第49話 試験結果
朱音たちが昨日泊まりに来たわけだが、結局何事もなく終えることとなった。
あの後、俺が寝落ちしてからは朱音たちもすぐに眠ったらしく、俺が朝起きるとみんな行儀良く可愛い寝息を立てていた。
ちなみに、透が胸の中で包まって寝てるのを見た時には思わず叫びそうになった。
あの時耐えた俺を誰か褒めて欲しいね。
と、まぁそれは置いておいて……朝は各々準備があるため透以外は一度部屋に戻るようで、透だけは学生服に着替えてまだリビングでくつろいでいるようだった。
あと数分もすれば、昨日の試験結果が発表されるはずである。
それによって、透がAクラスに来れるかどうかが決まる。
俺たちからしたら余裕で大丈夫だと思うのだが、本人はまだ少し緊張しているみたいで、さっきから紅茶を飲むときに若干手が震えていた。
「そんなに心配しなくても大丈夫だって。透ならAクラスでも余裕でやっていけるよ」
「でも、もしAクラスに上がれなかったら、ちょっと寂しいなぁ……」
「心配しすぎな気がするけどな。あ、通知来たみたい」
ちょうど話している間に、全生徒に一気に試験結果が送信されてようで、まずは俺から見ることになった。
「試験結果はっと……うん。変わらず第七席だ」
「おめでとう。さすが蒼だね」
透は嬉しそうに笑いながら祝福してくれた。
多分、なんでティアたちという異次元なアウラがいるのに第七席なんだろうとか考えているんだろうけど、学園側はただ単に力だけで評価をしていないのでまぁ当然の結果だと思う。
戦闘には自信があるものの、そもそもあまり戦うのが好きじゃないし、あと俺が第一席にいるよりも宗一郎が第一席の方が周囲に示すのにも都合が良いのだろう。
もし俺が本気で第一席じゃないとだめだっ!と抗議すれば、宗一郎から地位を奪えるのかもしれないけど、現状その必要性はないし、第一席はいろんなところで「学年主席」としての働きを期待されるためはっきり言って面倒である。
それなら第七席で適当に過ごしている方が100倍マシだ。
「よし、じゃあ今度は私の番ね……やった! Aクラスだ! しかも十傑にも入ってる!」
「おめでとう! これで、これからも一緒だな」
「そうだね。今から明日からの学校が楽しみだね」
透は本当に嬉しそうに笑いながら、ずっと携帯端末を眺めている。
その姿を見て、改めて透が俺たちと同じ側に立ててよかったと思う。もし、二週間前に声をかけなければ、この未来は訪れなかったのかもしれないと考えるとなんとも感慨深いものがある。
透は十傑第八席に昇格したようで、今日中に部屋の移動をしなければいけないらしい。
まぁまだ学園が始まって一月しか経ってないので、そこまで荷物は多くないだろうけど、もし荷物が多いなら俺たちも手伝った方が良さそうだ。
「あ、退学者出てる。……野口光田って……」
「まぁ危うく多くの犠牲者を出しかけたんだし仕方ないね。それに、デモンと契約した時から少し増長してた節があるから、遅かれ早かれこうなってたはずだよ」
ここは獅子王学園である。
むしろ、最初の試験で一年生の退学者が一人で済んだだけマシだと言えよう。
上級生の中にもちょくちょく退学者が出ているし、改めてこの獅子王学園において卒業することが非常に難しいということがよくわかる結果となった。
「とりあえず、みんなにも連絡するか。荷物とかは全部転移魔法で移せるよな?」
「……みんながみんな簡単に転移魔法を使えると思わないで欲しいんだけど」
「……今度教えるよ。ってことは朱音たちに頼んだ方が良さそうだな」
流石に女子寮に俺たち男が行くと通報されかねないので、朱音たちに任せた方がいいだろう。
となると俺たち男子組は何もすることがなくなるので、俺は自主練でもしよう。
「ということで、よろしくお願いします」
「いいよ。二人で鍛錬するのも久しぶりね」
俺は十傑専用の訓練場にリオンを呼んで、鍛錬をすることにした。
ミカエルは部屋の片付けをしたいということで、ちょうどリオンの手が空いていたのでお願いした形だ。
普段はあんまり鍛錬に参加せずに、見ていることが多かったから1体1で戦うのは久しぶりだ。
見た目はツンデレお嬢様なリオンだけど、いざ戦うとミカエルより強かったりする。
ミカエルが色んなアウラの力を複製し自分の力とするのに対して、リオンの場合は能力自体を吸収してしまうため、効率的にはリオンの方が高い。
そして、そのリオンの異能の餌食になったアウラたちは数知れず、実はアウラの厄災級ランキングはここ数年で大きく更新されている。
そう、数年前まで厄災級のトップに居座っていたアウラたちが軒並みリオンに能力を吸収されてしまったのだ。
そりゃリオンが1位になるよねって感じである。
「それで、どうするの?」
「今日は組み手でどう? リオンとやるの久しぶりだし」
「いいわよ。じゃあ私は素手で魔法、異能なしでいくわね。蒼は全力でかかってきなさい」
本来なら女の子相手に全力でいいのか?と思うかも知れないけど、これでも多分俺がボコボコにされる。
ミカエルたちも俺と組み手をするときはかなり手を抜いてくれているのだけど、リオンも同じで限界まで手を抜いてくれる。
そろそろこの状態のリオンたちには勝ちたいなと思っているんだけど、彼女たちは本当に強いのでそれも難しい。
「おっけー。じゃあ行くね」
俺は得意の魔法や姑息な手段を使ってリオンから一本を取ろうとするが、全て綺麗にあしらわれている。
どうしたら、魔法を素手でかき消せるのかと突っ込みたいところだけど、そんなことを考える暇がないくらいリオンには隙がない。
「うーん。甘い」
「マジかっ……」
案の定、少し気を抜いたところにリオンの蹴りが綺麗に刺さり俺の意識を刈り取った。
その後すぐに、リオンが回復魔法をかけてくれたおかげで、体が元気だけど、精神的な疲労はすごい。
「今日は透のお祝いしないといけないんだし、もうやめといたら?」
「んー……まだ一時間も経ってないんだけどなぁ」
「たまにはいいわよ。ほら、さっさ帰るわよ。あ、帰りにクレープ食べたい」
「了解。それ食べて帰ろうか」
結局、その後はリオンと軽く食べ歩きをして寮へと帰ることにした。
ちなみに、また新しい美少女を連れていたと、学園の裏サイトにリークされてて、そこから一週間は俺の罵詈雑言が止まなかった。
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