第33.5話 ゲルマンと魅惑の園
「いらっしゃーい、あらゲンさんじゃない」
「うむ、またきたぞムーファちゃん!」
儂は最近、第三広場にある魅惑の園というバーにハマっている。
ここは所謂、おじさんがよく行く系のバーなのだが特にここのムーファちゃんは良い。
綺麗な顔立ちに加え、ダイナマイト級のスタイル。
おじさんにはたまらんのぉ。
「今日で周3回目?」
「いやいや4回目じゃよー」
「うっそーそんなに来てるんだ!」
嘘である、本当は3回なのだがここはあえて4回ということで長めに話す事ができる。
これぞまさにこういう系バー歴10年以上が成せる技である。
「ん?ムーファちゃんや、あの子は?」
「あーシフォンね、あの子また一人静かになっちゃてる」
儂がムーファちゃんと楽しく話していると、遠く席でちょこんと座って静かにしている子を見つけてしまった。
「あの子は新人ちゃん?」
「うーんとそんな感じかな、入ったのは私と一緒だけど」
「なるほどなぁ、どれあの子もこっちへ呼んでくれんかのぉ」
「え、いいの?」
「おう、よいぞおじさんは困ってる若い子を放っておけんのじゃよ」
「ありがと、じゃあ呼んでくるね」
そう言ってムーファはシフォンという子を呼びに行った。
ふむしかし、オルクスの奴の魔獣どもは一体何体おるのやら。
この前あった人狼族のガキと怪しい人形、そして高身長イケメンの男、絶対あやつら以外にもおるはずじゃ。
必ず見つけ出してやるわい。
「はぁーいシフォンちゃんでーす」
「おお!待っておったぞ!」
「ど、どうもシフォンです」
ムーファに連れられてやってきたシフォンとやらは暗い表情をしていた。
なんじゃそのくらい顔は、まるでそれじゃあアンデットじゃぞ。
せっかくの可愛い顔が台無しじゃ。
「シフォンちゃんやもっと笑ってみてはどうかな?」
「え、えっとこうですか?」
そう言ってシフォンはニタァっと笑った。
これは重症じゃな。
「違う違う、こやってニッコリと笑うんじゃよ」
「あっはは、ゲンさん上手ー!」
「こ、こうですか?」
うーん少し良くなったけどまだなんな微妙じゃな。
笑顔は接客業では必須じゃからのぉ、こんなんじゃシフォンの今後に関わるし、ここは一つ笑顔だけが取り柄だった奴の話でもするか。
「シフォンちゃんや、昔なたいして強くもないが愛想だけは良かった奴がおってな」
「……はい?」
『ゴス』
「痛っ」
「バカ相槌打つのよ」
「なんじゃ?」
なんかムーファがシフォンに今肘打ちしたように見えたが気のせいか。
まぁ良い続けよう。
「そいつは儂の元弟子なのだがな、誰に対してでも優しく笑顔でおったから弱くてもなんか周りから好かれていた」
「すごーい!やっぱり笑顔は大切だよね!」
「そうなんじゃよ」
「でもなシフォンちゃん、笑顔の1番凄いところはな運を呼び寄せる事なんじゃよ」
「……運?」
あいつ、オルクスは自分ではただ運が良いだけだと思っていたようだが、実際はあやつの笑顔が運を呼び寄せていた。
まぁあやつはその事に最後まで気がつかなそうじゃがな。
「そうじゃよ笑顔は周囲の人を笑顔に変え、そして運をも味方につける、故にシフォンちゃんもよく笑って運を味方につけれる人になってほしいんじゃよ」
「……ゲンさん」
「あ、ありがとうございます」
「いやいいんじゃよ」
なんじゃろ、特にまだ何もサービスとかしてもらってないけど心が満たされてしまったな。
今日はもう帰ろうかな。
「ほれ、儂はもう買えるから2人はこれで美味しいものでもお食べ」
「あらー悪いわねゲンさん!」
「……ど、どうも」
そうして儂は魅惑の園をあとにした。
うーん、シフォンちゃんか。
あの子は顔は可愛いからな、笑顔を覚えたらえらい人気になりそうじゃな。
これはもしかして、とてつもない武器を与えてしまったのかもな。
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