56話 湖に住む棲む伝説のモンスターを倒すため、倒すため、湖の水全部抜いてみる
S級ダンジョン1層最奥。
僕たちは、メネストサウルス討伐のための作戦を進めていた。
2週間以内にやるべきことは3つ。
1つ目:湖の水抜き
2つ目:戦闘用ゴーレムの量産
3つ目:遠距離戦闘用の武器の準備と、アルカの新形態追加
これを全てクリアして、ようやくメネストサウルスと戦えるようになる。
まずは1つ目。湖の水抜き。
大型インスタントゴーレムを呼び出し、ひたすらに地面を掘る。
メネストサウルスのいる湖には、3本の川が流れ込み、1本の川が流れ出ている。まず土を掘り、流れ込んでいる川の流れを変えて、流れ出ている川に接続する。
これで湖に入る水をなくすのだが、ゴーレムを総動員しても中々に大変な作業だ。
「ナット様、取ってきたのニャ!」
マロンが皮の小袋いっぱいの魔石をもって駆けてきた。
地面を掘っている間、マロンには近くのモンスターを狩って、魔石を取ってきてもらっているのだ。
この魔石を動力源にして、ゴーレム達で土木工事を進める。
――5日後、やっと川の迂回水路が完成した。
上流の川の水をこの迂回水路に流すと、徐々に湖の水位が減り始める。
ついでに下流側の川も工事して、太く、深くすることで流れ出る水の量を増やしてある。
これだけでも、決戦の日までには湖の水を半分程度までは減らせるだろう。
そして次の策だ。
「よし、頼んだぞ、耐水ゴーレム」
湖の底でも活動できるようにしたインスタントゴーレムが、大荷物を背負って湖にはいっていく。
持たせているのは、皮を縫い合わせて作った、丸太ほどの太さのチューブ。
このチューブに湖の水を満たし、片側を縛って湖から揚げる。もう片側は湖の底に沈めておく。
そして、縛った側だけを下流側の川に持って行ってほどく。すると何の力も加えていないのに、チューブから湖の水が流れ出す。
細かい原理の説明は省略するが、湖側のチューブには水圧がかかり、その力で水が押し出されて、川側のチューブ出口から出ていくのだ。
これを10セット用意する。
流石にダンジョンの中のモンスターの素材だけではチューブを作る皮が足りなかったので、一度アルカとガレックに街に戻って大量に買い付けてもらった。
拠点を守るためのゴーレムやマロンがいるので、僕がモンスターに襲われる心配もないし。
チューブによって、更に水抜きのスピードは上がるだろう。
計算通りなら、2週間後には湖の水は空とまではいかなくても1、2割程度に減らせるはずだ。
その程度の水位なら、湖の魚は生きられるだろうし、巨大なメネストサウルスは身動きがかなりしにくくなるだろう。
「よし、2つ目の戦闘用ゴーレムの量産に移ろう」
これはやることは簡単。いつも通りインスタントゴーレムを作るだけ。
なのだが、数がとても多い。
マロンに取ってきてもらった魔石を原動力にするので、僕の魔力の限界を超えた数を動かせる。
用意するのは、これまでで最高の300体。
しかも耐水加工が必要なので、結構手間がかかる。
この作業は丸4日かかってしまった。
ここまでの作業で9日。
――そして残りの5日で、アルカの改造とゴーレム用武器の作成をなんとか完了させた。
迎えた決戦の日。
湖の水はかなり減っているが、腰か肩くらいまでの深さはありそうだ。
水面を見ると、すぐ下を魚が沢山泳いでいる。ちらほらと、大型の水棲モンスターが水不足で動けなくなっている。
そして階層守護モンスターであるメネストサウルスも、身体の下の方が水に浸かっているだけの状態になっていた。
前に見たときには水に隠れていて見えなかったが、メネストサウルスの身体には、手足の代わりにヒレが付いていた。予想通りだ。
これなら、いまはせいぜい這いまわることくらいしかできないだろう。機動力は圧倒的にこちらが上だ。
「行くぞ、アルカ、マロン」
こうしてついに、階層守護モンスターとの対決が幕を開けた。
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