第166.5話 セインドルクスとライリクスとマリティエラ

「……魔力量、三万を越えてましたね」

「上皇陛下のお見積もりですら、軽々と越えておるとは……」

「タクトくんは、あの膨大な魔力量で身体に異変が全くないのよね……不思議だわ。普通なら、魔力と体力の均衡が取れない年齢なのに」


「おそらく、彼は今までも日常的に常時発動型の魔法を使っていて、身体が魔力量の多さに慣れるのが早いのかもしれませんね」

「それ、危険だわ……大量に使い続ける癖がついてるってことでしょう?」


「ふむ……確かに、大量消費の自覚がないのは良くない」

「でも、今、彼の身体に異変がないのでしょう、マリティエラ?」

「異変が出てからじゃタクトくんの場合、手遅れの可能性があるわ」


「手遅れ?」

「ええ、あれだけ魔力量が多いと、不足した時に補うのがかなり難しいわ。何日も眠り続けてしまうことだって考えられる」

「……黄魔法の常時発動克服は……本当に先日、タクトくんが言ったことだけなのでしょうか?」

「それは私も考えていた……だが、もしかしたら自覚していないのかもしれん」


「無自覚で、魔力を回復する術を持っていると? そんなことあるのですか?」

「神聖魔法だ。あの魔法は『光』だった。彼の魔法は、賢神一位に属するものだ。ならば、『光』の神聖魔法が、彼の回復力を押し上げている可能性もある」


「だったとしても、彼は魔法の使い方を少し改めるべきですわ。只でさえ魔力切れで何度も倒れているのですもの!」

「そうですね。それは僕も賛成です。どういう理由で彼の使用量が多いのかは知っておかないと、もしもの時に対応できません」


「そうじゃな。タクトくんを守るためにも、必要だ」

「体力的な測定も必要よ。それによって、使用方法も改善した方がいいと思うわ」

「魔法で全て解決できる訳じゃ、ありませんからね……タクトくんは意外と、自分の魔法の使い方が雑だと気付いてないですから」


「そうよ、メイリーンのためにも、しっかり体調管理と魔力管理をしてもらわなくちゃ!」

「確かに、メイリーンが毎日タクトくんに、栄養剤を飲ませるような事態になる前に対策しないといけませんね」

「どうだ? 衛兵隊に体験入隊させてみては? そこで体力などは、ある程度量れるであろう」


「……それは、面白そうですね」

「誰かさんが張り切りすぎないといいのだけれど……」

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