20話 ゴーレムでアダマンタイト採掘の自動化に成功する
――キキとカカに決闘で勝利した翌日。
僕とアルカは、クエスト依頼書が張り出されている掲示板を見ている。
僕の当面の目標は、プラチナ級冒険者になること。
そのためにやらないといけないことは2つ。
1つ目は、クエストをクリアすると得られる貢献度ポイントを稼ぐこと。
2つ目は、社会奉仕系クエストを10回以上受注すること。
冒険者とは、その力で街の人々の暮らしに貢献するものだ。モンスターと戦うだけが冒険者の仕事ではない。
しかし中にはそういった初心を忘れ、街の人々の生活なんぞどうでもいいぜ! と言い出してしまう困った連中もいる。
冒険者の本分を思い出させるべく、こうした社会奉仕系クエストのクリアがゴールドランクへの昇格条件となっている。
だが、
「ありませんね、社会奉仕系クエスト……」
社会奉仕系クエストの代表的なものは、草むしりやどぶさらいだ。
最近は人手不足が解消されているらしくそんなクエストは発注されていない。
「あ、1つだけありましたよマスター。”アダマンタイト原石の採掘”ですって」
聞いたことがある。
確か、アダマンタイトは鉄にほんの数パーセント混ぜるだけで強度が跳ね上がるので、鍛冶屋にはとても重宝されている。
が、なかなか取りに行くのが難しく、冒険者も中々行きたがらないので鍛冶屋自らが仕方なく採掘に行くことが多いらしい。
「ナットさん。アダマンタイト採掘に興味がありますか? 駄目ですよ! そのクエスト、とっても危険で毎年何人も死者が出ているんですから!」
いつもの受付のお姉さんが慌てて声をかけてきた。
「まず、アダマンタイトの原石は非常に重いです。火山まで馬車で行けませんから、歩いてアダマンタイトを運んでくることになります」
「大丈夫ですよ、私は力が強いですから」
と、アルカ。
「それだけではありません、火山には強力なモンスターが――」
「大丈夫ですよ、私ならキキさんやカカさん程度の強さのモンスターであれば軽く蹴散らせます」
「――火山はとても暑く、場所によっては気温50度を超えて――」
「大丈夫ですよ、私はゴーレムなので気温200度までなら問題なく活動できます」
「――火山ではあちこちから有毒なガスが噴き出していて――」
「大丈夫ですよ、私はゴーレムなので毒ガスは効きません」
……数秒の沈黙の後。
「あれ? アルカさんなら問題なく採ってこれそうですね」
受付のお姉さんの顔が明るくなる。
「僕も、アルカなら大丈夫だと思います」
「お任せください、沢山アダマンタイトを採ってきますよ、マスター! 過酷な環境なので、マスターは家でくつろぎながら待っていてくださいね」
というわけで。
アルカ1人にアダマンタイトの採掘を任せることになった。
出発は明日。朝一番の馬車で火山のふもとまで向かい、そこから歩きで火山を登る。
アダマンタイトが採掘できる場所まではかなり歩くので、帰ってくるまでに2,3日かかる。
今日はダンジョン探索にはいかず、火山での採掘に必要なものを準備することにした。
(アルカなら素手で採掘できるだろうが) ピッケル、登山ブーツ、耐熱性素材のリュック、等々。
僕は火山での採掘は全く経験がない。情報を仕入れながらあちこちの店で買いまわっていると、あっという間に日が暮れてしまった。
翌日の早朝。火山用フル装備のアルカを、僕は玄関で見送った。
本当は火山のふもとまで行こうかと思ったのだが、
『淋しいですけど、マスターのお手をわずらわせる訳にはいきませんから』
とアルカは言ってくれた。
というわけで、せっかくアルカが作ってくれた時間を有意義に使いたい。
「さて、何をしようかな……」
ダンジョン探索に出かけるのも良いが、アルカがいるときの方が効率がいい。
久々にゆっくりと趣味のゴーレム作りでも……。
「あ、そうだ」
閃いた。
アダマンタイトを採りに行くゴーレムを作ると街の人の役に立つかもしれない。
こうやって、あたらしい仕事ができるゴーレムを作るのは大好きだ。
趣味と街の人への貢献、そしてもしかしたらアダマンタイト採掘クエストを自動化できるかもしれない。
「よし、やるぞ!」
僕は早速作業に取り掛かった。
――そして、3日後。
僕とアルカ、そして新たに作った採掘用ゴーレムは火山のふもとにいた。
馬車で来れるところだが、この時点で大分暑い。
僕は採掘用ゴーレムを起動する。
大きさは普段作っているインスタントゴーレムと同じく、体長3メートル。
火山の高温でも動きが鈍らないよう耐熱性能をアップさせ、採掘用に腕を強めに設計。
長く使える様に、インスタントゴーレムとは違いしっかりとフレームを入れた。
モンスターに絡まれたときも、これだけパワーがあれば勝てるはずだ。
「ではマスター、採掘用ゴーレムの性能テストに行ってきます」
アルカが歩くと、後から採掘用ゴーレムがついていく。
採掘用ゴーレムの方が身体は大きいが、まるで姉弟のようだ。
僕はどこかほほえましい光景を見送った。
――そして3日後。
採掘用ゴーレムは、たっぷりアダマンタイトを背負って帰ってきたのだった。
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