山奥の村で、消えるバス

眠るミイラ

プロローグ


プロローグ


 タクオは真夜中の国道を走っていた。

 久しぶりに友人と会い、遅くまで過ごしてしまった。話は尽きないので帰りを切り出しづらいが、居座るのも気が引けて、後ろ髪をひかれながら暇乞いした。今度は、いつ会えるだろうか。車を走らせれば、会うのは距離的にもそこまで難しいことではないのに、お互いの都合がなかなか合わなかったり、急な事情や仕事など、スケジュールを合わせたのに反故になることも多く、実際は次の予定が難しい。

 友人宅を去りいまは午前2時前だ。国道であるが峠道でもあり、ほとんどほかの車両にはすれ違わないし、前後にも車はいなかった。通い慣れたような車一台に抜かれたくらいか。気持ちが昂って冴えていたのだが、さすがにこの時間では少し眠気を感じる。まあ、空いているからあと1時間もしないで自宅に戻れるだろう。今日はいつもどおり出勤予定だが、朝7時くらいまでは眠れるから、そこまでキツくはないはずだ。

 トンネルを抜けて、緩やかな山道を下ってゆく。少しスピードが出たが走りやすい。アイスコーヒーで眠気をごまかしながら、ハイビームでうすぐらい街灯の道を進んだ。

 沢との出合いの橋を過ぎて道の傾斜が緩くなり、すこし道幅が広くなったような場所で、前方にぼんやりと大型の車両が見えた。

「っと、バス…?」

 バスのリアウインドウに、路線バスのような、電光掲示板がみえたと思った。タクオは少しブレーキを踏んで長めに車間を取り、スピードを合わせていると、ほどなくそのバスは右折レーンに入り、そのまま国道を逸れて暗い山道のほうへ進み、見えなくなった。

 バスの電光表示の行先は、よく見えず読み取れなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る