第12話 新しい武器と防具の件
その夜にはまたやって来た、目眩く官能の夜を過ごして翌朝。
サヤが俺に提案してきた。
「トウジの武防具を昨日貰った鉱石で新調しない?」
俺はそれを聞いてそうだなと思い、了承した。
レベルが上がると共に能力値も上がって、小刀よりも長刀がしっくりくる様になったからだ。
これはサヤの刀を振らせて貰って確認した。
二人で仲良く朝飯を食べて、ゴルドーさんの店に行った。
「ゴルドーさん、お早うございます」
俺は挨拶をしながら店に入る。
俺と一緒に入ってきたサヤはキョロキョロと店の展示武器を見ている。
「おう、トウジじゃないか。どうした? まさかもう武器を壊したのか? それともそっちの嬢ちゃんの武防具でも頼みに来たのか?」
そう聞いてきたゴルドーさんを無視して、サヤがいきなりブッ込んで来た。
「トウジ、このお店はダメなお店だよ。違う店に行こう!」
そう言って俺の腕を引っ張るサヤ。
ニヤリッと獰猛と言って良い笑みを浮かべてゴルドーさんがサヤに聞く。
「ほう! 嬢ちゃん、俺の店は何故ダメなんだい?」
問われたサヤは恐れを知らずに正直に言う。
「だって、展示してある武器も防具も見た目だけキレイなガラクタばかりなんだもん!」
言ったーーー! 俺は恐る恐るゴルドーさんを見た。
「クックックッ······ クワァーハッハッー! 嬢ちゃん、中々見る目を持ってるなぁー! その通りだっ! 展示してあるのはドレモコレモ使えねぇガラクタばかりだっ! だがよ、それで俺の腕を決めてもらっちゃぁ困るなっ! トウジ、腰の小刀を嬢ちゃんは見た事がないのか?」
いきなり俺に振るゴルドーさん。
「いや、一緒に狩りに行ったから見てる筈だけど······」
「えっ、! この小刀は貴方が? でも、展示品と品質が違いすぎるわ!」
そこで俺はサヤに説明した。
ゴルドーさんは誇りを持って仕事をしている職人で、自分の気に入った相手にしか武器や防具を売らない人だということ。
展示品は貴族が式典に使用する為のもので、値段は高いが実際の戦闘には役に立たない事を説明する。
俺からそう聞いて納得するサヤ。
「そうなんだ。ご免なさい」
ゴルドーさんに素直に謝る俺の妻は本当に可愛い。
「気にするな、嬢ちゃん。しかし、嬢ちゃんの武器や防具は見覚えがあるな? ひょっとしたらガーダンの武防具か?」
「ええ、そうです。B級に上がった時に隣国で鍛冶職人をしているガーダンさんがお祝いだって言って作ってくれました。ゴルドーさんはガーダンさんをご存じなんですか?」
サヤに聞かれたゴルドーさんは、
「ガッハッハッハッ、ガーダンは俺の一番弟子だ。七年前に独立したんだが、どうやら怠けずにちゃんとやってるようだな。手紙だけじゃ分からないから、あいつの作る武防具が見れて良かったよ」
「そうなんですね、ガーダンさんは今では、隣国の町カルッカで一番の武防具を作る鍛冶職人なんですよ」
それを聞いて更に嬉しそうなゴルドーさん。
そして、結局用件を聞いてないと言って、早く言えと俺に言ってきた。
いや、さっきまで俺のサヤと歓談してたのは貴方でしょうに······
しかし、大人な俺はそんな事を
俺はバックパックから出すふりをして、ミスリ鉱石をゴルドーさんに渡して、腰の小刀も渡す。
「この鉱石で、この小刀を強化してもらえますか?」
そう聞く俺にゴルドーさんは、
「こりゃあ凄い! 俺も見た事がない純度のミスリ鉱石だ。で、これでその刀を強化しろって? 無理だな。元の材質が悪いからミスリ鉱石が無駄になる。ふむ、トウジよ。レベルが上がったのか? どれ、ステータスを見せてみろ」
そう言われたので俺はステータスを見せた。
ゴルドーさんが俺のステータスを見て固まる。
一分後、
「なっ、!」
「な?」
「なんじゃぁーー! こりゃあーー!」
ゴルドーさんの叫びが店内に響き渡った。
最近癖になっている、部屋に無音をかけるのをやっていて良かったと思う。
そこからのゴルドーさんは凄かった。
表に行って入口に臨時休業と殴り書きした紙を貼って、戻ってきたかと思ったら三本の長刀を持ってきて俺に振らせる。
俺が一番しっくりきたのをコレだと言うと、
「七日、いや五日くれ。五日後に、ここにまた来い。俺の持つ技術を全て注いで最高の長刀を作ってやる。それまでは、これで我慢してくれ」
と俺がしっくりきた長刀を渡して、忙しいからもう行けと言われた。
俺とサヤは目を点にしながら言われた通りに店を出て、時間が早いからバーム商会に行って軽食を買い、北門から出て森に向かう事にした。
因みに預かった長刀は
銘は
いやもう、これで十分なんですがゴルドーさん······
森に入った俺達は、猛毒オロチを二体ずつ狩ってから、王毒オロチがいた巣穴に行ってみた。
すると、またスライムが湧いていたので狩る。
俺が刀でスパスパやってると、サヤが言った。
「トウジ、知ってる?この世界のスライムって、
斬撃無効を持ってるんだよ。それをまあ、スパスパと斬ってるトウジは異常なんだよ」
ああ、それであんなに凝視してたのかと納得した俺だが、サヤもスパスパ斬ってるが······
俺はそれをサヤに指摘した。
すると、驚くべき事実がサヤの口から聞けた。
実は刀身に風魔法を纏わせて、魔法で斬っているのだそうだ。
しかし、これは他の冒険者へのハッタリで編み出した魔法で、普段は使わないらしい。
魔法力も徐々に減っていくし、制御に神経を使うから疲れるらしい。
俺がスパスパ、スパスパ、スライムを斬ってるのを見て悔しくて久しぶりに使用したそうだ。
そんな時に脳内に音が響いた。
「あっ、レベルが上がった」
「あっ、私も上がった! 何で、スライムだよ?
一体で経験値一もないって言われてるスライムだよ?」
サヤは不思議がるが、俺には仮説があった。
昨日は数を数えなかったが、今日はちゃんと倒した数を数えていた。
感覚的には昨日は二百匹位で上がったと思うが、今日は四百匹でレベルが上がった。
サヤは二百匹だ。
つまり、まとまった数のスライムを倒す事によって、経験数値が爆上がりになるんだと思う。
俺が次にここのスライムでレベルを上げようと思えば、恐らく八百匹倒す必要があるのだろう。
その仮説をサヤに話すと、
「スライムにそんな秘密があったなんて······」
と考えこんでいた。
が、ここのスライムがそうだろうと言うだけで、他のスライムも同じかどうかは分からないと言っておいた。
それから、俺達は町に帰りバーム商会に猛毒オロチを買取して貰った。
ライーグさんの満面の笑みが見られて良かった。ライーグさんはまたよろしくお願いしますと言ってホクホク顔で奥に向かっていった。
そして、エルさんのお店に行って晩飯を食べる。
俺達二人が店に行ったら、入口に【closed】と掛けてきたエルさん。
奥からエイダスもやって来て、二人に結婚した事。家も買った事。今後はこの町を拠点に二人で生活していく事を報告した。
エルさんは涙を流して喜び、エイダスも喜んでくれた。
そしてこの日から、エイダスとはタメ口で話す仲になったのだった。
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