第15.5話 ティアナとアンの日常
朝、ティアナはアンよりも先に起きる。
「ほわぁぁ、ねむっ」
ティアナは今年で16、アンは9歳になった。
そして二人の両親が死んで今年で2年になる。
「さてと、水汲み行かなきゃ」
ティアナとアンの住んでいるのは、スラムにある小さな小屋である。
見かけははっきり言ってボロ小屋で、中は6畳ほどのスペースしかない。
近くに井戸があるため、生活用水はそこを利用している。
「……ん、ティアナ?」
「あ、起こしちゃったごめんね、まだ寝てな」
「ううん大丈夫、私も一緒に行く」
「そっか、じゃあ二人で行こうか」
そうして二人は手を繋いで小屋を出た。
現在、二人はティアナが盗んできたお金で生計を建てている。
盗むと言っても相手は皆、おおよそ善人と呼べる人達ではない。
その大抵が犯罪組織は詐欺集団の類である。
それで得たお金は結構あるが、基本は貯めている。
理由としては、そのお金で将来街に家を買いそこで暮らすためだ。
こんな暮らしはアンのためにも早く辞めたいとティアナは思っているが、16の自分が就ける職ではアンを養うだけの稼ぎは得られないので、仕方なく盗みをしている。
「ねぇティアナ、また今日も仕事?」
「うん、あとで街に行ってくるね」
「怪我しないでね」
「え、いや靴磨きとか観光客案内だから怪我とかはしないよ」
「……そうだね」
自分のやっている事にアンも薄々勘づいてきているようだが、まだこの仕事を辞めるわけには行かない。
家を買って二人でちゃんとした暮らしをする、そうすれば亡くなった両親にももう大丈夫だよと胸を張って言えるようになる、ティアナはそう思っていた。
両親の顔を思い出すと今でも涙が出てしまう、それでもアンの前では泣くわけには行かない。
アンはまだ9歳、せめてアンが15歳になるまでは一緒にいたいとティアナは思っていた。
「アン大丈夫だよそんなに心配すんな、お姉ちゃんこう見えて靴磨きだけは超上手いんだぞ」
「え、ティアナ料理もできないくらい不器用なのに?」
「う、うるさい」
ティアナにとってアンは唯一の家族であり、守るべきものである。
そしてアンにとってもティアナが唯一の家族である。
そのためアンも、ティアナに幸せになって欲しいと幼いながらに思っていた。
「ティアナあんまり頑張りすぎないでね、私も10歳になったら一緒に働くから」
「いやいやいいよ、アンは家にいなって」
「やだ!私も働くもん」
そう言ってアンは頬を膨らませた。
「わかったわかった、じゃあアンが10歳になったら一緒に靴磨きしようか」
「うん!私ティアナよりも器用だから自信あるよ!」
「う、うっさい私だって器用だし」
「いやティアナは不器用だよ……」
アンは小さくそう呟いた。
水汲みを終え家に戻ると朝食の準備をはじめる。
ご飯はパンと水一杯だけである。
「今日の稼ぎが良かったらさ、少し美味しいものでも食べようか」
「そうだね!久しぶりにお肉とか食べたい!」
「えー肉かぁ、わかったお姉ちゃん頑張る!」
食事を終えるとティアナは街へ向かう支度を始めた。
「アンも今日は遊びに行ってくるね」
「りょーかい、夕方にはお姉ちゃん戻るからそれまでには戻るんだよ」
「うん!」
茶色いローブに、短剣、後は偽造石。
これら3点セットがティアナの本当の商売道具である。
あと怪しまれないようにこれに靴磨き用のブラシも加える。
「じゃあお姉ちゃん行ってくるね!」
「うん!いってらっしゃいティアナ!」
そうしてティアナはオルクスのいる第二広場へと向かった。
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