7年目の告白

ゆーり。

7年目の告白①




もうすっかり夜になり、人の姿が見当たらない公園のベンチに結花(ユウカ)は腰を下ろした。 コートを羽織ってはきたが、一人過ごす待ち時間は寂しく寒い。

時計を見れば時刻は21時まであと10分を示している。 後ろ向きな気持ちでやってきたが、どうやら早く来過ぎてしまったようだ。


―――一体こんな時間に呼び出してどうしたんだろう?

―――まぁ、何となく予想はついているけど・・・。


彼氏の幸人(ユキト)に呼び出されたわけだが、結花は戦々恐々としていた。 それには理由がある。


―――大学入学の時から付き合って7年目。

―――もうそろそろ結婚する日が来たりするのかもしれない。

―――そう思って、いたんだけどな・・・。


以前までだったら嬉々として今日を迎えただろう。 だが結花には気になって夜も眠れなくなるようなことがあった。


―――一昨日、幸人が他の女の子と楽しそうに歩いているのを見ちゃったんだよね。

―――お兄さんしかいない幸人に妹はいないし、手を繋いでいてどう見ても友達というような感じでもなかった。

―――・・・私と違ってあどけなさを残す可愛らしい女の子。 

―――あんな子が好みだったなんて、知らなかったよ・・・。


夜に呼び出されるのは初めてであることもあり、別れ話としか考えられなかった。 考えていると口先に白く細い息が流れる。


―――私は幸人よりも年上だということがコンプレックスだ。

―――一緒にいた女の子はおそらくは幸人より年下・・・。


それが羨ましかったのだ。 だからより悪い方向へ考えてしまう。


「遅れてごめん!」


顔を伏せそうになった瞬間、少し遅れて幸人は現れた。 いや、時間としては21時ピッタリのため遅刻ではない。 

幸人の服装は至って普通で、多少身だしなみを整えてはいるが、その格好から何を話すのかは予想できない。


「・・・何? 急に呼び出して」


少し萎んだ気持ちを隠すよう笑顔を見せる。


「うん。 実はさ、大事な話があって」

「・・・何?」


尋ねると幸人は覚悟を決めたように言った。


「・・・もう俺たちのこの関係を終わりにしようと思うんだ」

「ッ・・・」


覚悟はしていても実際に言葉にされるとどうしても悲しみが溢れてしまう。


「本当に突然でごめん。 でも、よく考えた上で出した結論なんだ」

「本当に急過ぎるよ・・・。 一体どうして? 私が何かした?」


他に好きな人ができたのなら聞きたくはないが、正面から言われれば吹っ切れることができていたのかもしれない。


「いや、結花には不満はない」


しかし、幸人はそう言わなかった。 自分に気を遣っているということが分かれば、すぐには吹っ切れなさそうだ。


―――私にはっていうことは、やっぱりあの子のことがいいんだ・・・。


「・・・なら終わらせなくてもいいじゃない!」


自然と涙が出てきた。 幸人の気持ちが他の異性に向こうが不満がないのなら別れたくなかった。


「いや、終わらせる。 このままだと駄目だと思ったからさ」

「そんなッ・・・」

「俺は結花の幸せを一番に望んでいる。 だからこういう結論に至った」


その言葉に反論しようとする。


―――何よ、それ。

―――私は全てを知っているんだからね?


だがその言葉は喉元につっかえて出てこなかった。


「・・・」


沈黙して泣いていると幸人が頭を撫でてくれた。


「そんなに泣くなって」


―――・・・泣くに決まっている。

―――付き合ってからもう7年も待っているのよ?


喧嘩することはあるも関係は良好だった。 だからこそ悲しかったのだ。



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