第27話


「よっ、ほっ、せっ」


「やぁ!」


「しっ!」


 僕は容赦なく浴びせられる明日香と桜の攻撃を避け続けた。


 時が流れるのは実に早いもので、ゴブリンエンペラーを倒してからもうすでに3ヶ月が経とうとしていた。


 自衛隊の人たちもめちゃくちゃ強くなり、僕の教えを受けていた人たちももうすでに単独でオークを倒せるまでになっていた。


 まぁ僕が渡してあげている刀の性能がめちゃくちゃ良いというのもその理由に上げられるが。


 食料が一応十分にあり、健康的に暮らせている現実世界の人たちは異世界の人たちよりもかなり早く育ってくれた。


 ちなみにだが、彼ら、彼女らのことを抜刀隊と名付けた。


 そして明日香と桜の成長は実に著しい。


 桜なんかまだ鍛えてから三ヶ月しか経っていないというのにもうすでにレベル10の壁を乗り越えていた。


 明日香もオークの上位種を単独で撃破できるまでに。


 もしここが異世界であったのなら、二人は神童、天才として注目を浴びただろう。


 成長速度で言うのであれば僕よりもずっと早い。


 そんな二人を同時に相手取って組手をするには武道場じゃ狭すぎるので外にでてやっているのだ。


 ふふふ、眼福眼福。


 二人の揺れる胸と汗の匂いが実に素晴らしい。


 僕が至福のときを過ごしているとありえない、認めたくないものが僕の目に飛び込んでしまった。


 僕は思わず足を止めてしまった。


 いきなり足を止めた僕に向かって振り下ろされる桜の刀と明日香の弓矢。


 どちらも急に止められるものではなく、普通に僕に直撃した。


「「あっ!」」


 二人が焦ったような声を上げる。


 だがしかし、二人の攻撃は僕には届かない。


 刀は僕の肌に受け止められ皮一枚も切れず、また弓矢も同様。


「「へ?」」


 その光景を見た明日香と桜が困惑の声を上げる。


 確かに明日香と桜は僕も驚くほどの急成長を見せた。


 だが、それだけだ。


 二人の実力はまだ僕には到底及ばない。


 いくら優秀な武器を持っていたとしても二人の攻撃力では到底僕の防御を貫けない。


 って、そんなこと考えている暇なんてない。


「ちょっと!なんでいきなり止まるのよ。


 なぜだ。


 なぜここに……。


 これが悪寒の正体なのか?


「って、なにこれ」


 固まっていた僕の方に近寄ってきた二人がとあるものを見て困惑の声をあげる。


 そこにあったのは巨大な黒い穴。


 何もかもを飲み込んでしまいそうな漆黒の穴だった。


「なんでダンジョンが……」


 異世界においてこの穴はダンジョンの入り口。


 現実世界に魔物やステータスだけでなくダンジョンまでもが誕生していたのか……。


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