第73話 観覧車

 




 ◆かえで視点





「もう! エルちゃん! 勝手に舞台上がったら駄目だよ!」

「―――――――――。」

「あ、エルちゃん.......言い過ぎちゃったかな.......あのね、エルちゃん.......」

「んぅ?」

「.......」


 そ、そんな上目遣いで見ないで! 家ならともかく、ここで欲望を解放してしまうのは不味い。エルちゃんに怒ろうとするとどうしても甘くなってしまいます。でも、今日は心を鬼にしてお説教です!


「エルちゃん! どうして.......」

「かえでねーたん!」

「うぐっ.......もう、しょうがない子でちゅね〜♡」


 ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!! 落ち着くのよ。ヒーヒーフーよ。精神を無にして一旦深呼吸しよう。


「ふぅ.......」

「かえでねーたん?」

「エルちゃん、今からお説教ですからね?」

「お姉ちゃん.......お説教とか言いながらエルちゃんを愛でてるようにしか見えないのだけど」


 私の意志と反して身体が勝手に! エルちゃんの頭を優しく撫でて上げるとエルちゃんは目を細めにして、気持ち良さそうにしています。


「あ、あの.......すみません。今回のみくるちゃんのイベントが想定外でしたけど、大いに盛り上がったので報酬をお支払い致します」

「え? いえいえ、迷惑お掛けしてしまいましたので受け取れませんよ!」

「受け取って下さい、こちらは私の気持ちでもあります!」


 監督さんから少し分厚い封筒を頂いてしまいました.......これ、現金が入ってるのでしょうか? ここで下手に断るのも逆に失礼になるのかしら?


「分かりました.......ありがたく頂戴します」

「最高の舞台になったよ! 是非良かったらまた出て欲しいくらいですよ〜」

「あはは.......では失礼しますね」


 あぁ.......お金も頂いてしまった。でも、経緯はともあれこのお金はエルちゃんが勝ち取ったお金です。このお金は将来エルちゃんの為に残して置きましょう。


「葵ちゃん、このお金はエルちゃんが大きくなった時に渡そうか。将来必要になるだろうし」

「うん、そうだね。まさかお金を貰えるとはね.......」


 今日は買い物はまともに出来そうにありませんね。先程からエルちゃんと一緒に写真を撮りたい、頭撫でさせて欲しいと次から次へとキリがありません。他の人がエルちゃんを愛でているのを見てしまうと嫉妬しちゃうのです!


「お姉ちゃん、買い物は厳しいかもしれないけど、3人で観覧車乗らない? せっかくメルフールに来たんだし」

「おお! いいね! 乗ろう乗ろう!」

「――――――?」

「エルちゃん〜今日はもう抱っこの刑ですからね? 離しませんからね?」


 家に帰るまでは、常にエルちゃんを抱っこするなり手を繋がないと何をしでかすか分からないですからね。帰ったらこちょこちょとチュッチュの刑です! 





 ―――メルフール・観覧車乗り場―――





「―――――――――!?」

「エルちゃん、これは観覧車と言う乗り物何だよ♪ 大きいでしょ〜」

「んにゅ.......」


 今日のエルちゃんは忙しいですね。ここに来る道中も飲食店を通る度に指を差しながら興奮しておりました。キョロキョロと辺りを見渡すエルちゃんが最高に可愛です♡ 本当に反則的な可愛さですよ.......エルちゃんはいつも私の心を焦らして来ます。そんな顔や仕草されたらうっかり襲っちゃいますよ? 


「お次の方どうぞ♪」

「は〜い♪ エルちゃん、葵ちゃん行くよ!」

「お姉ちゃん.......はしゃぎすぎ」


 仕方のない事です。妹と3人、密室の中で体を密着させる素晴らしいイチャイチャなのです! 興奮するに決まってるじゃないですか!


「―――――――――!!」

「あらあら、エルちゃん観覧車乗るのは初めてかな?」


 観覧車がゆっくりと上へ進んで行くに連れて、興奮していたエルちゃんが借りて来た猫のように大人しくなって行きました。


「かえでねーたん.......」

「あらまぁ♡ エルちゃん高い所苦手なのかな?」

「ぐすんっ.......んぅ.......」


 エルちゃんが私の身体に必死にしがみついています。床も透明で透けているから余計に怖いのかもしれません。ここはお姉ちゃんとして、安心させて上げないと行けませんね♪


「ヒィッ.......!? ――――――!!」

「大丈夫でちゅよ〜怖くないですからね〜♪」


 エルちゃんの小さな身体がぷるぷると震えています。そんな可愛い姿を見せられてしまったら、意地悪したくなっちゃいます♡ 安心させようと言いましたけど、気が変わってしまいました♡ 本当にイケナイお姉ちゃんでごめんね♪


「エルちゃん! ほら、あれ見て! 大きなお菓子が浮いてるよ!」

「んぅ? おかち?」


 お菓子が浮いてる訳がありません。勿論これは嘘なのです♪


「わぁっ!!」

「ヒィッ.......!?」


 もう堪らん! 私の膝の上で可愛い天使ちゃんがあたふたと慌てています♡ 


「――――――!! ぷいっ!」

「あらあら♡ エルちゃん怒でちゅか? ん?」

「――――――!」

「フグさんみたいだね♡ つんつん〜♪」


 頬っぺたを膨らませて少し拗ねているエルちゃん。尊いわ.......エルちゃんの頬っぺの触り心地がやばい。ずっと触ってたいレベルです!


「お姉ちゃん、そんな意地悪したらエルちゃん泣いちゃうよ? ほら、エルちゃんこっちにおいで♪」

「あおいねーたん!」

「よしよし♪ 全く.......意地悪なお姉ちゃんだよね〜」


 葵ちゃんもそう言いながら顔がニヤニヤしています。姉妹は似るところはやはり似るものです♪


「エルちゃんはこちょこちょの刑だよ!」

「――――――!? ――――――!!」

「暴れても無駄だよ? うふふ.......全くエルちゃんはいつもいつも! 私達の心を焦らして! 今日という今日は許しません!」


 あぁ、葵ちゃんの目が.......あれは完全に楽しんで居ますね。エルちゃんが大声で笑っています。


「ん? ここが気持ち良いのかな? それともここかな?」

「――――――!? めっ! あおいねーたん! メッなの!」

「ほほう〜エルちゃんは欲張りさんだね〜満遍なくこちょこちょしてあげるね!」

「――――――!! ――――――!?」


 見てて癒されますね♪ エルちゃんが助けてと視線をこちらへと向けているのですが、私は意地悪なお姉ちゃんなので助けてあげません! もっと私達に笑顔を見せて貰おうじゃありませんか♪


「ぐぬぬっ.......!?」

「エルちゃん逃げ場は無いよ?」


 駄目だ.......もう我慢出来ません!


「もう無理! 私も混ぜて!」

「ちょ!? お姉ちゃん落ち着いて!」

「私はいつだって冷静よ♡ だからチューしましょ!」

「わぷっ!? お姉ちゃん、私達姉妹だよ? そんなDEEPなキス何て.......」


 私は葵ちゃんとキスをした後にエルちゃんのお顔に沢山チュッチュをしてあげました♡


「全然おかしくないよ? ん? エルちゃんどうしたの?」

「ん!」

「あらまぁ〜綺麗な景色だね♪」


 怖がっていたエルちゃんが、今度は綺麗な景色を見て目をキラキラと輝かせています♪ 指を差して何やら興奮しております。


「あ! エルちゃんあれ見て! 富士山だよ!」

「ふぁ〜! んぅ? ふじたん?」

「そうよ♪ あれはふじたんよ!」


 寒い季節になって来ると山も雪化粧をして、素晴らしい景色が見られます。立派な富士山がここからでも一望できますね〜♪


「お姉ちゃん、あれは富士山じゃ無くて御嶽山だよ.......富士山がここから見える訳無いじゃん.......」

「..............」


 あぁ! 恥ずかしいわ! ドヤ顔で富士山と言ってしまったわ。まあミスは誰にでもある事です。


「かえでねーたん! あおいねーたん!」

「今度は何かなぁ?」


 エルちゃんが指を差している方を見てみると.......


「あ、あれは.......」

「駄目だよ.......あれはエルちゃんにはまだ早いよ!」


 俗に言うラ〇ホテルですね。確かに大きくて目立つ建物ですが、エルちゃんにはまだ教えるのは早い分野です。


「エルちゃん、あれは女の子同士でイチャイチャする場所なの」

「んぅ? イチャチャ?」

「そうなの! エルちゃんにもいつか分かる日が来るよ! ほら! エルちゃんお菓子が浮いてるよ!」

「ふぇ? おかち!?」


 エルちゃんは相変わらずチョロいですね♡ お菓子と言えば必ず反応します。いつかはエルちゃんにも色々と教える日が来るのは分かって居ますが.......教育すると言うのは難しいものですね。




 ◆エルちゃん視点




「ふぁ.......!? 大魔王はろぉわーくを倒してしまった.......」


 僕が大魔王はろぉーわーくにトドメの一撃をキメたら、大魔王はろぉーわーくは背中から倒れてピクリとも動かなくなりました。


【―――――――――!!】

【―――――――――♡】

【―――――――――!?】


 会場が爆発したかのように大いに歓声が湧きました。僕の決断は無駄では無かった.......マリコお姉さんを助ける事が出来たのです!


「かえでねーたん! あおいねーたん! 大魔王倒したよ! 僕頑張ったよ!」


 お姉さん達は慌てて僕の方へと駆け寄って来ました。何だかお姉さん達の様子がデジャブです。笑顔なのですが、目が笑って居ないのです! 僕はかえでねーたんに強制的に抱っこされながら舞台を後にしました。


「エルちゃん――――――!」

「ふぇ? かえでねーたん?」

「―――――――――!!」


 案の定かえでねーたんに怒られてしまいました.......悲しい。


「んみゅ.......すりすり」

「――――――♡」


 僕がスリスリするとかえでねーたんは優しくなでなでしてくれるのです♪ かえでねーたんも結構チョロいのかもしれません。


「―――――――――!!」

「ぐぬぬっ.......!? かえでねーたん苦しいよぉ」


 かえでねーたんの抱く力がいつもより強い気がします。僕を二度と離さないと行った様な感じです。何処に連れていかれるのかな?





 ―――数分後―――





「な、何じゃこりわ!? まさか.......これに乗り込むの!?」


 かえでねーたんに抱っこされながら着いた場所には、物凄く大きな乗り物が天高く聳え立っています。まさか、これに今から乗ると言うのでしょうか!? ゆっくりと動いています.......これは乗り物では無く生き物なのかな?


「――――――♪」

「はわわっ.......!? ま、待って! 僕心の準備がまだ.......んみゃあ!?」


 あおいねーたんとかえでねーたんの僕の3人で、とてつもなく大きな乗り物へと乗り込みました。


「ふぁ!? 床が透けてる!?」

「――――――♪」

「ふぇ!? あわわ.......このまま僕達天国に行ってしまうのかな? ヒィッ.......!? 落ちちゃう! かえでねーたん落ちちゃうよぉ!」


 段々と上昇して行きます! 僕は無意識の内にかえでねーたんの身体に思い切りしがみついておりました。だって床が透けてるんだもん! しかもゆっくりと地上から離れてる!


「――――――♡」

「か、かえでねーたん! マズイですよ! 早く脱出しないと僕達天に召されてしまいますよ! あおいねーたんもこのままで良いのですか!?」


 僕はかえでねーたんにしがみつきながら、必死に説得を試みるも何故だか僕を見ながら目をハートにしております。今はそんな場合では無いというのに!


「エ.......ル.......ちゃん.......お.......か.......し!」

「ふぇ? おかちがあるの!?」


 なんですと!? おかちが浮いてるだと.......? 何処にあるの!? ん? あれれ? 何処にも見当たらないのだけど.......


「わっ!」

「ヒィッ.......!?」


 もう! またやられた! かえでねーたんに騙されました! 最近かえでねーたんが良く僕に意地悪をしてくるのです! おかちがあると言われたら誰だって振り向いてしまうではありませんか!


「かえでねーたん何て知らない! ふんだっ!」

「――――――♡」

「な!? 何をするつもりですか!?」


 やばい.......かえでねーたんがこの表情を浮かべてる時は、何か悪巧みをしている時がほとんどです! また僕をこちょこちょしようとしてもそうは行きませんよ!?


「―――――――――♪」

「ふぇ? あおいねーたん! かえでねーたんが僕を虐めて来るの! 助けて!」

「―――――――――♡」


 あおいねーたんに助けを求めたのが、僕の運の尽きでした。あおいねーたんの目がやばい事になっていたのです! このゾクゾクとするような目をしている時のあおいねーたんは、かえでねーたんよりもタチが悪いのです!


「―――――――――!!」

「んみゃ!? こちょこちょは駄目! めっ! やめてぇ.......!」


 僕はあおいねーたんにこちょこちょされて、2人のお姉さんに弄ばれてしまいました。僕はおもちゃじゃありませんよ!


「わぷっ!?」

「――――――♡」


 かえでねーたんの大きな胸で窒息死するかと思いました。あおいねーたんごと僕を抱きしめてチュッチュ攻撃をして来るのです! 僕はれっきとした男です! お姉さん達はもう少し恥じらいと言うものを身に付けて欲しいものです!


「ふぁああ.......綺麗.......」


 僕がふと外を見るとそこには綺麗な景色が一望出来ました。天から街の景色を見れるとは夢みたいです。気付けばさっきまで震えてた身体が、今ではピクリとも動かなくなりました。むしろ外の景色が凄すぎて唖然としています。


「あのお山さん大きい! あれしゅごいよ!」

「――――――ふ―――じ―――た―――ん」

「ふむふむ、あれはふじたんと言うのか.......何とも可愛いらしいお名前ですね」


 お? 僕が指を差したらあおいねーたんやかえでねーたんのこちょこちょ攻撃が止まったぞ? ならば次は.......


「あのピンク色の大きなお城みたいな建物は何ですか?」

「―――――――――!?」

「―――――――――!!」


 ん? 何だかお姉さん達の様子が騒がしいですね。あのお城みたいな建物には何があると言うのでしょうか? お姉さん達が狼狽える程です。何かあるに違いありません。


「お.......か.......ち.......!!」

「なぬ!? おかち!?」


 しまった! またやられた.......無意識のうちにおかちと聞くと身体が反応してしまいます。そっちがその気なら僕も反撃しちゃうもんね!


「かえでねーたんにこちょこちょ攻撃だ!」

「――――――!?」


 とりあえず僕は紳士なので、かえでねーたんの胸やあそこは触らない様に意識をしてこちょこちょ攻撃を仕掛けたのですが、かえでねーたんに火が付いてしまい逆に返り討ちにあってしまいました。しかも、僕が暴れたせいで、かえでねーたんの見えては行けない所が見えてしまいました。僕の右手でかえでねーたんのあそこを思い切り触ってしまったのです! しかも、少し濡れていたような.......


「――――――♡」

「はわわっ.......!? ぼ、僕はそんなつもりは.......」


 あおいねーたんは白のおパンツで、かえでねーたんはピンク色です。はっ.......!? 僕は別に見たくて見た訳ではありませんよ!? こ、これは事故なのです! 


「ふぇ? かえでねーたん? あおいねーたん?」

「――――――♡」

「――――――!!」


 僕の両隣りにあおいねーたんとかえでねーたんが、僕を挟むようにして座りました。僕の右肩と左肩にはお姉さん達の柔らかい胸が.......う、動けない!?


 この後エルちゃんはお姉さん達に寄って、赤ちゃんプレイをさせられながら弄ばれるのでした。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る