第86話 孤児達の成長3

 翌日、サラ達がミリアさんに報告に向かうとの事で、僕とルナ達四人だけで二層に訪れる事になった。


 ミリアさん達、エルフィーデ女王国の査察団の面々はガザフの領館に滞在中らしく、今回の孤児院の育成についてミリアさんが個人的に感心を持っているらしい。


 何故、ミリアさんみたいな人が個人的にとはいえ孤児達の育成に興味を持つのか不思議だったが、サラ達も事情までは知らないらしく、ただ成果が見えれば直ちに報告するように言われただけらしい。


 そういう訳で僕達だけでダンジョンに向かうことになったのだ。


 今日の目的である、蜂狩りの見極めの前に一層でレッサーラビットを狩ってみた。


 魔力循環による能力の向上が可能になった四人にとって、レッサーラビットは既に脅威では無くなっていた。


 釣り役をシルフィーが行い、盾での防御を試してみたが、キャロの補助が無くても衝撃で揺らぐ事が無くなった。

 

 盾の陰から放たれた、ルナの【スプラッシュアロー】が命中し、レッサーラビットを一撃で仕留めた。


 二層への移動の途中で見つけたレッサーラビットでキャロの【風刃】の威力も確認した。驚いたのは、キャロが【ウィンドウォール】も使えるようになっていた事だった。


 シルフィーに言わせると、もう蜂と一人で戦える力があるらしい。【風刃】の威力はレッサーラビットを一撃で仕留める力があった。


 一層で必要な確認を終えた僕達は、二層に到着すると役割を決めて狩りを開始した。


 一匹目はシルフィーが速攻で仕留め、三人が盾を構えながら接近し、ルナが二匹目を【スプラッシュアロー】で仕留める。


 三匹目は襲ってくるので、隠れているキャロが【風刃】で打ち落とす事になった。


 シルフィーは一匹目を落とした後は、他の群体の群れが絡んでこないかを警戒する役目だ。花畑はかなりの群体の群れが飛び交っている危険な場所なのだ。


 僕は確認する立場として手は出さないが、ディーネとルピナスを召喚して近くに待機させている。僕も弓を取り出し、何か有れば援護射撃出来るように待機している。


 狩りは順調だった。昨日のようなハイペースな狩りにはならなかったが、三匹狩る毎に魔素吸収を行い、素材回収を行っていく。とても安定した狩りの時間が続いた。


 二十匹程の蜂を仕留め魔素吸収と素材回収を終えたので、僕が少し休憩を取ろうと提案し、少し花畑から離れた場所に移動して休憩する事になった。


 皆で集まって休んでいると、後ろから聞き覚えのある声がした。


「あら残念ね! 報告を聞いて様子を覗きに来たんだけど、もう今日の狩りは終わりかしら?」


 後ろを振り返ると、ミリアさんとサラ、そして査察団の者と思われるエルフが数名、森林から出てくるのが見えたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る