2-3話 異世界からやって来たモノ
球技大会が終わってからしばらく経ったある日。
昼休みになり、
「拓海くん、莉子、ちょっと来てくれない?」
「柚希? どうしたの?」
「
拓海と莉子は顔を見合わせた。ゲートが開きっ放しになっているのは知っている。何かあったのだろうかと拓海は思い、柚希と共に魔の13階段に向かった。
裏の屋上では相変わらずゲートは開いており、交代制の見張りが二人常駐していた。今は
「
「何かあったんですか?」
拓海は剣持に今の状況を聞いた。
「音が聞こえるんですよ」
剣持の代わりに見張りの人が答えた。
「音?」
「ずっとじゃないんですが、たまに……あ、ほら!」
確かに音は聞こえてくる。ゲートの中からだ。それは、声のような音だった。
「これ、誰かと誰かが言い争ってませんか?」
「そうだな、確かにそんな感じだ」
「まずいな、本当に異世界の住人なのかも……」
「あれ、何だか、音が近づいているような……」
「え! あ、本当だ……!」
最後に拓海がそう言った瞬間、ゲートから一体の生物が飛び出した。子猫のようなリスのような生物だが翼が生えていて浮いている。
「な、なに、これ!」
「なんなんだ、一体!?」
拓海たちが口々に叫ぶ。するとその生き物はゲートの方を振り返り、聞いたことのない言葉を叫んだ。
「※○■△!!」
すると、ゲートからもう一体、生物が現れて叫んだ。
「○▲□●!!」
それは、不思議な服装をした少女だった。間違いなく美人なのだが、理解不能な言葉を発し、そして必死の形相をしている。
拓海たちが呆気にとられていると、最初に現れた生物が再び何かを叫んだ後、屋上の扉に向かって飛び去った。
「あ、ちょっと!!」
思わず棒立ちしてしまい、阻止するのを忘れていた見張りの人が叫んで追いかけようとしたが、それを突き飛ばして少女が生物を追いかけていった。
「うわ、何やってんですか!」
「す、すいません! まさか本当に向こうから人が来るなんて!」
「先生、変身は!?」
「もう遅いよ! とにかく追いかけよう!」
剣持のその言葉と共に、拓海たちは扉に向かって駆け出した。
「任せてください! 挟み撃ちにしましょう!」
拓海が言った。拓海が見たものは全て
「うわ!」
「きゃ、なに!?」
生徒たちをかき分けるようにして、異世界からやってきた生物と少女と、それを追いかける拓海たちが走っている。異世界からの来訪者たちの前に、日菜菊が立ちはだかった。
「「止まれ!!」」
拓海と日菜菊が同時に叫ぶ。生物が日菜菊の前で急停止した。
「※△■○!! ……いや、言葉が通じとらんか、これならどうじゃ!?」
「え、日本語!?」
「危害を加えるつもりはない、
生物が急に日本語を話し出し、日菜菊に言う。
「※●※△!!」
一方、少女は相変わらず不思議な言葉を叫びながら日菜菊と生物の方に走ってきている。
「ええーい、しつこい!!」
すると生物は横に方向を変え、飛び去った。
「あっ! 待って!!」
日菜菊が叫んだ後、少女が先行してそれを追いかけた。日菜菊に続いて拓海たちもそれを追う。
ちょうど2組の扉が開き、
「浩太、そいつらを捕まえて!!」
先行している日菜菊が代表して叫ぶ。
「え!? な、なんだ!」
浩太はビックリした表情で異世界からの来訪者たちを見た。
「ええーい、こうなったら! そこのコウタという者!! ワシの目を見るのじゃーー!!」
「※※○□●!!!」
少女が悲鳴のような声を上げる。次の瞬間、生物の身体が発光して、拓海は眩しさに目を閉じた。
光が収まり、拓海は恐る恐る目を開けた。生物を追いかけていた少女も光にやられたらしく、目を押さえている。ふと、拓海の目に浩太の顔が写った。浩太の頭の上に、生物が勝ち誇ったような顔で腕組をして座っている。
◇
生物は逃走を止めたが、少女が暴れるので莉子と柚希が取り押さえた。なだめようとしても、何しろ言葉が通じない。
「まったく、なんじゃクラリス、翻訳術くらい使えるだろうに」
生物が言った。
「翻訳術? そういえば、さっきいきなり日本語を話し出したよね、君?」
日菜菊が生物に話しかける。
「んん~? この世界には翻訳術がないのか? 不便な世界じゃのう」
「そんな便利なものがあったら、世の中革命が起きてるよ。だいたいお前なんなんだ!? お前も怪異なのか?」
椅子代わりにされている浩太が言う。
「怪異じゃと? 変な言葉でワシを表すでない! ワシはこう見えても由緒正しき竜神族の末裔じゃぞ」
「竜神族? うーん、またよく分からない言葉が出てきたなぁ……」
「
剣持がそう言うと、莉子と柚希がクラリスと呼ばれた少女の両側の腕を持ち、全員で移動し始めた。
「ほれ、コウタ! ワシらも行くぞ!」
「えー? 一体なんなんだよ……」
竜神族の末裔と名乗ったその生物も浩太と共に裏の屋上に動き始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます