第3話 対なる存在

少しずつ、少しずつ胃に流し込むスープ。

乾いた喉や体に沁みる為すべて平らげるのに時間を有した。


「ごちそうさまでした」

「チハル偉いね」


大きな手でエルが撫でて褒めてくれる。

お兄ちゃんが居たらこんな感じなのかなと思いながらぼんやりしていると眠気が襲ってきた。


「おや、やはり体力の限界がすぐ来てしまうね」

「ん......」

「神力を与えても負担がかかりそうだから、今は加護だけで我慢してね」


エルはそっと私を抱え上げる。

この体は随分と軽いようでエルは悲しそうな驚いたような表情になっていた。

ベッドは不思議と綺麗な布に覆われ安心して眠れそうだ。


「エル......おやす、み、な......」


私は言い終わらないうちに眠りについてしまった。






真っ暗だった。


『おーーい! 誰か、居ませんかーー! 』


私は先に進む。


すると、突然光の粒が私と同じくらいの人型になった。


『あなたは誰......?』

『私、ハル。あなたは?』

『私はチハルだよ』


人型のものが手を出すので私もそれに倣う。

すると視界がクリアになるようにハルの姿が現れる。


そこにはくすんだグリーンの髪色は自分で切ったようにばらばらで優しそうな顔立ちにぱっちりしたオリーブの色の目が印象的な少女がいた。


『もしかして、今の私?』

『うん。ハルの体をあなたにあげたの』

『どうして?』

『ハルは、もう動けないから自由に走りたくなっちゃった。ぱぱとままを追いかけなくちゃいけないから』


ハルはちっとも悲しそうじゃなかった。


『あのね、チハル』

『なぁに?』

『あたしの体弱っちくてごめんね』

『ううん、ハル私に体を譲ってくれてありがとう。大事に生きていくね』

『ありがとう!』


ハルは向日葵の花の様に笑うと消えてしまった。





ゆっくりと目を開くと涙が溢れていた。

体を起こしエルを探すが近くに居ない事に気付く。


「エル......? どこ......」


小屋の中にはいないようだ。

ベッドから降り壁伝いに扉まで行くとそっと外を覗く。


(居ない......ハルの事お話してあげたかったのに......)


仕方がないし動くのもやっとなのでエルが帰るのを待つことにした。

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