第75話 上手く行かないお勉強

 



 ◆かえで視点




 あれからお風呂から上がった後に3人でご飯を食べました♪ 現在私と葵ちゃんは悶絶しております。その理由はエルちゃんがまた面白い事をしているのです! ご飯を食べながらテレビを付けて見たら、紅茶を片手にティータイムをしながらお上品にトークをすると言う番組がたまたまやっていたのです。そしたら、エルちゃんが口を開けてポカーンとしながら真剣にそれを見ていました。番組が終わった後にエルちゃんは影響されたのかティータイムの真似をしようとしているのです!


「――――――♪」


 可愛いうさぎさんのイラストが付いた白いコップに小皿を下にして優雅にオレンジジュースを飲んでいます。私と葵ちゃんで写真を撮りながらソファに座ってその光景を興奮しながら見ていました。


「ディフフ.......あらあら♡ 葵ちゃんどしたの?」

「お姉ちゃんやばいよ! 私腹筋が崩壊しそうだよwww」

「エルちゃんがティータイム.......可愛いとしか言葉が出ないわ」


 白猫のタマちゃんも暖かい目でエルちゃんの事を見守っています。お子様用の小さな椅子に机。小皿の上にうさぎさんのマグカップを乗せながら優雅にオレンジジュースを飲んで謎のドヤ顔をキメています。エルちゃんがうさぎさんのもふもふパジャマを着ながらティータイムしている姿は、最早可愛いと言う言葉しか出て来ません!


「しかも、ティータイムのお菓子がうめぇ棒ってwww」

「葵ちゃん、笑ったら駄目だよ?」

「お姉ちゃんも人の事言えないじゃん! さっきからずっとニヤニヤしてるし!」


 本当にエルちゃんは面白い子ですね♪ 大人の真似をしようとしているのかな? 傍から見ると幼い子が、無理して背伸びをしているようなものです。何とも微笑ましい光景ですね♪


「――――――!?」

「あらあら、エルちゃんオレンジジュースこぼしちゃったかぁ」

「うぅ.......ぐすんっ」

「よしよし♪ また注いであげるから大丈夫だよ♪」


 するとこの後エルちゃんは少し迷ってから何と! 床に零れたオレンジジュースを舐めようとしていたのです!


「エルちゃん!? 汚いからそんな事したら駄目だよ!」

「そうよ、ばっちちだからメっだよ!?」


 エルちゃんは時折落とした食べ物を平気で食べようとするのです。しかも、今回は飲み物まで.......この癖は早い所治さないと将来エルちゃんが恥をかくことになってしまいます。そもそも落とした物を食べるのは身体にも良くないのです!


「んぅ.......じゅーちゅ.......」

「よしよし♪ お姉ちゃん達も怒りたくて怒る訳では無いからね♪ オレンジジュースまた注いであげるから♪ 泣かないで♪」


 おめめウルウルとさせて下を向くエルちゃん可愛いわね♡ でも、私もお姉ちゃんとして怒る時は怒ります。これもまたエルちゃんの為でもありますからね。


「エルちゃん、そろそろお姉ちゃん達と一緒にお勉強しましょうか♪」

「お姉ちゃん、私勉強用具持って来るね!」

「うん♪ 葵ちゃんありがとう♪」


 少し待つと葵ちゃんが、ノートやあいうえおの平仮名表等のお勉強用具一式を持って来ました。しかし、それを見たエルちゃんは、目を大きく見開いてから慌てた様子で机の下に逃げようとするのです。


「エルちゃん〜? 何処に行くのでちゅか?」

「今からお勉強するよ? 葵お姉ちゃんが今日はみっちりと教えてあげるよ♪」

「――――――!?」


 エルちゃんはお勉強に少し苦手意識があるのかもしれません。最初の内は良かったのですが、やればやる程エルちゃんはお勉強から逃げようとするのです。


「エルちゃん〜机の下に隠れて無いで出ておいで〜♪」

「んにゅ.......」


 困りましたね.......どうしたらエルちゃんがお勉強と向き合ってくれるのでしょうか? お勉強はエルちゃんの将来の為にしないと行けません。これは避けては通れない道なのです。


「エルちゃん、クリームパンあるけど食べる?」

「――――――?」

「ほら、ここにあるよ〜」


 エルちゃんをクリームパンでチラチラとおびき寄せる作戦です。エルちゃんは案外チョロいので、これで机の下から出て来てくれるかもしれません。


「――――――!!」

「あらあら〜可愛いお魚さんが釣れましたね♡」

「かえでねーたん!?」

「暴れても無駄でちゅよ? さあ、一緒にお勉強をしますからね♪」

「――――――!!」


 私は暴れるエルちゃんをしっかりと抱きしめながら椅子に座りました。膝の上にエルちゃんを乗せて準備完了です! 隣りには、妹の葵ちゃんがお互いの肌と肌を密着させる程の距離でエルちゃんと私の傍に座りました。


「もう〜困った子でちゅね〜♡ お耳はむはむしちゃうよ?」

「――――――!?」


 私から逃れる事は出来ませんよぉ♡





 ◆あおい視点





 駄目だ.......楓お姉ちゃんはもう戦力外。お姉ちゃんは直ぐにエルちゃんを甘やかしてしまうのです。ここはわたしがしっかりしないと駄目だよね。


「お姉ちゃん! エルちゃんとイチャイチャするのは後にして! 今はお勉強の時間だよ!」

「はっ.......!? 私は今まで一体.......」

「お姉ちゃん.......これは重症かな」


 お姉ちゃんも妹依存性と言っても良い程に症状が悪化しています。エルちゃんを愛でながら、何故か私の頭を撫でて来たり、いつの間にか私の手を握ったりもして来ます。お姉ちゃんに撫で撫でしてもらうのは嫌いではありませんが、今はエルちゃんのお姉ちゃんでもあります。エルちゃんのお姉ちゃんとしての威厳を失う訳には行きません。


「エルちゃん、今からこのイラストに書いてある物をお姉ちゃん達と一緒に声に出して読むからね〜あ、逃げようとしても無駄だよ?」

「――――――?」

「そ、そんな上目遣いで私を見ても駄目だよ! 私はお姉ちゃんと違って厳しく行くからね!」


 私の心拍数が.......エルちゃんは本当にずるい。お姉ちゃんの気持ちもよく分かります。だからお姉ちゃんにはあんまり強くは言えないけど、エルちゃん見てると可愛い過ぎて気が狂いそうになるんだもん!


「エルちゃん、この絵から行くよ」

「――――――。」


 今回はお勉強中にエルちゃんが逃げないように、エルちゃんを真ん中にして左右に私達が密着して、一切身動きが取れないように陣取って居ます。


「エルちゃん、これはりんご。赤くて美味しい果物だよ♪」

「んにゅ?」

「り・ん・ご」

「り.......ゆ.......ご?」

「おお! そうだよ! りんご! 良く言えたね♪ エルちゃん凄いよ!」


 こう言った、言葉のお勉強は地道に行くしかありません。今日はイラスト付きの平仮名が書いてある表を見てのお勉強から、あいうえおの復唱、数字の1から9までの復唱と書く練習をして行きましょう。厳しくとは言いましたけど、怒鳴る様な真似はしません。褒めて伸ばす。これでエルちゃんに自信を付けて貰って、少しずつやる気を高めてくれるだろうと言う私の狙いです。


「あれ?」

「すやすや.......すぅ.......すぅ.......」

「ちょっとお姉ちゃん! 寝るならベッドで寝ないと駄目だよ!」

「んんっ.......しゅき♡」


 全く.......しょうがないお姉ちゃんだね。このままお姉ちゃんは寝かせて置いて、私とエルちゃんの2人でお勉強を進めましょう。


「あおいねーたん!」

「ん? どうしたの?」

「おちんちん!」

「..............」


 エルちゃんが自信満々で、パンのイラストを指さしておちんちんと言っています。これは完全に二宮マッマのせいですね。我が家には出禁にしないと今後エルちゃんが危ないかもしれません。エルちゃんもまだ幼い子ではありますが、立派なレディです。レディがそんなはしたない言葉を口にしては駄目なの.......エルちゃん。


「あのね、エルちゃん?」

「んぅ?」

「その言葉は言うのは駄目だからね? そして、これはパンなの.......その、お、お.......ちん」


 言えない.......めっちゃ恥ずかしい! 心の中ではおちんちんとは言えるけど、いざ口に出して言うのがこんなにも恥ずかしいものだなんて!


「とにかく! その言葉を使うのは駄目! 次言ったら、明日のおやつは抜きにしますからね!」

「おちんちん〜♪ おちんちん!」

「あぁ! もう! だからそれはパンだよ!」


 小さい子は下ネタが好きなのかな.......これはもう仕方の無いことなのかな? そう言うものだと割り切るべき?


「ん〜あら? 私、居眠りしちゃった?」

「うん。エルちゃん抱きながら、外では見せられ無いような顔して寝てたよ」

「あらまぁ.......葵ちゃん、エルちゃんごめんね。今からお姉ちゃんもちゃんとお勉強教えるから♪」

「お姉ちゃん大丈夫だよ〜疲れてるなら先寝ても大丈夫だよ。後は私がエルちゃんに教えるから」

「え、やだよ! 私だけ仲間外れは嫌よ!」

「分かった、分かったから! 私の胸揉まないでよ!」


 隙あらばセクハラして来ますからね。私のお姉ちゃんは.......これがもし男性だったら、刑務所がお家になってしまうレベルだよ。自分の胸でも揉んでれば良いのに.......


「かえでねーたん! おちんちん!」

「あらあら♡ 上手に良く言えたね♡」

「上手に良く言えたね.......じゃないよ! 何でお姉ちゃんが嬉しそうにしてるの!」

「まあまあ、葵ちゃん落ち着いて。こう言うのは根気よく間違いを教えて行かないと駄目よ? 冷静になって♪」


 う〜ん.......お姉ちゃんの言う通りかな。ここは根気よくエルちゃんに間違いだよと教えて行くしか無いか。


「おちんちん! ちょ.......らい!」

「「..............」」


 エルちゃんが涎を垂らしながら、おちんちんを頂戴と言っています。お姉ちゃんはクスクスと笑っていますが、これは前途多難ですね。教えると言うのがこんなにも難しいものだなんて.......色々と身に染みて実感しましたよ。トホホ.......

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る