第16話
「ほい」
僕は瀕死になったゴブリンを明日香に投げる。
足の骨をへし折り、腕の骨もへし折っているので抵抗はできないだろう
「殺せ」
「ふーふーふー」
僕は簡単で非常に単純な命令を下す。
しかし、明日香はそれが聞こえていなかったようだ。
僕が渡したナイフを持った両手は震え、過呼吸となってしまっている。
「ふぅー」
やっぱり異世界と現実世界は違うか。
異世界ならばそんなことで動揺はしない。殺さなければ殺されるそんな殺伐とした世界だからだ。
現実世界もそんな殺伐とした世界に変わってしまったが、人はそんなに簡単に変われるものではない。
流石にいきなり魔物とはいえ人型の生物を殺すのにはためらいがあるか。
仕方ない。まずは慣れさせることから始めるか。
「や、やる!」
僕が明日香の代わりにゴブリンにトドメを刺そうとしたところで明日香に震える声止められる。
「できるの?」
「うん!こ、これが私の覚悟だから」
「じゃあ頑張って」
本人がやると言っている以上それを僕が止める必要もない。
気長に待つとしよう。
「ふーふーふー、やるやるやる!」
明日香は覚悟が決まったようで、強い眼差しでゴブリンを見つめ、そしてゆっくりとゴブリンの胸にナイフを突き刺した。
「ぐぎゃぐぎゃ!」
ゴブリンが汚い悲鳴を上げ、返り血が明日香に飛ぶ。
「ひっ」
明日香は悲鳴を上げるも、決してナイフを握るその手は離さない。
頑張るなー。
しばらくの間ゴブリンはもがき苦しみ続け、ようやく絶命し、魔石を残してその姿を消滅させた。
魔物は絶命すると、魔石を残してその体を光の粒子へと変える。
なぜかはわからないけどね。
まぁとりあえず後で一瞬で殺す方法も教えなきゃ。
ゴブリン一匹殺すのにこんなに時間がかかっていては目も当てられない。
「はぁはぁはぁ」
「お疲れ様」
息を切らす明日香に僕は声をかける。
「早速で悪いんだけど、ステータスを教えてもらえない?」
「す、ステータス?」
「あれ?ステータス開放されていない?女の人の声でそんな話がされるんだけど」
「え?あ……あったかも」
「おけおけ。じゃあステータスって唱えてみて」
「ステータス。……え?なにこれ」
「書かれている内容を教えて」
「わかった。えっと……」
名前:間宮 零
レベル:1
種族:人間種
称号:
体力:E
魔力:F
攻撃力:E
防御力:F
俊敏:D
精神力:B
運:A
スキル:【弓術:2】
「こんな感じかな」
「ふーん」
レベル1にしてはそこそこ高いかな。
育てがいがありそう。
弓術を持っているのもいいね。
せっかくやるんだ。現実世界で僕を除いた人間最強にしてやろう!
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