第12話 年末年始
12月16日から3日間、佐川は出張で姫路にいた。18日に友則が、帰ってきたら会いたい旨の連絡があったが、ぎりぎりまで作業が完了せず、会うような時間までには戻れないことを伝えて、次の日出社した。
「佐川、きのうすごかったで、総務部。」
18日は三井友則の誕生日で、ひと騒動起こった。プレゼントや、声をかける社員が後を絶たず、仕事に差し支えるので控えるように申し渡しがあった。にも関わらず、女性同士のプレゼント物品に対する諍いまで起こった。デスクに勝手に置いて邪魔である、かさばるとか、高級なものを無造作に置けない、とか、押し付けるな、持って帰れなど次第に無視できない騒ぎとなる。特に本気の女性数人を中心に、ほのかな好意や、業務で関わるだけの女性までもを巻き込んで、ついに総務部長が諌めて、友則は定時に帰されたという。
「ホンマおもろかったわ。女は恐いなあ。」
佐川は遠くで、何事もなかったかのように座っている友則をみた。
誕生日だったか。
昨夜はなんとか会えればよかったと後悔した。前から言ってくれれば、もうすこしどうにかなったかもしれないし、言葉も掛けられたのに。そういうことに限って、まったく友則から自己アピールがないのは意味が分からない。
「大変だったんだな、今日、どこか寄ってくか?」
佐川は夕方、埋め合わせもしたい気持ちで友則に声をかけると、ちょっと不機嫌そうに断られた。
「昨日出来なかった分の仕事があって今日はやめておく。」
「悪かったな、誕生日知ってたら、別で祝ったのに。そういうのは言えよ。代わりに、クリスマスとかするか?」
友則はつまらなそうに答える。
「年末から年始は、三井の家の仕事で早めに休暇を取ってあるから、いない。」
続けて断られて、佐川も心折れて、結局そのまま二人はゆっくり会うことがなく、年末が過ぎて、新年を迎えた。
仕事初めにも友則は姿を見せず、年明けの浮かれた気分もだいぶ落ち着いたころに顔を見せた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます