第66話 ショッピングモール・メルフール☆ドMなお兄さんVSエルちゃん
◆
「葵ちゃん、エルちゃん、準備は良いかな? 忘れ物は大丈夫?」
「――――――!」
「お姉ちゃん、おっけだよ〜戸締りも良し♪」
いよいよお出掛けです♪ 今日は三姉妹で純白のワンピースを着ております♪ お揃いって素晴らしいですよね♡
葵ちゃんも普段ワンピースは着ないので新鮮味があってめっちゃ可愛いです♪
「――――――!」
「エルちゃん、そんな暴れたら危ないでちゅよ〜」
エルちゃんはベビーカーがお気に入りのようです。何と言ってるのかは分かりませんが、テンションが高いと言う事だけは見て分かります♪
「お姉ちゃん、みくるちゃんのイベント昼からだよね? その間ぶらぶらと見て回ろうよ!」
「うん、そうだね♪ エルちゃんにも色々見せてあげたいし♪」
それではレッツゴーです! これから行くのは、隣町のメルフールと呼ばれている大きな商業施設です。5階建ての建物で、店が所狭しと沢山並んでいます。映画館やボルタリングにゴーカート、更には観覧車まで色々と揃っています。メルフールには、イベント等が行われる際に使われる大型特設ステージがあるので、みくるちゃんのイベントはそこで開催されるらしいです。
「あら? エルちゃん、おもちゃの杖も持って行くの?」
「―――――――――♪」
「うんうん♪ じゃあ、こっちの兎さんのリュックに入れて持って行きましょうか。無くさないように気を付けるんだよ?」
魔法少女☆みくるちゃんのおもちゃの杖が、エルちゃんの中では一番のお気に入りなのかもしれません。家を出る前もティッシュでふきふきとおもちゃの杖を磨いて、白猫のタマちゃんにドヤ顔をしながら見せびらかしておりました。その光景を見てた私や葵ちゃんは、いつの間にか携帯を片手にパシャパシャと連写して悶絶する事に。
「そうだ! 葵ちゃん、お高いカメラ買わない? エルちゃんの可愛い写真を沢山撮る為にも」
「お姉ちゃん、冷静になろう。ただでさえお姉ちゃん、最近エルちゃんにお金沢山使ってるよね? そのうち本当に破産しちゃうよ?」
「うぐっ.......残業して稼いで.......」
「残業したら、エルちゃんと触れ合う時間減るけど大丈夫?」
はっ!? 私とした事が、確かに残業なんてしたら、エルちゃんや葵ちゃん達と一緒に過ごす時間が減ってしまうわね。お金よりも姉妹との時間の方が何倍も大切です!
「そうね.......葵ちゃん。お姉ちゃんが間違ってたよ」
「うんうん♪ 分かってくれたなら良いよ」
「よし、もう少しカメラのグレードを下げよう」
「結局買うの!?」
正直な所、今までお金はあんまり使わなかったので貯金はかなりあります。エルちゃんと暮らすようになってからは、お金を少しずつ使うようになりましたが、私はエルちゃんの為なら破産しても構いません!
「んみゅ? かえでねーたん?」
「あぁ、待たせてごめんね♪ じゃあ今度こそレッツゴー!」
「あれ? お姉ちゃん、鞄は?」
「あ、しまった。部屋に忘れたかも.......」
忘れ物は無いかと尋ねた張本人が忘れ物をしてしまうとは.......てへぺろりんこ♪
☆大型ショッピングモール・メルフール☆
「エルちゃん、見えて来たよ♪ あれが今日の目的地、メルフールよ!」
「―――――――――!?」
「エルちゃん元気だよね〜さっきまで道中、車や電車を見て興奮したり、お店を見つけ次第指を差したりして」
「エルちゃんは好奇心旺盛のお年頃だからね、仕方ないよ」
目的地に近付くと人混みも段々と激しくなって来ました。エルちゃんは興奮していて気付いて無いかもしれませんが、すれ違う度に通行人の方達からの視線を感じます。さっきすれ違った女子高生達に至っては、エルちゃんを見て騒いでいたくらいです。でも、それは仕方の無い事ですね。エルちゃんは、金髪でお耳が長いので帽子を被せても目立ってしまいます。それに、私の妹は世界一可愛いですから♪
〖あら、あの子達可愛くない!?〗
〖エルフのコスプレかしら?〗
〖俺、あのお姉さんめっちゃタイプやわ〜〗
〖尊い.......なにあの子。めちゃくちゃ尊い.......拝んどこ〗
〖幼女.......ディふふふ.......〗
〖胸デカ!? 何カップあるんだよ.......あれ〗
〖現実世界にまさかのロリエルフ降臨ですか!?〗
めっちゃ見られてます! エルちゃんが褒められるのはお姉ちゃんとしても少し鼻が高いです♪ でも、ちょっと恥ずかしいかも.......エルちゃんは相変わらず目をキラキラとさせながら、色々な所を見てさっきからテンションが高いです。エルちゃんは魔性の幼女なので、見た人みんなを虜にしてしまいますからね。
「かえでねーたん!」
「ん? あ、あれはお魚さんのバルーンかな? リアルなマグロだね」
エルちゃんが目を見開いて驚いています。お魚の形の風船を見て何か言ってますね。さてと、いよいよショッピングモールの中へと突入です! 今日は3人でパフェをシェアして食べたいなぁ♪ お洋服も見たり、ゲーセンへ行ったり、美味しい物を食べ歩きも良いですね♪ 〆は観覧車に乗って、上空でイチャイチャするのもまた一興です♪ あくまでメインの方は、魔法少女☆みくるちゃんのイベントですけどね♪
「ふぁあああ!? あおいねーたん、かえでねーたん! お○ん○ん!」
「ちょ!? エルちゃん! あれはパン屋さん! お○ん○んじゃないから!」
純粋な笑顔でお○ん○んと言うエルちゃん。本当は駄目だよとか言わないと行けないけど、何故でしょうか。思わずニヤけてしまいます。だって.......幼い女の子が、お○ん○んと言うのですよ!?
「ちょっと、お姉ちゃんもニヤニヤしないでちゃんと駄目だよと言わないと.......何でお姉ちゃんが喜んでるの?」
「べ、別に喜んで何か無いからね? やれやれ.......これはまずいわね。帰ったら徹底的に教育してあげないと.......エルちゃんが将来恥をかくことになっちゃう」
エルちゃんには帰ったら色々と教えてあげないと行けませんね。あら? エルちゃんがベビーカーから降りたそうにしている。どうしましょう.......こんな広い場所でエルちゃんが迷子になったら大変だし.......ちゃんと手を繋いでいれば大丈夫かな? こうして、色々な物を見たり触れたりする事は、エルちゃんに取っても良い勉強にもなるので今日は自由にさせてあげましょうか。
「エルちゃん、ベビーカーから降りても良いけど、お姉ちゃん達から離れたらメッだからね?」
「――――――!」
「うふふ.......♡」
可愛い! こんなにはしゃいでいるエルちゃんを見るのは初めてかもしれないわね。今日は私も楽しんじゃお♡
「お姉ちゃん、ベビーカー邪魔そうなら入口近くに荷物預ける場所あったから置いてくるよ」
「葵ちゃん、ありがとう♪ じゃあお願いするね♪ 私、そこのATMでお金卸してくるね〜」
「了解。エルちゃんの事ちゃんと見ててよ?」
「大丈夫よ♪」
今日はお金も沢山使っちゃいましょう♪ 50万卸して足りなければまた追加すれば良いかな♪ エルちゃんの欲しい物沢山買ってあげるからね♪
◆エルちゃん視点
何じゃここわ!? 綺麗な建物に数多くのお店.......しかも、空中の至る所に魚や謎の物体が浮いてる! 魚って、空飛べるのか! 何だか未知の場所や物に囲まれるとワクワクしゅるよ!
「ふわぁああああ.......美味しそうな匂いがしゅる! お、何じゃあの食べ物は! あっちにもこっちにも! しゅごいよ!」
僕が住んでたスラムの街とは天と地の差です! ここの建物は、王都のお城より大きいのではなかろうか? 清潔感あって綺麗で、中に入ると物凄い数のお店が並んでる。もう凄いとしか言えません! しかも、周りには沢山の人が歩いています。
「あ、あれは! かえでねーたん! お○ん○んパンありゅよ! 美味しそうだなぁ」
「―――――――――!?」
「―――――――――♡」
しかし、お○ん○んパンと言うとあおいねーたんはメッて感じで怒るのですが、かえでねーたんは何故かニヤニヤと笑うのです。お○ん○ん.......この言葉には何か深い特別な意味があるのでしょうか? この言葉はかえでねーたん達のお母様から教えて頂いた言葉です。パンの事を指差して言っていたので、おそらく間違いは無いと思うのですが.......
「しかし、こんなに店があると目移りしちゃうなぁ.......じゅるり.......」
今更だけど僕なんかが来ても良い場所なのかな? あ、でも僕お金持って無いぞ.......よし、帰ったら沢山お手伝いして、かえでねーたんやあおいねーたんにマッサージしよう! おねだりしたら買ってくれるかなぁ? あれもこれも全てが美味しそう。
「――――――♪」
「んぅ? かえでねーたん?」
かえでねーたんが僕の手を繋いで歩き始めました。身体が小さくなってから歩く速度は遅くなりましたけど、かえでねーたんやあおいねーたんは優しいので、いつも僕に合わせてくれます。僕にもしお金があったら、真っ先にかえでねーたんやあおいねーたんに恩返しとして、何かプレゼントしてあげたいです。
「――――――♪」
「ふぁ.......!? ゆ、床が動いてるだと!? しかも、上に向かってスライドしてゆ.......これに乗って2階に行くのかな?」
何で床が動いてるの!? これ乗るタイミング難しくない? しかも、この黄色の線は何だろう? 見た事ないぞ.......
「――――――!」
「はわっ.......!?」
僕がタイミングを見計らってると後ろでは、いつの間にか行列が出来ていました。慌てていたかえでねーたんに抱かれて、僕達は2階へと向かいます。周りの人達の視線が何故か優しかったです。
「んおお! 立ってるだけで上に上がってゆ!」
「――――――♪」
「んぅ? エレベイタ?」
どうやら、エレベイタ? と言う床らしい。摩訶不思議な床があるものですね。歩かなくても自動で動く何て.......一体どう言う仕組みで動いているのかな? もしかして、力持ちの誰かが引っ張ってるのだろうか? 謎ですね.......
「――――――♪」
「―――――――――!」
「――――――!」
な、何だろう.......周りの人達が僕を見てる気がする。自意識過剰なのかもしれないけど.......んぅ.......恥ずかちいよぉ。
「か、かえでねーたん.......」
「―――――――――――♪」
思わずかえでねーたんの後ろに隠れてしまった。あおいねーたんの方を見てみるとニコニコしながら僕の手を繋いでくれました。
「―――――――――♪」
右手はかえでねーたん、左手はあおいねーたんと手を繋ぎながら歩いて居ます。よく見ると周りの人達は髪の毛の色が黒色が多いです。僕の住んでたスラムでは、黒髪は珍しいのに.......ここにいる大半の人達が黒髪だ。まるで異世界に迷い込んだみたいだ.......ん? 待てよ? 流石に国外だとしても、ここまで技術や食べ物が発展しているのだろうか? もしかして、僕は本当に異世界に?
「――――――♪」
「あ! お肉だ♡」
僕は考え事をして歩いて居たけど、美味しそうな食べ物を目の前にしたら、全てがもうどうでも良くなってしまいました。今日は食べれるだけ美味しい物を食べるぞ!
「――――――♪」
「かえでねーたん、あおいねーたん! あのお肉食べたいです!」
食べ物を目の前にすると頭よりも先に身体が動いてしまいます。かえでねーたんとあおいねーたんの手を引っ張ってお店の前まで来てしまいました。何と言うけしからんお肉だ.......串に刺してジュージューと音を立てて焼かれています。香ばしい食欲をそそる何かのタレが付いたお肉。何のお肉かは分かりませんが、かえでねーたんがヤキトリと言っていました。種類も沢山あってかなり迷ってしまいます。全部食べてみたいと言う気持ちははあるのですが、ここで食べてしまっては他の店の食べ物が食べれなくなっちゃう。ここは我慢して一つだけにしておこう。
「――――――♡」
「わ〜い♪ お肉♡」
僕は我慢出来ずに店員のお姉さんから貰った瞬間に一口食べてしまいました。店員のお姉さんが何故かうっとりとしながら僕を見ていましたけど、今のお肉を手にした僕には些事なこと。
「もぐもぐ.......おいちい! これおいちいよ!」
「――――――? ―――――――――♪」
「うぅ.......ぐすんっ、何このタレ。めちゃくちゃ美味い」
「―――――――――!?」
「あ、ちがうの! 悲しくて泣いてるのでは無いの! 美味しく涙が.......」
お家でいつも食べるご飯もめちゃくちゃ美味しいのですが、これはこれで食べた事の無い味をしていて、もう衝撃的でした。
「なっ!? 何で.......何で、あんな所に魔物が居るんだ!?」
僕の視線の先には二足歩行型の魔物が立っていたのです!
◆熊さんの着ぐるみを着たドMなお兄さん
「あ! 熊さん! 風船欲しい!」
「はい、どうぞ♪」
「わ〜い♪ 熊さんありがとう!」
やっぱり子供は良いよなぁ♪ 素直で可愛いし。熊さんの着ぐるみ着て仕事するのは動きづらくて大変だけど、子供達の笑顔が沢山見れるので、俺はこの仕事にやりがいを感じている。そしてこの暑い中、自分の体内にある水分が奪われて行く感じ.......何て甘美な拷問だろうか。もう少し欲を言えば、時給を上げて欲しい所だ。
「――――――!? ―――――――――!」
「お? お嬢ちゃんも風船欲しいのかい?」
何て愛らしい女の子だろう.......金髪に耳が長い.......最近のコスプレはクオリティが高いな。幼女に踏まれたらさぞ気持ち良いだろうなぁ〜罵倒しながら踏まれたら、俺はもう人生に悔い無くあの世へ逝けるだろう。
「おはようございます〜」
「色々な風船がありますね♪」
しかも、お姉さん2人もめちゃくちゃ美人で、俺のタイプかもしれない。2人ともナイスバディで胸もめちゃくちゃデカい。妄想が捗るンゴね〜はっ!? いかんいかん、今は仕事中だ。余計な雑念は振り払わなければ。
「メルフールへようこそ♪ 麗しのレディ達。無料で風船あげちゃうよ〜♪」
「どうも〜♪ エルちゃん風船欲しい?」
「ぐぬぬっ.......」
「どの風船が欲しいかな? あ、このマグロの風船はどうかな?」
どうやら小さい女の子の名前は、エルちゃんと言うらしい。この着ぐるみを着ていると大抵の子供達は喜ぶのだが、この女の子は何故かこちらを警戒している。人見知りなのかな?
「――――――!!」
「あ、こら! エルちゃん、熊さんを叩いたら駄目だよ! すみませんね、うちの妹がご迷惑かけて」
「いえいえ! 可愛い妹さんですね♪ もしかして、遊んで欲しかったのかな?」
ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ちくしょおおお!! この着ぐるみのせいで、せっかく幼女ちゃんに叩いて貰えたのに感触が分からねえ! お嬢ちゃん、もっと俺を叩いてくれ! さあ、お兄さんと死闘を繰り広げよう!
「よし、お嬢ちゃん。お兄さんが敵役をしてあげようでは無いか」
「――――――!」
俺は何か言いたげなお姉さん達の言葉を遮った。大丈夫、こう見えても昔は妹の面倒をよく見ていたものだ。小さい子の相手ならお手の物だぜ!
「え、お嬢ちゃんそれは.......」
「―――――――――!」
お嬢ちゃんがうさぎのリュックから、何やらおもちゃの杖?を取り出して身構えている。いや、あれは魔法少女☆みくるちゃんの杖じゃないか。
「あ、そっか。今日、お昼からみくるちゃんのイベントがあるのでしたね」
「はい、私の妹がみくるちゃん大好きでしてね♪」
「なるほど、じゃあお兄さんが敵役として遊んであげよう!」
さあ、お嬢ちゃんばっちこい! お兄さんがお嬢ちゃんの全てを受け取ってあげる!
「フフ.......我が名は、大魔王、足の小指をドアにぶつけた田中だ!」
「―――――――――。」
一応みくるちゃんに出て来る敵キャラは一通り把握してある。後はお嬢ちゃんからの攻撃を受けて盛大に転んでやろうでは無いか。お嬢ちゃんが喜んでくれるなら幸いだけど。
「―――――――――!」
「ぐはっ.......!? む、無念.......」
俺はお嬢ちゃんの杖に叩かれた直後に背中から倒れた。倒れたふりをしているとお嬢ちゃんは目を見開いて驚いている。そして、次の瞬間目をキラキラと輝かせながらお姉さん達に胸を張ってえっへんとしている。控えめに言って可愛すぎる! 尊すぎるだろ! 一瞬、三途の川が見えたぞ.......
「すみませんね、妹の茶番に付き合ってくれて」
「大丈夫ですよ♪ それでは、風船を.......あっ! しまった!」
なんと言うことだ.......俺の馬鹿! 手に持ってた風船を全て上に飛ばしてしまった.......
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