絶望の箱庭~鳥籠の姫君~
神崎ライ
プロローグ
『いつからだろう、ここから救いを求めていたのは……また一人いなくなっちゃった……次は……私なの? これが運命なの……? どうして……もう嫌だ……誰か、助けて』
鏡合わせの並行世界が存在する。
魔法が衰退し、科学技術が発展した現実世界。魔法中心に技術が発展した幻想世界。
同じ時間軸に存在する――決して交わることのなかった二つの世界。そして、両世界の狭間に
そして、狭間のどこかに存在すると噂される場所――通称『箱庭』――
はるか昔……『箱庭』には人々が望む理想郷が存在すると言われていた。噂を聞いた両世界の多くの人々が、箱庭へ向けて旅立った。だが、ある人はもう一つの世界に迷い込み、ある人は世界の狭間を永遠にさまよい続け……だれ一人としてたどり着くことも帰ることもできず、消息を断っていった……
本当に存在するのか? たどり着いたとしてそこは世界の終わりであり、理想郷などではあり得ないのでは? そんな噂が人々の心を蝕み、いつしかこう呼ばれるようになった。
――『絶望の箱庭』――
……やがて時が経ち、『箱庭』の噂は人々の記憶から薄れていった。
人知れず水面下において、両世界のごく一部の研究者たちによる極秘計画が長い年月をかけひっそりと進行していた……
時は過ぎ、現実世界と幻想世界の狭間、『終わりの世界』への入り口と呼ばれる霧で閉ざされし森の中にひとつの学園が誕生した。
――『ワールドエンドミスティアカデミー』――
両世界の条件を満たした一部の者だけが通うことを許された秘密の学園。一人の少年が春から学園に通うことになる。
運命のいたずらなのか、現実世界ではあり得ない不思議な力を発現してしまった少年。
記憶を失い、箱庭に幽閉されている少女。本来出会うはずのなかった二人。
一つの事件を機に回り始めた運命の歯車……
彼らが行きつく先に待ち受けるのは希望か絶望か……
少年は失われた少女の記憶を取り戻し、
二つの世界の命運をかけた物語が静かに動き始める。
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