兄妹(2)
エイル=イミテイション……3学年B組
ガラトア=エミュレート……3学年C組
対峙する敵チーム。
対する……
スコール=アクアとレイン=アクア
ラビの試合開始の合図を受けても、
エイルもガラトアも動く気配がない……
「形取れ……セイバー」
スコールは警戒することなく一気にその距離をつめる。
持ち前の運動神経でエイルの目の前にせまると一気に創り出した剣で、
エイルの身体に一撃を決める。
さすがにあまりにも呆気ない……
思ったとたん……水で創り出した剣がエイルの身体から吐き出された瘴気に囚われるとその瘴気と共に姿を消す。
一度距離を取り直す……
「形取れ……セイバー」
再び剣を創り出す。
同時にエイルは不適に笑うと……
「イミテーション……」
そう呟き……
「形取れ……セイバー」
そう言葉にすると……黒い瘴気が集まりスコール同等の剣が創り出される。
「何の真似だ……」
少しだけ不快そうにエイルを見る。
「何の真似……てめぇの真似だ、生徒会長っ」
そう今度はエイルがスコールとの距離をつめる。
「くだらん……」
学園の闇……何らかの
創り出されたその武器の精度も高く……スコールの武器の強度とも匹敵している……
「所詮……猿真似だ」
運動能力……武術に置いては未だスコールに分がある。
「コピー……」
ガラトアがそう呟くと……
同じように黒い瘴気が一本の剣を形取る。
ガラトアが同じように一気にスコールに迫る。
「くっ……」
二方向からの攻撃に思わず距離を取る。
「さてっ……逃げまとえ、生徒会長っ」
そうエイルと言葉で二人同時にスコールに迫る。
「お兄ちゃんっ!」
レインが水のペットボトルを上空に投げる。
こぼれる水から……
「形取れ……セイバー」
その言葉と同時に零れ落ちる水が剣の形に変わる。
それを握ると、ガラトアからの一撃を受け止める。
「出来損ないは黙ってろよぉ」
そうエイルがレインに迫る。
「ちぃっ」
スコールが舌をならし、その間に割ってはいるように……
「くっ」
その一撃を変わりに受ける。
「……お兄ちゃん」
自分のせいで……自分がまた兄の邪魔を……
そんな恐怖が……
「……安心しろ……二度は拳を振る方向を間違えたりしない」
そう……レインを見ながら……
「俺の
そう……ゆっくりと閉じた目を開く……
「集えっ……」
「なっ」
上空にはすでにエイルとガラトアを包囲するようにスコールに創り出された武器が浮いている……
「飛べっ」
容赦ない数の武器が二人を襲う……
煙が晴れていく……
「はははっ……ははははは……」
膝を突き……かなりのダメージを負っている。
黒い瘴気をエイルとガラトアはまとうように……
何とかその意識を保っている。
そして……不快な笑いを続けている……
「……殺さぬ程度に情けをかけたか生徒会長っ」
そうエイルが叫び
「……もうあんたの
そう続けて叫ぶ
「イミテーション!……集えっ」
上空で黒い瘴気が武器の形を形取っていく……
「……集えっ」
スコールもすぐに上空に武器をつくりあげていく。
「「飛べっ」」
二人同時に叫ぶと……それらがぶつかり合う。
同等に並ぶ
所詮は誰かの物真似……
そして、自分の魔力で許される範囲でしかその真似も当然許されない……
てめぇになりたくて……超えたくて……
ずっとずっと……なのにてめぇは、冴えない転入生にあっさりと負けて……
交流戦の最中……そんな落ちたてめぇに挑み……やはり負けた……
……落ちて……学園から
「今日……俺がお前に成り代わるっ!!」
そう不適に笑う。
「二度……言わせるな」
そう……スコールが呟く。
「所詮……猿真似だ」
そう言うと……
上空で互いに相殺されていた武器……
先に武器が尽きたのは……
数本の武器がエイルを襲う。
「……なんで、なんでだ……所詮、俺の能力を上限突破させたところで、
そう狂ったように叫び……
「イミテーション!集えっ……」
再びエイルがスコールの能力を真似る。
「集えっ」
再びスコールも上空に武器を創り出していく。
「コピー……」
ガラトアはそう呟く……
「なっ……そんな」
レインがその光景に……
エイル同等の武器を上空に作り上げていく。
エイルが敵の
ガラトアはそのエイルの技を複写する……
ガラトアの能力も自分の魔力の許す範囲での複写のはずではあるが、
エイルと同等の
ようするに……エイルと同等の能力が使える……
一人で勝ることができないのなら……二人で……ということか。
互いの武器が上空でぶつかり合い相殺していく……
相殺しきれなかった武器がスコールの頬や身体をかすめてリングに落ちていく……
「超えた……超えたぞ……最強を超えたっ」
嬉しそうにエイルが叫ぶ。
「くだらない……」
本当にくだらない……
レス……俺は俺一人では妹を護ることもできないのか……
お前がせかっく用意したこの場所を……
妹の憧れに……そんな兄に……戻れないのか?
目を瞑りそんな余計なことを考える……
あいつなら……こんな俺になんて言うのだろうな……
レインが必死に護ってくれた場所……
俺はただ……そこに帰ればいいのか?
そこは……俺だけが周りからチヤホヤされて……
レインが蔑すまれる場所……
帰るだけじゃなく……そこからレインを連れ出す……
お前の護るってのは……そういうことか……
「誰かを護るってのは難しいもんだな……レス」
そうスコールは目を開く。
「おに……いちゃん……」
心配そうにレインがそばに来る。
「手を……貸してくれるか……レイン」
そう……妹に乞う。
昔から……何かを創造することには多分……
10年以上も前の記憶が今更思い返される……
「あのね……こう、思い浮かべた武器をお空に並べるの……そして、それをびゅーんって飛ばすのぉ」
幼いレインがノートに描いた落書き……
自分が描く能力の使い方を必死に周りに語っている……
語るだけで、魔力を上手くコントロールすることはできない……
そういえば……俺のこの能力も……あいつの
あいつにはそれが実現できなくて……
俺が実現した……
当時はそのことに何も思わなかったが……
俺なんかよりもずっと、ずっと……お前の方がずっとずっと俺よりも優れていた……
「レイン……水は余っているか?」
自分とは違い……レインは能力の具現化に水を必要とする。
「ありったけ……俺の頭から水をかけてくれ……」
そう両膝を地につけ……そうレインに言う。
レインは不思議そうな顔をしながらも……
水が能力の源になる自分たち家計……何かあると思い、
その言葉に従い……水をかけていく。
「集え……」
その言葉に反応するように……
「イミテーション!!集え……」
エイルの上空に瘴気が次々と武器を創り出していく。
「コピー」
そして、ガラトアがそれをコピーする。
このまま……単に創り出した武器をぶつけ合ったところで……
先に魔力が尽きるのは……
ならば……
「……レイン、お前の
そうスコールがレインに言う……
「俺の
文字通り、スコールの全魔力を注いだただの水の塊が上空に浮いている……
「……
そうスコールがレインに叫ぶ
さすがにいきなりそんなことを言われ戸惑う……
「とべっ」
エイルとガラトアがその武器を飛ばしてくる……
スコールはその一撃、一撃を無防備に受け止めながら……
・・・
答えろ……レイン……私は…私は……
「形取れ……伝説に語られし水晶龍っ」
日差しが何かにさえぎられるように薄暗くなる……
水が上空を覆うほどの青い龍がはばたいていて……
「放てっ」
そのレインの掛け声と共に……
その龍の口から……リングが半壊するほどの砲撃が放たれる。
エイルとガラトアが創り出した武器があっという間に消滅し……
その砲撃はその二人をも捕らえた。
「勝者、スコール選手とレイン選手!!」
「……やったのか……」
レインが驚くように見ている……
「……あぁ、よくやったレイン」
そうスコールが言う。
「……違う、あれはお兄ちゃんの魔力で……私の力では……」
そうレインが返すが……
「……胸を晴れ、あれは紛れも泣くお前の
そうスコールはレインに優しく微笑む。
そんな
それでも……その関係は……元に戻ろうとしているのかもしれない……
・
・
・
魔法でリングが修復されていく。
じっと……用意された椅子からモニターを眺めている。
1回戦が終わる。
ガコンっと4つの扉が開く音がする……
2回戦が始まる……
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