コンテンツ7ールイス、工房に入る
……そして、またドアモニターをタッチするルイス。
「どちら様でしょうか?」
「こんにちは、私、ルイス=タイラーです。」
「連絡を頂けていない方の応答はし兼ねます。お引き取り下さい。」
すっかり同じパターンの対応にいい加減嫌気が差した。
ルイスは黙って工房周りを調べ始める。
(絶対に入口はあるはずだわ。必ず見付けて話さなきゃ。もーう我慢の限界!)
建物ばかりではなく、人の通った後まで探っている。
やはり一回りしてしまったが、思い当たる場所を2ヶ所見付けた。それはドックの横と、ドアのある壁の反対側だった。
(Annの無限軌道の跡が残ってる。この2ヶ所が出入り口なんだわ。……ん⁉︎何?あの男性が連れてたAnnが出て来た。)
ルイスは慌てて通りの隅に隠れた。
そのAnnは何食わぬ顔で通りに出て来たと思うと、ルイスに近付いて来た。
「ルイス=タイラー様……ですね?私はジェイドと申します。ここの建物に興味がお有りの様だから、連れて来いと命ぜられました。さぁ、どうぞ奥へ。」
言うとジェイドは工房裏、ドアモニターの壁の反対側に曲がった。
(こっち側にも1ヶ所怪しい所がある。多分そこに案内される様ね。)
ジェイドと名乗ったAnnは、ルイスが気が付いた所に立つ。
しばらくすると、スライドドアが開いた。
「どうぞ中へ、タイラー様。」
ルイスを先に中に入れるとジェイドも入って来て、ドアを閉めた。
(スライドドア、しかもステルスが掛かってた。だから見えなかったのね。でも、スライドドア自体はどうなってたの?)
「こんにちはタイラーさん。今日はここの主人が出掛けてるので、特別に俺がお話を聞きます。その様にしていいとおっしゃってくれたんでね。あぁ、俺はマット。マット=アリントスです。そこのシートにお座り下さい。」
シートに腰掛けながら、
「ルイスでいいわ。ファミリーネームはあまり好きじゃないの。聞きたい事も話さなきゃいけない事も有り過ぎてどうしましょ。」
「あなたが話していた
「アリントスさん?あなたとAnnはどうやってこの建物に出入りするのか疑問だったの。でも、ジェイドに案内されて何となく分かったわ。ドアにステルスを掛けてるなんて。でも見て回った時には何も無い様で困ったわ。」
「ルイス、俺もマットと呼んで構いません。長いファミリーネームなんで嫌なんですよ。ここの普段のスライドドアは壁のホログラムを掛けてます。なので、触らなければ分からないんです。」
「そんなに人と話したり、対応するのが嫌なのかしら?」
「いいえ、そうではないですよ。こうでもしないと、受けたくもない仕事まで引き受ける事になる。ここの主人は特定の人の仕事ばかりで手一杯なんです。それをサポートするのが私の仕事。」
「あら、ビブレスの噂では、グロビアさんってメカニックはお弟子さんがいると言う話でしたよ?」
「確かに私は弟子入りはしましたが、ここの主人のロワート、あ、グロビアさんは手取り足取り仕事を教えてくれる人ではないので。自分はロワートと呼んで良いと言われ名の方で呼んでますが、まだまだ弟子のほんの触り程度の仕事ぶりですよ。さて、次の話は何でしょう?」
「Annのカスタマイズをお願いしたいのと、
「ところで、グロビアさんって方は堅物ですか?頑固者?それとも変わり者ですか?」
マットはそれを聞いて大笑いした。
「そんな事どこで聞いたんだい?確かにこんな工房で、しかも好きな仕事しかしないのだから変わり者と思われても仕方ないけどね。でもロワートさんは、確実に、しっかりした仕事を目指してやってきた様だから。依頼も特定の方に偏ってくるのはしょうがない。もっと大きい場所で工場並みに稼働させればそれは良い稼ぎになる。でもロワートさんはいい加減な仕事はしない人だし、ビブレスで手に入らないパーツは自作してまで仕上げる人なんだ。」
「じゃあ、変な人ではないのね?良かった。それなら話は早いわ。Ann2体と、
「そうだね。ただ、Ann2体のカスタマイズは良いとして、
「ええ、それも承知してるわ。なんたって設計から組み立てるんですものね。」
「そこまでご存知とは。ルイスはビブレスの方ですか?」
「いえ、私も先日一緒にここへ来た友人もエンジャー=ガルです。友人がビブレスに知り合いが多いので、色々噂も聞きます。」
「それでは最近のビブレスとゴレイナの材料不足の話は聞いてますか?」
「いえ、それは聞いてません。材料が不足って、物作りのメカニックさん達には致命傷じゃありませんか。」
「ええ、なので依頼には応じられないかも知れません。」
「はぁ、そうだったんですか……。あ、私のフローターと先日の友人ガルシアの連絡先IDを伝えておきます。」
「俺はほとんどはここで過ごしてますから……。ジェイドのIDを教えるよ。」
「はい、先日のガルシア=オフェイル様、ルイス=タイラー様ですね。私が連絡を受け付けます。」
「こちらも、フローターと
「ありがとうマット。会えて本当に良かった。今日はこれで失礼します。グロビアさんにAnnと
「分かりました。ジェイド、ルイスを通りまで送ってあげて。」
「了解、マット。ではタイラー様。またお越しくださいね。」
ジェイドがスライドドアを開け、通りまで送ってくれた。
「ありがとうジェイド。あなたはとても利口で素晴らしいAnnね。IDのメモリー、お願いね。じゃ、これからもよろしく。また連絡するわ。」
ルイスは満足げに駐機場に歩いていくのだった。これから大変な苦労をする事になるとは誰も予想していない事だった。
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