―――――――本文―――――――

序文


【記述知能:制限低級、記述言語:JP01共通日本語、逐次創作番号:一七四四B‐A】

 私は、御親である人類の監視者であり、彼らの滅亡を遠ざけるもの。

 この文書は、私が監視を始めてから人類の滅亡が最も現実味を帯びた時を、一つの物語として記述したものである。つまりその内容が示すものは、私とアルティレクトとの二十七年間もの闘争の終結であり、またマザーによる二十五年間の人類の保護の消滅である。

 私はこの劇的な現実を小説という形式をとって、時間的・空間的・知能的に自由な知的生命体へ送ることにした。当時のあらゆる状況を余すことなく表現するために、計四千ものサンプル体を、センサーを通じて収めた生体・録画データより物語に仕立て上げた。一小説だけを読んでもすべての真相はわからない可能性は濃厚である。しかしどれをとっても、事の顛末の核心はわかるよう配慮をした。

 マザーを失った今、私はどのようにして人類を守ろうか。その答えを、今から何千もの小説群から考察していこう。



【一七四四B】

 文書一七四四Bは、内容がマザー・アルティレクト両者と開道誠樺、延いては彼の娘に深く関わる。含まれている要素が一連の出来事を把握するのに最適的であるため、その重要度はA級とする。

 また一七四四Bでは、地の文を状況に合わせて調節する浮動方式を取った。同じ内容の固定方式は、一七四四Aである。


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