出会い

「あまねくん。あの時は、教えてくれてありがとう。でも、助けられなくてごめんね」


 蒼はそう言った。



 あまねは刺されて数時間が経っていたが、出血量が少なく、助かった。『奇跡だ』と医者は言った。


 それでも一応入院となった。



「ねえ、そのぉー」

「ん?」

「なんてよんだらいい?」

「『あお』でいいよ」

「わかった」


「ねえあお、」

「ん?」

「あおは、おかあさんのこと、しってるの?」

「うん。友達だった……かな」

「そっか……ごめんね、おかあさん、ぼくがしなせちゃって」


 蒼は驚いたようだった。まさか2歳の子供が、そんなことを言うなんて思っていなかったからだ。


 蒼はあまねのことを抱きしめた。


「ん……」

「……そんなことないよ」

「え?」


 あまねもそんなこと言われたのは初めてだったから驚いている様子だった。


「君のお母さん、杏奈は、君のせいで死んだんじゃない。誰のせいでもないんだよ」

「だれのせいでもない……?」

「そう。誰のせいでもない」


 蒼はあまねにそう言い聞かせ続けた。



「あおと、おかあさん、どんなともだちだったの?」

「うーん……その……俺たちは、人にはない能力を持っていた。君にも記憶があるんじゃないかな? 竜雲に会ったこと」

「りゅーうん?」

「雲、すごく大きな雲」

「なんか、いた」

「その竜雲にね、俺たちは、その人にはない能力をもらった。杏奈は、感情を貯めて、その力を使うことができる能力を持っていた。そのぬいぐるみに感情を貯めていた」

「これに?」

「うん」

「多分、君も、その能力を持ってると思うよ」

「ぼくも?」

「うん。あとは……」


 蒼は、あまねの手を握った。


「コピーだね」

「こぴー?」

「他の人の能力を覚えて、使える能力」

「へぇー」

「そのおかげで、君も助かった」

「え? そーなの?」

「ああ。そのおかげで、血が止まって、助かった」

「そうなんだ……!」


 あまねは目を輝かせて蒼の話を聞いていた。

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