第50話

「あんにゃろぉ。面倒な約束残しやがってよ」


俺は笑って夢の内容を何度も反芻させていた


「いい夢?」

「ん?ああ」


そこには隣の部屋で寝ていたはずのカリナがベットの上にいた

俺はベットから降りて大きく欠伸する


「今日は学校休みってシズカから聞いたよ?」

「日曜だしな。それはそうと」


俺は流れるようにカリナの頭を掴む

カリナに気づかれないよう自然的に手を頭に回したため、カリナは反応することもできずに捕まってしまう


「り、リーダー?」

「おう。リーダーだ。なんで隣で寝てたか聞いてもいいか?」


カリナが震え上がっていることが掴む手からわかった


(中略)


カリナは頭を押さえて悶え苦しんでいる

そんなカリナを置いておき、俺はセツナを探す


「セツナはどうした?」

「ああ。リーダーにとっても都合悪いかなって思ってさ。ほらそれ」


カリナが指差す方向を見ると

机の上に置いてあったUSBメモリに気がつく


「シノブ妹のか」

「仕事早いねー」


侵入されたことに誰も気づかないというのは非常に危ういがまぁ、この際気にしない


「じゃあ、シズカが来る前に終わらせるかー」

「・・・シズカには言ってないの?未来の記憶があるって」

「ああ、困惑するだろうしな」


カリナが素早く軽い身のこなしで俺の肩の上に乗って、顔を近づける


側から見たら、兄にに肩車されている妹の図であったがそんな軽い雰囲気ではない


「本当にリーダー?」

「どう言う意味だ?」

「リーダーは、私たちに何を恐れてるの?何でそんなに隠したがる?仲間ならいいじゃない。家族同然なんだから」


空色の目が夜空のように暗くなるほど近づいてくる


「私の知ってるリーダーは、身内には遠慮がなくて強引な人。そして、それは私達を信頼してくれてた証でもあった。とっても大胆で後のことを考えない。何があろうと笑顔を崩さなかった。その生き様がみんなを惹きつけてた」


俺は自分で暗い顔をしてるのに気付きながら

突然カリナを猫のように掴み、ベットに投げる


「いて!」


ベットに投げられたカリナは痛くないのに反射的に出すが

その声を無視して『マサト』はカリナの身動きを封じカリナに覆い被さる


マサトはカリナの手首を掴み、足も固定し、今度はマサトが顔を近づけた


マサトがメラメラと紅い眼を揺らし、カリナを見る

カリナはそれに一瞬恐怖する


力強く、逃げ出すことなど不可能だと悟らせるほどの力

身動きは取れず、その眼は獲物を見る肉食獣のようだった


いつもより、大きく見えるその体


死をも悟らせるその姿にカリナは震えた


カリナは反射的に目を瞑ってしまう

しかし、顔に何かの水が垂れる


カリナは恐る恐る目を開けると


マサトの紅い眼から涙をこぼれていた


「みんな俺をおいて死んでいったんだ。多少は変わるに決まってるだろ」

「・・・」


カリナとマサトは短い時間、彼らにとっては長い時間が流れる


その時、ガチャリと言う音が二度なり


「失礼しました」


というシズカの声が聞こえてから、もう一度ガチャリという音が二度なった


また、シズカには勘違いをされそうだが

そのおかげでようやく、マサトは頭が冷えた


「すまん」


俺はカリナから離れ、逃げるように部屋を後にした

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