さっぱりだな。文字らしいが、さっぱり読んでくれん」

「そんな事までわかるのか?」

「一応な」


 遺跡調査は教会が主導していると、ヴィリディスが言ったが、それとは別に有志での研究を行っている所もある。例えば”王立高等教育学院”がそれにあたる。


 王立高等教育学院はこの国の最高教育機関でもあり、国内外から優秀な頭脳が学びに、そして研究に通っている。王立であるが月謝が発生し、それを払うだけでも大変なのだという。僕には全く関係ないから、頭の片隅にしか覚えてないが。


 その王立高等教育学院に知り合いがいるそうで、今回の鑑定した文様が、知り合いの所で見た解読されていない文字に似ている、のだそうだ。


 それにしても、ヴィリディスは何処でその王立高等教育学院の人と知り合ったか、一度腹を割って話をしてみたいものである。


「これはお土産にして行く。喜んでくれるだろう。そして、オレの研究にも付き合ってくれるだろうね、ふふふ」


 どうやらマッドサイエンティストな部分でその知り合いと同調するみたいだ。

 研究する分野が異なっても、性格が同じなら意気投合すると……。

 あれ?同族嫌悪みたいにはならないのかな?


 そんな事を考えていると、ヴィリディスは用紙を取り出し、文様を写し始めた。

 文字と思われる部分を主にであるが。

 文字以外の文様はここに来ないと調べられないが、ゴブリンが一掃されたらここに入れるのだろうか?教会が主導してるのであれば、許可が降りない可能性も……。教会の怖さは僕が良く知っているからね。


 ヴィリディスが文様を写している最中は僕とフラウで周囲を警戒する。

 ゴブリンが大きく穴を掘ってしまったから周囲に比べて低くなってしまった事が警戒をほんの少し困難にしていた。

 ホント、ゴブリンはろくな事をしないな。

 迷惑ばかりかける悪知恵を何とかして欲しいよ。


「よし、終わりだ。迷惑かけたか?」

「いや、大丈夫だ。残っているゴブリンなんか少ないだろうから見かける方が希だからな」


 終わったと声を掛けてきたヴィリディスを見れば、すでに荷物を背負っていた。すぐに移動できるな。


「ここにはゴブリンの残党なんか見えないからもうちょっと奥に行ってみない?」


 フラウの提案に僕は思案する。

 城壁があったとは言え遺跡の中。こんな所でくすぶっていても、討伐数は増えない。

 ゴブリンの残党狩りに参加しているからそれなりの報酬は貰えるけど、討伐しなければボーナスは増えない。今の所のボーナスは微々たるものだ。

 それならばボーナス増額狙いをしてみるのもいいのかもしれない。


「そうだな。僕はそれもあると思う。一応、賛成って事で」

「ヴィリディスは?コーネリアスはああ言ってるけど」


 フラウから振られてしばしの思考に入るヴィリディス。

 数秒程考えると、顔を上げて答えを口にした。


「ふむ、時間もまだたっぷりあるし、いいんじゃないか?」

「じゃ、決まりね。移動しましょう」


 嬉しそうに移動を始めるフラウに僕たちは付いて行く。

 残党が何処に隠れているか判らない今は警戒を怠る訳にはいかない。一匹二匹の残党だとしても。

 もしかしたら残党が集まって数十匹、出てくる可能性もあるから行動は慎重になる。


 それから僕たちは遺跡の端まで進み、崩れた城壁を越えて、西の森へと足を踏み入れた。

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