夢と幻想 朝方の霧

春嵐

夢と幻想 朝方の霧

 あなたの面影は、ない。

 夜と朝の間。もうすぐ陽が昇る。そうしたら、夢と幻想の時間が終わる。その前に、あなたに逢いたかった。

 逢えなかった。というよりも、逢った記憶がなくなっていく。すべてが、夢のなかに。幻想のはてに。消えていく。逢ったという感覚だけを残して。記憶からこぼれ落ちていく。

 霧が出ている。朝の深い青色が、にじんで綺麗に拡散していく。

 あなたのいない今日が、今日も、はじまる。

 それでも。

 またあなたに逢うために。夢と幻想のなかに、あなたを取り戻すために。今日もこうやっている。

 霧が朝の光を反射していく。その中に。あなたの面影を、ほんの少しだけ、感じた。

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