第19話 bed


「お前、できんの。」

「言ったろ。主治医に、よーく、聞いてきたから。安心しろ。」

「それは……頼もしいな…」

さすがに不安で、ぬるぬるにされた自分の尻に、佐川はとりあえず自分で指を入れた。

「なんだよ、俺がやるよ。」

「いや、俺初めてだから。でも俺のが、穴は慣れてるしな。」

困惑を表情に出しながらも、自ら準備してくれている佐川の顔を見ながら、友則は一度達して少し萎えた佐川を優しく指で刺激して、へそから、胸まで、舌を這わせた。左の乳首に舌先をねじ込んで、唇で挟んで、甘く噛み、吸う。佐川の乳首は、あまり大きくないが、両方とも、小さく尖って勃ってきた。舌と、指先で、小さな突起を転がして、擦って押しつけながら、佐川の半開きの口に、また深くキスをする。

友則も、佐川も、再びお互いの肌に、硬くなったお互いの粘膜が、またしっとり濡れていくのを感じて、わざと擦りつけたり、挟んだり、挑発し合う。

佐川の膝を折り、佐川の手が蠢いている、その濡れた股間を確かめるようにして、友則はその尻に、今度は自分の長い指を差し入れる。よく濡れて、入口はスムーズだ。佐川の肉棒も張りつめて、指を動かすたびにぶるぶる震えるので、友則はそれを宥めるつもりか、下から先端までなぞるように何度も舐めてキスをした。同時に、指を2本、拡げてほぐすように動かす。

「もう挿れてみろよ。」

漲って張りつめた先端をてらてらと濡らしている友則を確認して、佐川は言う。いったん受け入れると決めたからには、さっきまで緊張して縮こまっていたとは思えないくらいに、男前に言った。

「これだけ濡れてりゃ、まず入るよ。」

友則の指先の刺激に反応する自分自身に安堵したのもつかの間、その安心がすぐに思いもよらない欲望に変わって、佐川は耐えきれずに新しい刺激を欲する。佐川は手を伸ばしてそそり立つ友則をにぎると、親指をつるりとその先端をなぞるように撫でつけて煽る。

「早く。」

極まる刺激に達しまいと、手早くゴムをかぶせて、ほぐして濡らした佐川に自分を当てると、友則はゆっくりと沈みこませてゆく。抵抗なく、柔らかく、自分を飲みこんでゆく佐川に、友則は安心して、そのまま深く、すべてを潜り込ませる。

「うっ、ああっ」

深く、未開通の、その奥をいきなりこじ開けられて、佐川は声を漏らした。佐川の声に、友則はそのまま動かずに、根元までしっかり挿しこんで、佐川に乗って抱きしめる。

「熱い、キツい。搾り取られそう。」

挿入して、抱きしめて、声を漏らす佐川の、口を塞ぐように、キスをして、友則は少しずつ腰を動かす。はじめは奥を掻きまわすように、自分の先端も中で擦りつけて、小刻みに。

「んっ、あ、ヤバ、おれ、やばい…」

佐川は、これまで自分が、相手に与えていたであろう快楽を、初めてその身に受けて、鳥肌が立つ。体をぴったり張り付けて、腰を動かし、自分の中を抉ってくる友則の、背中にしがみついて、足を絡める。しばらく深く犯していた友則も、体を離すと、佐川の腰を抱いて、ぎりぎりまでで、抜けないように、大きくグラインドさせて、きつく締まる刺激を、竿全体に感じながら、佐川の喜ぶ場所を探してゆく。

「俺、すげえ気持ちいい、アンタは、どこがいい。」

「っあっ、ん、…アアッ…」

佐川は言葉にならずに、両手を友則の両腕にしがみつかせて、大きく動く友則の、自分を擦りつける体の中の快感に気が遠くなりそうだった。そんな佐川の快楽にゆがむ顔と、ゆるむ口元を見ながら、友則はまだまだ佐川を突きあげる。

「アッ…あ、そこ、アッ」

佐川が、断片的に、やっとのことで声に出して快感を訴えて、友則もそれにあわせて動きをさらに速める。

「アンタの、その顔で、イキそう。」

佐川の腹の上で、友則の動きのままに、佐川の濡れたペニスが飛び跳ねる。その勃起を握って捕らえると、友則はもう自分の思うままに、一層硬く快楽を求めて極めた限界の己を、激しく、強く、佐川にぶつけて何度も受け止めさせるように送り込んだ。

「いい、いい、すごく…」

友則の手の中の、佐川が跳ねあがって、その内部で暴れ狂っているのを抑えきれないかのように、強く脈を打ちながらその昂ぶりを伝えてくる。

「っっイク!」

二人ほぼ同時にそう言って、二人とも2回目の絶頂を迎えた。

友則の手の中で、佐川の体の中で、これまでになかった快楽を深く味わい、それぞれに感覚が絶頂の余韻に支配されて、茫然自失の中で脱力して果てる。

二人の体は熱く、汗や唾液で肌がべとべとに張り付いて、下半身は、シーツとともに、ぐっしょり冷たく湿っている。

呼吸を整え、体が治まるまで、重さを預け合っていた二人は、お互いが鎮まっていくのを感じて、やっと体を離して、並んで寝転んだ。


「あー。やべえ、よかった。気持ちよかった。」

佐川は言って両手で顔を覆った。擦られた体の快楽の名残りに、うっとりと浸る。

「お前もよかった?よかったよな。」

佐川は半分体を起こして、友則を覗きこむ。

「今度、リョウヘイさん、て呼んで。抱いてる時。」

友則はなんとなく、イラっとした。

「俺は特別に、龍平、って呼ぶよ。」

そんな友則を見て、佐川は嬉しそうに言った。

「じゃあ、俺も、と……って、いややめた。」

友則は佐川の頭を引き寄せると、軽く口づけした。

「アンタの最高は、俺になっただろ。」

自信に満ちた年下の御曹司の美しい笑顔が、佐川にだけ向けられる。

「ああ、オマエだな。」


佐川は泣いた。涙を添えた笑顔だ。



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