エピソード7

 ゲーム開始からわずか2分、コンテナエリアへ突入した部隊の連絡が途絶えた事で、事の重要性に気付き始めていた。


「コンテナへ向かった部隊がやられた」


 マシンガンで武装した重装兵プレイヤーが現状を報告する。その様子は他のメンバーも把握済み。バトルゲージも2人が倒された事で減少し、こちらは不利としか言いようがない。しかし、ソレとは別にコンテナへ向かおうとしたプレイヤーを撃破したので、五分五分かもしれないが。


「既に2人はスタート地点に戻っているはずだ。2人は別の部隊に当たらせろ!」


 リーダーと思わしき重装兵プレイヤーは、ARゲームでもそこそこの実力者でもあった。しかし、彼は部隊に所属しているプレイヤーの全てがチートガジェットを使っている事に気づかない。実は、リーダーがチートプレイヤーの存在に気付かないのには別の理由があった。ARガジェットのチェック的な意味ではなく――。


「何としても勝たなければ――後がないのだ」


 彼にとって、今回の敗北は降格的な意味でも後がないという状況だったのである。チートを使っているプレイヤーでも、使っていない強豪プレイヤーでも――同じ反応をしたのだろう。それが、彼にとっては降格よりも後悔するような事態に遭遇するとは、予想出来ていなかったのかもしれない。



 2人のプレイヤーが撃破されたコンテナ付近、そこにはスニーキングスーツ姿の女性が立っていた。スーツの方がぴっちりと言う感じなので、女性だと言うのは相当鈍い感覚を持っていない限りは見た目で分かる。 


「大正解よ――って、聞いていないかもね」


 チートプレイヤーを撃退したヴィスマルクは、周囲を再び警戒していた。ARバイザーに表示されているレーダーには反応らしき物は出ていない。レーダーに対するステルスがあったとしても、それを使えるのは数秒間のみ。それも、特殊スキルとしてだ。


「コンテナは他のプレイヤーに任せるか」


 ヴィスマルクはコンテナに興味を示す事無く、別のエリアへと向かう。その表情には――複雑な思いがあるようだ。そして、ヴィスマルクが離れたのと同時位に他の味方プレイヤーがコンテナを確保する事に。



 デンドロビウムも周囲のチートプレイヤーを撃破していく内に――相手側のゲージは既に割れていた。気づいた頃には自分達のチームが勝利していたのだが、それに気づいたのはゲーム終了のメッセージが表示されてからである。


「そう言う事か――」


 デンドロビウムとしては消化不良な気配もする展開だったが、勝利出来たことには変わりないだろう。相手はチートプレイヤーと言う事もあって、情け無用に撃破したような気配なのだが。


【速報:ビスマルクがAクラスに昇格】


 ゲーム終了後、バトル速報の表示をONにしていた事もあった為、メッセージが流れてきたのだが――そこである事に気付いた。先ほどのヴィスマルクと言う人物、実はビスマルクと入れる事が出来なかった可能性があったのである。早いもの勝ちと言う訳ではないのだが、ネーム入力に関しては下ネタや不謹慎な名前でエントリーは出来ない。


 それ以外にも特定の商品名等は使う事が出来ない。戦艦ビスマルクや戦艦大和であれば、特に問題視されるようなネームではないので、大丈夫だろう。それでも――ビスマルクに関しては、プロゲーマーで既にビスマルクが存在する。それを踏まえると――。

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