坊主に足り無さそうなもんっつーと
翌日。キコリはアリアと共に武具店に来ていた。
昨日の夜、アリアの家に泊まったわけだが……キコリは布団だけ借りて床で丸まっていた、のだが。
それでも中々寝付けなかった。あの雑魚寝の宿屋に居る時より緊張したかもしれない。
そして朝一で魔石を換金した後、待ち合わせして武具店に来た……とまあ、そういった感じだ。
「み、る、ぐ、ぶ、ぐ、て、ん……ミルグ武具店」
「はい、正解です。じゃあ入りましょうか」
覚えたての文字を読んで中に入ると、そこには冒険者ギルドの地下とは比べ物にならない数の武器防具が並んでいる。
剣に盾、斧に槍に弓に鎧、短剣もあれば鎌まである。
「す、すごい……」
「でしょう? 派手なものはないですけど、それでも質と品揃えを両立してるのは中々ないんですから」
私のオススメです、とアリアが自慢気に胸を張っていると、奥から店主らしき男性が顔を出してくる。
エルフだ、と口から出そうになってキコリは言葉を飲み込む。
特徴的な耳と、圧倒的な美形っぷり。イメージするエルフそのものだ。
「なんだあ、坊主。エルフの武具屋が珍しいか」
「い、いえ! エルフの人を見るのが初めてだったもので」
「ほー。今時エルフを見るのが初めてなんざ、余程の田舎の出か?」
「はい、まあ」
「ふーん。まあ、アリアが連れてくるってことはそれなりなんだろ?」
店主の男がそうアリアに聞くと、アリアは笑顔で首を横に振る。
「いいえー? むしろ才能はあんまり無いと思います。だからこそ武具くらいは良いモノがいるかなーって」
「うう……」
「ほーん? まあ、見た感じ魔力もそんなに無さそうだしなあ。でもまあ子供だし、上手く成長すれば未来はあるんじゃねえか?」
「え、そうなんですか⁉」
「本気にしない方がいいですよー。エルフは100年単位でモノ言いますから」
ああ、そういやそっか、などと言う店主にキコリはガックリしてしまうが……そんなキコリを店主が見ているのに気付き「な、何か……?」と聞いてしまう。
「で、予算は? メイン武器はそっちの斧か?」
「あ、はい。予算は1万イエンで、あとこの剣を売れたらなって」
「どれどれ?」
店主は剣を受け取ると鞘から引き抜き、じっくりと眺めて。
「鉄屑一歩手前だな、こりゃ。納得いかなきゃ余所持ってってもいいが、まあ……200イエンだな。鋳潰して別のモンにするくらいしかない」
「なら、それでお願いします」
「おう。で、1万イエンだったか? 坊主に足り無さそうなもんっつーと……まあ、鎧か?」
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