第15話 バレる

「弓ぃ? 俺にぃ?」


 疑いの表情になる。


「前もこいつは弓を練習していたが、そんなに上手くならなかったぞ」

「それはまだ練習の回数が足りなかったんです。もっと練習すれば、上達しますよ」


 三人は本当か? と言いたげな表情を浮かべる。


「試してみましょうか。練習用の弓はどこかにありませんか?」


 僕がそう尋ねると、バイアーが、


「俺んちにあるぜ。ちょっと待ってろ」


 それから数分経過し、バイアーが弓矢を持って来た。


 矢は二十本ほどある。

 これならたくさん練習出来る。


 僕は、テクニカル・リミットアップを使用し、器用さの限界値を上げる。


 71→81に上昇した。


 この程度しか上がらないのか。


 リミットアップは使える数が少ないし、なるべく限界値が高い者の能力を上げた方がいいな。


 二回使う。


 10づつ上がり、101になった。

 どうやらリミットアップの場合は、上がる数値が10で固定されているようだ。


 その後、テクニカルアップを使用する。


 3回使用し、95まで上昇した。


 少し物足りない数値のような気もするが、まあ大丈夫だろう。


「では、弓を使って見てください」


 広場には木が一本あったので、そこを狙って撃ってもらった。


 アンドリューは弓と矢を手に取る。


 矢をセットして、弦を引き矢を放った。


 当たらない。


 技能レベルはそれなりにあったので、飛距離は出たが木に当たることはなかった。


「やっぱ、あたんねぇよぉ……」


 イラついた表情をするアンドリュー。


「練習すれば当たるようになりますよ」


 僕はスキルアップの魔法で、アンドリューの弓術技能を上げた。


 14→18


 あれ……?

 あんまり上がらなかった……。


 何でかな?

 器用さは上げたのに。


 僕は悩む。


 もしかして身体能力も上げないといけないのかな?

 弦を引くのには力が入りそうだし。


 器用さだけでは駄目なのかもしれない。


 僕は今度はフィジカル・リミットアップを使用。


 予想通り一回で、身体能力が10上がる。

 この感じだとインテリ・リミットアップも同じだろう。


 僕はアンドリューの身体能力限界値を100まで上昇。


 それからフィジカルアップを使用して、身体能力の現在値を97まで上げる。


 そして再びアンドリューが弓を使うのを見計らって、スキルアップを使用した。


 お、やっぱり上がり幅が大きくなった。


 18→28まで上昇した。


 やっぱり身体能力も関係あったんだな。


 アンドリューがもう一度矢を放つと、今度は木に命中した。


「へっへ……当たった……」


 喜んでいるのだろうが、笑い方のせいで不気味に感じる。


「一回くらいはまぐれで当たるだろ。何度もやれ」


 ルートがそう促す。


 僕はスキルアップを使用。


 28→35に上昇した。


 こうして、アンドリューが矢を放つたびにスキルを上げていった、


 最終的に53まで上げた。


 アンドリューは矢をほとんど外さなくなった。


「へっへっへ……コツでも掴んだのか知らねぇけど、何か全く外す気がしねぇ。あと五十歩くらい下がっても、当てられそうだ。アンタの力は本物だったんだな」


 アンドリューは僕を認めたようだ。


「ただ何かわからねぇけど、すげ筋肉ついたような感覚がするんだ。へっへっへ……気のせいかこりゃ……」


 フィジカルアップをかけたせいだと思った。


 器用さを上げてもすぐには気付かれないが、身体能力は上げたらすぐ気付かれてしまう。


 変に思われないか不安になったが、どうやら気のせいだと思っているようだった。


「これで信じて貰えましたか?」


 僕はルートに言った。


 彼は鋭い目で僕を見ている。


 何かを考えるように黙り込み、ややあって口を開いた。


「アンドリュー、バイアー。お前ら先に帰ってろ」


 そう言うと、アンドリューとバイアーは顔を見合う。


 すると、少し困惑した様子だったが、指示に従って帰っていった。


 三人の中では一番立場が強いのは、ルートのようだ。


「アンタは才能を見破る力を持っているわけじゃなく、能力を伸ばす力を持っているんだろ?」


 いきなりそう言われて、僕はドキッとした。

 冷や汗が顔からダラダラと出てくる。


「その反応間違いないな。アンタ顔に出るやつだな」

「いいいい、いや違うよ」

「否定するのが遅い。馬鹿どもは騙せても俺は騙せん。いくら才能があるからと言っても、こんな急激に上達するわけねぇーだろ。何らかの方法で、能力を伸ばしているとしか考えられん」

「うぅ」


 完全にバレたので、言い返すことは出来なった。


「はい……そうです……」


 僕は素直に白状した。


「何も責めているわけじゃない。むしろ歓迎している。アンタの力は大金を産むことが出来るぞ」

「え?」

「なぜ隠しているのか知らないが、バレたくないなら協力してやる。その代わり、あんたにはこのハクシュトアをその力で発展させて貰うぞ」

「あ……えと、僕はそのつもりできたんですけど……」

「ふーん、そうか。ならいいか。アンタ。まずは領民の信用を得たいんだったな」

「はい」

「なら俺が協力してやる。まあ、俺が動けば信用を得るなんて楽勝だがな」


 それだけ言い残して、ルートは去っていった。


 バレたけど大丈夫だろうか?


 まあ、魔法を使っているとは言ってないし、大丈夫かな……


 なるようになるだろう。

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