【episode10–限りある命】



「最期まで優しい子だったわね。」



母が、そう呟く。



「そうね。まるで皆んなの忙しさが落ち着くのを待っていたみたい。」





お盆を過ぎた8月のある日、私たちは火葬場にいた。





弟を見送るためだ。





叔母からの電話を受けてからあっという間の出来事だった。




若いので、病気の進行が早かったらしい。





人の命は有限だ。





人生100年時代と言われて久しいが、弟のように折り返し地点を迎えずに旅立つ者もいる。





今ある現実は永遠ではないのだ。




だからこそ迷っている時間はない。





意中の人がいるならば想いを伝えよう。



そして、一日も早く共に幸せな時間を過ごそう。



してみたいことがあるなら臆せず挑戦しよう。



もし、思った結果が出なかったら何度でも再チャレンジすればいい。





地球にいる間は何度だってやり直せるのだ。




弟の早過ぎる死は、私にそんなことを教えてくれた。





人の命は有限だ。




だからこそ迷っている時間はない。






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