二階の者

 会社員のIさんは、実家暮らしをしていた。


 その日、父と母は旅行に出かけており、一人で留守番をすることになったのだと言う。


 リビングでテレビで映画を見ていると、インターホンが鳴り、モニターには宅配便スタッフの男の姿が映った。

 家族が何か買ったのだろうか、そう思いパタパタとスリッパを鳴らしながら玄関に向かった。

 ドアを開けると、「Iさんですか?お届けものです、こちらお願いしますね」と言って受領書にサインを求められ、言われた通りの場所に苗字を書く。


 「お父さんいるんですか?」


 彼は唐突に言った。

 確かにいるが、今はいない。

 なぜそんなことを聞くのだろう。

 訳が分からなく、素直に聞くことにした。


 「え?今はいませんよ、なんでですか?」


 そう言うと、彼は少し気まずいような雰囲気になり、しばしの沈黙の後、口を開いた。


 「2階の窓から男性の方がこっちを見ていたので気になって、多分気のせいですかね」


 もちろん、2階には誰もいないはずだった。




 

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