37話 時期勇者選抜試験に参加する
ついに、この時が来た。
僕とアルカは、普段活動している街から大分離れた田舎の山に来ていた。
ここにある小さな冒険者ギルドの支部で、いよいよ勇者選抜試験が行われる。
「凄いな、みんな迫力がある」
「街で見かける冒険者とは明らかにレベルが違いますね、マスター」
会場に集まっているのは猛者達。この中の誰もが勇者たりえる実力を持っているのだ。
装備、体格、感じる圧。どれをとっても、普段見ている冒険者とは格が違う。
「時間だな。では、これより選抜試験のルールを説明する」
貫禄ある声が響く。僕たち受験者の前に、鋭い雰囲気をまとった老人が現れた。
「私の名は冒険者ギルド本部所属、マキオス。今回の選抜試験の監督をつとめさせてもらう」
マキオスだって!?
元第1位の勇者じゃないか!!
勇者は大抵、ダンジョン探索の途中で力尽きてその生涯を閉じる。
だが、マキオスは現役無敗。仲間を一度も失うことなく、勇者としてダンジョンに挑み続けた。
歳で引退してしまったが、凄まじい圧を感じる。きっと今でも実力は現役勇者と遜色ないだろう。
まさに、生きる伝説。
そんな大物を生で見れるなんて、何という幸運だろう!
これだけでこの選抜試験に参加した甲斐があったというものだ。
「では、選抜試験のルールを説明しよう。前回までは、1対1のトーナメント形式で戦ってもらい勇者を決めたが、今年は違う。受験者には、これを首から下げてもらう」
マキオスが取り出したのは、小さなクリスタル。首から下げられるようになっている。
「他の受験者のクリスタルを破壊し、最後の1人にまで生き残った者が勇者だ。あとは、受験者を殺してはならない。これだけがルールだ。あとは、好きにやるとよい」
試験補佐官たちが、受験者たちにクリスタルとリュックを配っていく。
「試験会場に持ち込める物資は、装備品以外はそのリュックのみ! 中には1週間分の食料と水が入っている。足りなければ、現地で調達するなり奪うなり自由にやるとよい。
試験会場は、ここらの山一帯! 一般人は寄り付かない土地だ、自由に暴れてよし!
受験者全員、全霊を尽くして臨め!」
マキオスが活を入れると、受験者全員の雰囲気が引き締まる。
「アルカ、僕たちも頑張ろう!」
「やりましょう、マスター!」
――――
そして、試験開始の翌朝。
「なんとか夜明けには間に合ったな……!」
「見事です、マスター」
僕はゴーレムを総動員して、小さな砦を完成させていた。
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