換気扇の向こう側

 服を脱ぐと室内でも脱衣所は寒く、体はぷるぷると震え、暖かい湯船を求めた。

 シャワーで体を流し、水面に足先をゆっくりと浸けていく。

 びりっとした感覚の後に、お湯の熱さが指先に伝わる。

 体をゆっくりと湯船に沈めていく。

 仕事の疲れと冬の寒さで緊張していた筋肉が解き放たれるようで気持ち良い。

 浴槽の縁に頭を預け、上を向いてよりリラックスした体勢になる。


 天井をぼーっと眺めていた。



 換気扇の向こう側に人の目が見えた。



 ぎょろりとした二つの目が大きく見開かれている。

 その目はこちらを見つめており、目が合った瞬間に体が動かなくなった。

 10秒は経っただろうか。

 その目は瞬きをしたかと思うと、暗闇に消えて行った。


 警察に屋根裏を見てもらったが、誰かがいた形跡はないと言う。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る