第44話 口実

スナックでの思いがけない情事。

私の中で、再び色欲の炎がパチパチと音を立てて燃え上がった。ママと別れてすぐに後悔に苛まれるも、私のためを思って釘を刺しただろう上司の顔がチラつき、グッと堪えた。


いや、実際は堪えきれずに、誰もいないだろう店に電話をした。口実は何でも良かった。遅くまで店に居座ったお詫びとお礼、そんな体で【発信】を押した。勿論、誰も出ない。頭の中で分かってはいたが、せめて一声聞きたかった。


(私の携帯番号は渡したし、また会いたければ連絡が来るだろう。)


それから数日、彼女から連絡が来ることはなかった。

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