第1話 クズ鉄組
年末試験から一ヶ月が経った、一年の内10ある月の内この一ヶ月だけが休みの期間で、残りは全て学園で己を鍛える。
年末試験で負った怪我はまだ完治していないが、だからと言って休みが伸びる訳では無い。
このクズ鉄組なら尚更そうなのだ。
「えーこの教室に居る全員が、未昇格もしくは降格処分を受けた者たちです、学年区分は入学一年目の
教師ですら俺たちをこの扱い、クズ鉄組はこの学園では最下位に位置する。グレイド学園でクズ鉄組になったら辞めるが吉と言われる程だ。
周りの生徒たちもそんなの百も承知でこの場にいる。居ないのは去っていった者だけだから。
にしても酷い、去年まであんなに優しかったジャックス先生がこんな言葉遣いするなんて、そう言う決まりでもあるのか。
「まぁ辞めずにここに来たって事はまだ諦めていないってことですね、ならばこの学園も最低限のサポートをします……早い者は次の中間試験で昇格ことがあるかもしれません、ではこの時間はここまで、次の鍾が鳴ったら第五修練所に集まってください」
そう言ってジャックス先生は教室から出ていく。
張り詰めていた教室の空気が一気に緩んだ。
「先生怖っ……あんなキャラだったか?」
「てか今日同期の奴とすれ違った時まじ恥ずかしかった、やっぱ辞めようかな」
「とりあえず次の中間まで頑張ろうぜ」
クラスのみんなは俺が想像している以上に危機感を持っていなかった。
まぁそれも理由があるのだが。
グレイド学園に入学すれば最短三年で卒業資格が貰える、それはクラス関係なくだ。つまりクズ鉄組でも三年間在籍していれば卒業出来る。卒業できるだけでその後の進路は保証されない。多くは冒険者になるか辺境の自警団に入るかだ。
「よっアッシュ! 怪我の調子はどうだ?」
周りに呆れていると、二人の男が近づいてくる。ロンディとクルーサ、去年一緒に入学して同じパーティーを組んでいた奴らだ、俺のせいでクズ鉄組に落とされてしまったが、それでも俺を責めずに慰めてくれた。
「ロンディか、貯金全部使って
「でももうある程度動かせるっしょ?」
「クルーサは厳しいな、可哀想と思わないのか?」
「アッちん冗談上手いね〜目はこの中で一番ギラついてんよ」
村長の息子で厳格な父に鍛えられた真面目なロンディ、髪を洗うのがめんどくさいという理由で坊主にしたり、筋力こそが力の全てだと言ってひたすら体を鍛えたり、結構抜けてる所がある年中仏頂面男。そして商人の息子でいつも浮ついた調子のクルーサ、この世で珍しい青の髪で、いつも笑ってる長身の男、俺を理解している数少ない友人だ。
「で、実際のところはどうなんだ?」
「もちろん落ちぶれるつもりは無い、俺は直ぐにでも上のクラスに行くつもりだ」
「って事は中間試験に向けて今から張り切っちゃいます?」
「いや……俺は入れ替え戦を申し出る」
「「い、入れ替え戦!?」」
グレイド学園の特徴の一つ入れ替え戦、毎月一回だけ下位クラスのものが自分たちより上位のクラスに入れ替え戦を申し込める。
大体最初の一ヶ月は様子見で誰も動かない、だからこそ油断が起こりがちなこの時期に仕掛ける。
「相手もう決めちゃってる感じ?
「いや、ブロンズなんて最初っから狙ってねぇよ」
「ちょっと待て、お前が何を言いたがってるのかわかる気がする」
「狙うはセシリアのみ……
二人が呆れた顔で見てくるのは予想出来ていた。誰が聞いてもこんなのバカげてると思うに違いない。だが俺には寄り道してる暇はないんだ。
「まぁ去年は俺が迷惑かけたから、無理に着いてこいとは言わねーよ」
この学園でパーティーを組むのは基本だが別にソロも珍しい訳じゃない、元々俺はセシリアとサシで勝負するつもりだった。
「おいおい、何言ってんの? ここまで来たら俺っちもやるっしょ? それに中間試験さえちゃんとやればいい話だし」
「そうだな、
「全く……言っとくけど俺は負けるつもりなんてねーぞ」
俺はいい仲間を持った、そう思うべきか。これで三対三の二本先取を申し込める。
「だとしても三人が全員戦士科は不味くね? 今からでも遅くないからさ、ロンディは魔導師科にでも転向しなよ」
「しねーよ」
「それよりも、今日からビシバシ鍛えるぞ」
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