第52話 プロローグの件
俺達はナッツンとミーナ姫の結婚を祝った後もゴルバード王国に残り、魔物を狩ったり魔境の
自我はまだ出ていないが、俺が指示した通りにダンジョンを作り替えてくれるので、俺は冒険者ギルドマスターのゼムさんと相談して、地下一階~二階はE級冒険者。三階~五階はD級冒険者。五階~十階はC級冒険者が力を付けたりレベルを上げられる様にダンジョン仕様を変更した。
入口にナッツンに頼んだ転移の魔道具を設置して、それにギルドカードをかざせば中に入れる仕組みにした。また、二階、五階、十階にはボス部屋を作り、ソロとパーティーで違うボスが出る様にして二十回に一回位の割合で宝箱が出る仕様にもした。
宝箱の中身は二階だと+80迄の武器か+100迄の防具、又はC品質の回復ポーション(生命力、魔法力)が各五本。
五階では+120迄の武器か+140迄の防具、又はB品質の回復ポーション(生命力、魔法力)が各五本。
十階では+250迄の武器か+300迄の防具、又はA品質の回復ポーション(生命力、魔法力)が各五本が出る様にした。
これは武器や防具はゴルドーさんの工房に依頼して大量に生産してもらい、コアが恐らくその時の気分で判断して宝箱に入れている筈······ である。
管理部屋には武器や防具が並べられていて、ポーションもナッツンのツテを使って職人ギルドから大量に購入した。懐が痛まないかって?
ダンジョンによる冒険者ギルドからの収入が、孤児院への寄付だけでは減らないので、そんな形にして少しでも経済が回れば良いなと思い実行する事にした。二人の妻も賛成してくれたしな。
また、使えない武器や防具が出た時はギルドが適正な価格で買取する事にしてある。
親切設計だが、これが口コミで冒険者達に広がり、魔境の
そして、俺達三人もいよいよ旅立つ日がやって来た。先ずは東にある王国カインに向かう。何故東かと言うと、ケンジさんとアカネさんが西にある神聖皇国ハーネスに向かったからだ。
真逆の方向に行くことで夫婦水入らずの旅を邪魔しなくて済むだろうと考えての事だった。
そして、東門を出た俺達はテクテクと歩き出した。
えっ? 無空間を使わないかって? バカ言っちゃ行けない。旅と言うのは自分で移動して景色を愛でながら行くのが良いんだよ。
······と考えていた時もありました。
二人の妻に可愛くオネダリされた俺はあっさり無空間を使用して、聳え立つ山々をすっ飛ばしてあと三キロも歩けば王国カインの辺境の村に着く場所に飛んでました。
ここで俺は心に誓う。ここからは何か言われても歩いて移動して旅を楽しむぞと。日はまだ朝の光だし、見て回るのが目的なんだからちゃんと歩いて行かないとな。
そうして村まで歩いていると、サヤの気配察知に引っ掛かりがあったらしく、
「トウジ、この先で魔物が何匹かいるみたい」
と言われた。俺は食べれる魔物なら村への土産になると思い走って魔物がいる場所まで向かう事に。
すると、一台の馬車が八匹位いる魔物に囲まれていた。馬車の前には心得があるが、数的に無理だと顔に出ている男性が剣を構えて魔物を牽制している。囲んでいた魔物は見たことが無かったからサヤとマコトに聞いてみたら、大牙イノシシの亜種で、大角ピッグという名前だそうだ。体長が三メートルはある。
無謬で見ろって? 俺の妻二人は俺が頼ると嬉しそうな顔をするから、知ってそうな事は聞く事にしてるんだ。リア充って呼んでくれ。
さてと、そんな事を言ってる場合じゃなかった。
「助けはいるか?」
俺は男性に声をかけた。すると男性はホッとした顔になり、
「冒険者の方ですか? 後出になりますが適正な依頼料金を支払いますので、助けて下さい」
そう言ってまた牽制の為に剣を振った。俺は返事をもらったので、刀を抜いてサヤとマコトに合図する。声を出した俺達の方に向かって三頭ほど来ていたので、その三頭を妻二人に任せて俺は男性の隣に無空間で飛んだ。
「凄い! 縮地を使えるなんて!」
男性は急に現れた俺を見て格好良いスキル名を言うが、違うんです······ 無空間なんですと心の中で訂正しながら、大角ピッグの角を斬って落として行く。この大角ピッグは角が武器でもあり、弱点でもあるようだ。ナマクラな武器では傷もつけられない硬い角だが、ゴルドーさんの刀にかかれば豆腐を斬るような手応えで斬って落とせた。
角を斬られたピッグはそのまま絶命する。何故ならピッグは一番硬い角に心臓と脳みそがあるという特殊な進化をした個体だからだ。それってどうなんだ? と俺は思ったが······
俺達三人がアッサリ八匹の大角ピッグを倒したのを見て男性は腰砕けになってその場に座り込んだ。
「た、助かった。良かった······ 」
それから男性は座り込んだままハッとした様子で俺達に礼を言い出した。
「こ、こんな格好でスミマセン。私は行商を営んでいるハクシンと言います。助かりました、有り難うございます。」
「いや、間に合って良かったよ。俺はトウジという。アッチにいる二人の女性は俺の妻で、サヤとマコトという名だ。三人とも冒険者を生業としている。ところで、このピッグは貰っても良いか?」
「はい、勿論です。が、構わなければ一匹で良いので売って頂けないでしょうか? この先の村で販売したいと思いますので」
まあ、一匹位なら構わないけど、これで土産に出来なくなったな。人の商売の邪魔は出来ないからな。
「ああ、良いぞ。一匹で良いのか?」
「はい、大丈夫です。よろしくお願いします。あのそれでいくらお支払すれば良いですか?」
俺はそう聞かれてサヤとマコトを見る。サヤが目配せするので俺は無音をかけて話しかけた。
「どうした? サヤ」
「トウジ、大角ピッグは角も含めるとギルドだと丸銀貨三枚(三万円相当)で買取してくれるの。この商人さんがいくらの値段をつけるか聞いてみて。あと、誠実な人ならその時に後出で支払うと言ってた依頼料の話も出すと思うから、その話が出たら信じても大丈夫な人だと思う」
「ああ、分かった」
俺はそう返事をして無音を解除した。
突然俺達の声が聞こえなくなったハクシンはポカンとした顔をしていたが、それに構わず俺は言った。
「いくら支払う? ハクシンが決めてくれよ」
俺の言葉に暫く考えていたハクシンだが、意を決した様に言った。
「角は要らないので、角銀貨一枚と大銅貨二枚(七千円相当)でどうでしょうか? それと、先程言った依頼料ですが、大銀貨一枚(五万円相当)でよろしいでしょうか?」
俺はサヤとマコトをチラリと見ると二人とも頷いていたので了承した。
「分かった。その金額で売るよ。解体はしなくて大丈夫か? それに馬車に積むには少し大きいと思うが?」
「解体は村人達がやってくれますので。運ぶのは大丈夫です」
そう言ってハクシンは馬車に声をかけた。
「ヨーレイ、もう大丈夫だ。バッグを持って出てきてくれるかい?」
そうハクシンが言うと馬車の中から十歳位の男の子が出てきて、ハクシンに飛びついた。
「父さん! 良かった~、助かったんだね!」
そう言った後に俺達の方を向いて頭を下げるヨーレイ君。
「危ない所を助けて貰って有り難うございます。僕はヨーレイといいます」
おお、凄い礼儀正しい子供だな。俺がこの位の年だった頃はこんな丁寧な言葉遣いは出来なかったぞ。内心でそう思いながら、俺はヨーレイ君に言った。
「困った時はお互い様だからな。気にしなくても良いぞ。お父さんには買取もしてもらうしな」
俺の返事を聞いてヨーレイ君はハッとして馬車に戻った。どうやら安心しすぎてバッグを忘れたらしい。バッグを手に外に出てきたヨーレイ君の顔は恥ずかしさからか少し赤くなっていたが、優しい俺はスルーしてあげた。
「さあ、それじゃあ好きな一匹を選んで収納してくれ。それと、俺達も旅の途中でな。この先の村まで一緒に行きたいけど構わないか?」
「はい、勿論です。こちらとしては非常に助かりますけど、護衛料は支払う必要がありますか?」
「同じ方向に進むってだけなんだから、護衛料なんて要らないぞ。ただ出来れば俺の妻二人は馬車に乗せてやって欲しいな。料金は払うからさ」
「それこそ、料金なんて要りませんよ。どうかよろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
ハクシンに続きヨーレイ君も頭を下げてきたので、俺も
「ああ、こちらこそよろしく頼む」
と言って短い距離たが見知らぬ連れが出来た事を素直に喜んだ。そして、俺達は村に向かって歩き出した。
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