第74話 孤児院の育成計画2
サラが狩った分の蜂の素材を報酬として受け取るのは、遠慮する事にした。魔法弓を受け取っていながら素材まで報酬にしては貰いすぎだ思ったからだ。
フィーネからは、「最初の約束なんだから遠慮しなくていいのよ~」と言われたが、孤児院の育成に使われるなら惜しいとは全く思わなかった。
サラ達とは、ギルド前で別れた。サラ達はギルドに寄らず今日はそのまま帰るらしい。別れ際、孤児院の育成の協力を依頼されたので快く了承した。
元々、手助けしたいと思っていたが、部外者の僕にはウサギを寄付するくらいしか出来なかったのだ。
サラ達が動いてくれるなら協力という形で手助けできそうだ。
寄付や援助に頼るだけじゃなく、ダンジョンで食糧を調達できるようになれば孤児院の維持も楽になるだろうと思われた。
(畑を作ったり、自力での努力も行っているみたいだし、遠征装備の一式でもあれば、自発的に狩りを行う子が出てきそうなんだけどな)
以前ルナから聞いた、孤児院の自助力について考えた。ルナ自身もポーションを売る事で貢献しようと努力していた。
ガザフが孤児院の窮状に無関心なのが残念でならなかった。
いくらエルフィーデ女王国の援助があると言っても、距離の問題もあって、基本は年一回の援助金の支給があるだけらしい。
それも現状の急激な変化に対応しきれていないようだ。
(やはり、近くに頼れる相手がほしいよね)
僕はガザフの繁栄の象徴のようなギルドの姿を見ながら、裏の納品所に向かうのだった。
◻ ◼ ◻
納品所にはゼンさんの姿が有った。「よう! お前さんか、今日もウサギが大量かい?」
陽気で気さくな雰囲気はゼダさんとは違うが、何だかホッとする人だと思う。
「残念ながら、今日は少し違う獲物なんです」僕は瓶入りの蜂蜜を三つ取りだした。
ミレさんに借りた分も有ったが、後で瓶を大量に買い足すつもりだったので新しい物で返す事にした。
「そういや、前に蜂蜜の事を聞いて来てたよな、それにしても一回の狩りで瓶三つかよ……まあどうやったかは、聞かねえ事にするよ。探索者の能力や狩の方法を聞くのはルール違反だからな」
僕は、併せて麻痺針と魔石、それと屋台のダンさんの分のウサギ一匹を納品した。魔石は素材と一緒であれば受け取って貰えるようだ。
「お前さんも律儀だな、知り合いの屋台の親父さんの分だろ?」
(ギルドに近いから知り合いかな?)
「ええ、喜んで貰えそうなので、出来る限りは続けたいと思ってます」
僕は更に下層に下って行くつもりなので、何時まで納品出来るか保証は出来ない。でも更に深い層にもウサギはいるらしい、少し楽しみだった。
「偉そうに聞こえるかも知れないが、そういう気持ちは大切にしろよ、さあ記録は終わったぜ!」そう言ってギルドの身分証を返してくれた。
「それから、蜂蜜なんだがまた買い取り値が上がっている、一瓶銀貨四枚だ」ゼンさんがニヤリと笑いながら、そう告げた。
「ええっ⁉」
僕はまたローダンヌ商会が何か始めたのかと、狩の面倒事にうんざりした気分になるのだった。
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