第22話 三人の元ウサギ狩人達2

 僕は、四人テーブルの空いている席に座らされて今日のレッサーラビットとの戦闘の報告をさせられた。


気合いの一撃を、声で察知されて、攻撃を回避された所は皆に非常に喜ばれた……


「いいぜ! いいぜ! 耳の良いウサギに気合いで察知されるなんざ、俺の現役の時にもなかったぜ! まあ俺の場合はウサギに近づくなんて事はせず、適当な小石をぶち当ててウサギの野郎を釣ってたがな!」


 丸坊主の老人が膝を叩いて大笑いしながらそう言うと、


「テメエ! 何、偉そうにいってやがる。その小石をよく外してウサギ追いかけまわしてやがった癖によ!」


 酔っぱらい老人がすかさず突っ込んだ。


二人が「なんだと、いつの間に見てやがった!」


「うるせえ! いつ見ても、テメエは、いっしょだろうがよ!」


「なんだと髭もじゃ!」「うるせえ! ハゲッ!」


最後には、只の悪口の言い合いだった。


そんな二人のやりとりは日常的なのかまったく気にする素振りも見せず白髪の老人は……


「それにしても坊主、初めての戦いで蹴りと頭突きはともかく、ウサギの耳打ちまで出させるなんざなあ……相当ウサギを追い込んだんだな」


(……あれ? 追い込まれてたの僕だったような? あの技、耳打ちって言うんだ……)


「ああ、俺もそう思うぜ! 普通に戦ってりゃそこまで追い詰める前に無理やりでも倒しちまうもんだ、俺にゃあ、ウサギの絶望が見えるようだぜ! やるじゃねえか!」


 丸坊主の老人がウンウンと頷いている。


「そうだな、狩りの初日にそこまで、ウサギを追い詰めるとは……なかなか見込みがありそうだな、新しいウサギ狩りは……これはお祝いの必要があるな」酔っぱらい老人が言い出した。


そこにラナさんがエールのジョッキを持って現れ「あらあら、楽しそうね、今日は、お祝いだから特別に」そう言うとジョッキを置いて厨房に戻っていった。


「よくやったぞ! 乾杯!」酔っぱらい老人の音頭に、「そうだな乾杯」「ウサギの絶望に乾杯!」他の二人も唱和した。


(……ウサギ絶望してたのかな? お二人さっきまで喧嘩してましたよね……わりと会話ちゃんと聞いてるんですね……)


 やはり只の酔っぱらい老人達だったのだ……僕の長い一日はまだ終わりそうもなかった。


◻ ◼ ◻


 僕の狩りの話しを聞いた三人の感想が、僕が初めての狩りで感じた不安感と随分隔たりがあったので、思い切って僕が今悩んでいる事を話してみる事にした。


「あの、実は僕まだダンジョンに入るのは早かったんじゃないかと思ってるんです」そう僕が切り出すと……


「あ? 何いってやがるんだ? ウサギちゃんと狩れてるじゃねえか」酔っぱらい老人が少し絡み口調だ……


(……やはり酔っぱらい老人達に相談事は失敗だったかも……)


 僕が内心で反省しかけていると……


「まあ待てドルフ、話は最後まで聞け。話してみろ坊主」白髪老人が助け船を出してくれた。


「そうだな、すまねえゼダ……そうだ坊主、話してみろ聞いてやるから」


(白髪老人がゼダで酔っぱらい老人がドルフ……丸坊主老人の名前も気になった……)


丸坊主老人は、ウンウン頷きながら話してみろと言わんばかりだ。


 僕は、他の探索者達がしっかり準備してダンジョンに挑んでいる事、それから、割れた盾を見せた。


 僕も同じように準備の為、もっと時間を割くべきじゃないかと。


 そして、考えたくはないが、じいちゃんが僕の実力を見誤ったんじゃないかという事を……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る