第21話

 騒然とした避難所。

 最悪。

 僕が予見した最悪のことが起きてしまった。

 避難所を囲む大量のゴブリン。

 奥にはなぜか用意された人骨でできた巨大な玉座に座る巨大なゴブリン。

 おそらくゴブリンの最上位種であるゴブリンエンペラーであろう。

 その周りをゴブリンの上位種と思われるゴブリンが囲んでいる。

 というかあの玉座はなんだ。異世界でも見たことないぞ。人骨があまりに余りまくったのか?

 だが、まだ最悪の状況にはなっていなかった。

 ゴブリンエンペラーは勝ちすぎて慢心しているのか、上位種を使わずただの弱いゴブリンを突撃させていた。

 そのおかげでまだ自衛隊たちは避難所の防衛に成功していた。

 僕が育てた明日香も大活躍していたようだ。

 現在は学校の正門でゴブリンと自衛隊がバチバチにやりあっていた。

 しかし、一部のゴブリンが避難所内に侵入し、暴れていた。

 自衛隊の人たちも明日香も手一杯だったので対処できず、好き放題させていた。

「ほっと」

 僕は慌てて転移し、今まさにゴブリンに殺されそうになっている女の人を助ける。

「大丈夫?」

「う、うん」

「遅れてごめん。でも安心して。僕が来たから。神風残響流 千本桜」

 千本桜とか言っておきながら、千本桜なんか無視して僕は刀を振るってゴブリンを殲滅していく。

「ふぅー」

 中に入っていたゴブリンは殲滅できたかな?

 じゃあ次は外だね。

 僕は再度避難所上空に転移した。

「大丈夫?明日香?」

「零!」

 明日香が歓声の声を上げる。

「後は任せて」

 僕は明日香を安心させるために笑いかける。

「『全てを薙ぎ払え!雷神!』」

 僕は魔力を一気に放出する。

 ゴブリンの巣では地中の中にある巣がどれほどの強度かわからず使えなかった大規模魔法を発動させたのだ。

 視界が真っ白に染まる。

 そして、鼓膜を破らんばかりの轟音がすべてを支配する。

 次に視界が開けたときには全てが変わっていた。

 焦げたような匂いがあたりに充満している。

 大量にいたすべてのゴブリンは炭となり、残っていたのは粉砕された人骨の玉座に腰掛けるゴブリンエンペラーだった。

「ふぅー」

 久しぶりの大魔法。

 魔王戦のときは基本刀で戦ったので、大魔法を使って敵を殲滅するのはかなり久しぶりだ。

 それにしてもゴブリンエンペラーが生き残るとは、全てを灰燼に帰したと思ったのだが……。

 それほどまでに成長していたのだろう。

 こいつの慢心がなければ確実にこの避難所は滅亡していただろう。

「神風残響流奥義 垓花一閃」

 最後は僕の奥義で葬ってあげる。

「ふぅー」

 全てを終わらせ息を吐く。

 僕が油断したその瞬間。

 どんでもない悪寒が僕の中を走り、そして僕は吹き飛ばされた。

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