最初にヒントはあったんだ

 この場所からドドの村までは半日かかった。それは正直、結構な距離ではある。

 だからこそ、此処を整備する何かの意味がある。キコリはそう考えていたのだが……起き上がったドドは、キョトンとした顔をキコリに向けていた。


「すまない。何を言っているのか、ドドには分からない」

「いや、だから此処を」

「こんな離れた場所を整備する意味がない。整備するならするで、柵くらいつけるだろう」


 言われて、キコリは周囲を忙しく見回す。今のドドの言葉が、酷く重要なものであると。そう感じたのだ。

 

「そうか、そうだったんだ。最初にヒントはあったんだ……!」

「ちょ、キコリ。まさか」

「そのまさかだ!」


 キコリは叫ぶと、地面に手当たり次第に靴の踵で蹴りを入れていく。

 強く、強く。地面に穴を開けそうな程に強く。


「何かの意図を感じる程に整備された場所、此処にしか居なかったストーンドール……! それが意味していたのは!」


 キコリの地面を踏み抜こうとする足を、地面から生えた巨大な土の腕が掴む。

 それはキコリを思いきり放り投げて……しかし、飛んだオルフェが人間サイズへと巨大化しキコリをキャッチする。


「なんだこいつは……! うおっ!?」


 ドドのメイスが土の腕を砕こうと振るわれ……しかし、足元の地面が盛り上がりドドは転ぶように転がる。

 そうして現れたのは、巨大なソイルゴーレムの姿だ……!


「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」


 ビリビリと空気を震わすような声をソイルゴーレムがあげ、ドドが「うおっ」と僅かに気圧される。ウォークライ……いや、それに似た何かだろう。

 

「こいつ……ずっと此処で大人しく偽装してたってわけ……?」

「そうだ。追ってくるのを防ぐ為に、道を隠してたんだ!」

「ええい、もう! とんだ茶番やらされたわ!」


 オルフェはキコリを空高く持ち上げ、そこで離す。瞬間、キコリはミョルニルを発動させる。

 電撃纏う斧は、ソイルゴーレムの頭部に命中し、叩き割りながら電撃を流す。

 それは当然何処かにあるソイルゴーレムのコアに届くものと思われたが、再生したソイルゴーレムはキコリを斧ごと挟もうとする。

 舌打ちしてキコリはその場を飛びのくようにして地面に転がる。


「デカすぎてダメージが通ってないのか……!?」

「よく分からんがキコリ。アレを倒す方法があるのだな?」

「ああ。アイツの中にあるコアを砕く。それで倒せる」

「ならば頼む。ドドの攻撃はアレに通じそうにはない」

「ああ。でも……必要はないかもしれないな」


 キコリの視線は、上空で無数の石の槍を展開させているオルフェへと向く。


「手間かけさせて……砕け死ね! 最大威力の……ロックランス!」


 降り注ぐ石の槍の雨はキコリたちの眼前でソイルゴーレムへと降り注いで。

 何かが砕ける音と共にソイルゴーレムは崩壊し……キコリの元へと、ヘロヘロとオルフェが舞い降りてくる。


「うええ……一気に魔力使い過ぎたわ」

「おつかれさま、オルフェ」

「……凄いな。ドドは尊敬する」


 とにかく、ソイルゴーレムは倒した。

 そしてソイルゴーレムによる偽装が解けた場所にあるのは……山脈の下へと降りる、道だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る