第63話 闇の圧制者

 遥かな過去の記憶、父は笑っていた。母は微笑んでいた。兄達がいて毎日が幸せだった。


 だが、全ては闇の星元によって壊されてしまいました。



 兄は母を殺し、仲間を惨殺し。そして、兄は父を斬った



『これでは足りない……俺は強く強く……もっと強く』



 強さに取り憑かれてしまった彼を止めることは出来るはずがなく、ユルルは孤立してしまい、家は没落してしまった。




「ガヴェイン・ガレスティーア……」




 彼女は自身の兄の名をつぶやいた。二人の兄は既にフェイによって倒されている。そして、今、彼女は最後の兄を止めるために覇王都市に訪れていた。


 ここは強さが全ての場所。



 自由都市と似て非なる場所。強さを求める猛者だけがここを訪れる。金も名誉も何もいらない。ただ強さだけを求めるだけに人は訪れる。


 食事も忘れて、人は戦い合う。



「フェイ君。ここはとても危険の場所ですので気をつけてください」

「自分の心配をしろ」




 フェイの隣にぴったりと付き添っているユルルの方がこの場所では危険だった。ピリついた空気が張り詰めている。



「フェイ。来てたのか」

「トゥルーか」



 任務にて派遣されていたトゥルーもこの場所を訪れていた。互いに意思を確認するように目線を交わす。



「騎士団としても、ガヴェイン・ガレスティーアはマークしていた」

「俺が倒す」

「そういうと思った。だが、やつは闇の星元を持っている。僕も持っているから、わかってしまう。ここには大きな闇が蠢いている。それに血の気の多い奴も多い。先生が心配だな」

「……噂をすればきたようだな」



 フェイ達の目の前には鋭い剣を持った二人組。ガラが悪い二人はケタケタと笑っている。



「ここに来たとは、命知らずか? なぁ、兄者」

「そうだな弟よ。ここは強者しか入れぬ領域。立ち去るが良い。それができぬのであれば洗礼を受けてもらおう」



 兄弟と見られる二人。二人からは禍々しい星元が発生している。



「フェイ、この二人。闇の星元を持っている。実は騎士団はここで闇の星元そのものをばら撒いている存在がいると踏んでいるんだ。僕はそれも調査できている」

「大体わかった。あの二人を締め上げて、吐かせればいい」



 軽く出をまくり、フェイが一歩踏み出した。



「きいたか兄者よ。あの男、俺たちを倒すといった」

「聞いたぞ、弟よ。倒すといった」

「これは洗礼」

「洗礼。決定」

「「決定」」



 一歩出した瞬間、それと同時に謎の兄弟二人が襲いかかる。しかし、すぐさま二人は首を掴まれて地面に叩きつけられていた。



「あ、兄者、なにが、起きた」

「弟よ……わからん」

「トゥルー、さっさと聞け」



 首を抑え込みながらフェイはトゥルーを見る。



「その星元どこで手に入れた」

「え、永遠機関とかいう、所の、研究者……苦しい……」

「お、弟……」



 二人はフェイに力づくで抑えられているが、トゥルーの質問にも答えなくてはならず顔を青くしていた。


「ガヴェインという男を知っているか」

「最近、この都市に来た男……何度も戦い続けている……ほとんどの敵を倒している……俺たちもやられた」

「なるほど。フェイ、もう離してやってくれ」



 フェイはその二人の首を離して、手を払った。ギロリと睨むと兄弟は退散した。



「あの二人、闇の星元を持っているのに自我を保っていた。相当の実力者であるってことか。まぁ、あとで捕まえといけないけど」

「どうでもいい。本丸がいるのはわかった」

「闇の星元が蔓延しているのは確かなようだし。研究員とかも捕まえるべきかもね」

「俺は俺に従い動く。お前も勝手に動け」

「何かあったら連絡する。先生、それでは一旦失礼します」



 トゥルーとフェイは別れて行動をすることを決めた。フェイとユルルは再び二人きりになる。そして、すぐさま詮索を開始する。



「フェイ君、闇の星元を以前使っていた私だから分かることですが、あれを使っていると本来の実力以上が強制されます。私の兄は元の実力がかなり高く一等級に近いと言われていました。それが10年以上前、今では確実に騎士団トップと並ぶほどでしょう。危ない場合はすぐさま離脱をしましょう」

「俺は戦う。お前は逃げろ」

「ふぇ、フェイ君が死んだら意味ないです!」

「死なない」


 覇王都市は戦闘に飢えている存在が多い。回復ポーションが大量に売られており、回復魔術を直接売っているものもいる。それほどまでに戦闘だけの場所。



「闇の星元か……」

「フェイ君、手を出さないでくださいね……」

「あぁ」

「──それは残念だ。君には是非、掴み取って欲しかったのに」



 フェイ達の前に現れたのは白髪の子供だった。目は赤くて不思議な雰囲気を感じさせる。



「あれ、驚かないの? 隠密の魔術を使ってたのに」

「気づいていた」

「まじ? 隠密を見破るほどに目がいいんだ。うんうん、やはり来た甲斐があった。君だろ? 最近噂のフェイってやつは」

「……」

「自由都市、アルファ、ガレスティーア、我々が用意した実験をことごとく打ち破っているのは」

「俺の前に立ったからはらうだけだ」

「我々は君に興味を持っている。まぁ、本当はトゥルー君なのだけど。君にも興味がね。あぁ、私の名前はシドー。永遠機関特別幹部だ。幹部と言っても実はほとんど潰されてしまっていてね。知っているだろ? モードレッド。彼女は最強だ。光で全部潰されて残りは僕くらいさ」

「……アイツか」

「話を戻そうか。それで、新たな研究をしている。君も欲しいだろ。力が」

「フェイ君、わかっていると思いますが」

「君じゃ、ガヴェインには勝てない。死ぬだけだ。でも、この「闇の星元」。その果実があれば違う」



 シドーは懐から真っ黒な果実を取り出した。果実はリンゴのような形状だが腐っているように君が悪い。とても美味しそうには見えなかった。


「これ、従来だったら自我を保てないのを改良してる。改良してるけど、意志が弱い人は呑まれるし、あまりに力を引き出しすぎると体壊れたりデメリットが多い。ただ、力であることは変わりない」

「……」

「さっき君が戦った兄弟は改良した果実。その中でも最低限以下しか入れていない。だから、多少の凶暴性で大丈夫だった。元々は農民をしている搾取されることに慣れている平々凡々、それがあそこまでなるんだ。この果実を君が食べたらどうなるのかね。ほら、あげる」

「……フェイ君捨ててください。危険なものです」




 フェイは闇の果実を受けとった。しかし、それを何も言わずにポ投げ返し、剣を抜いた。



「あ、僕と戦いたいのは構わないよ。ただ、いいのかな? 来てるよ、ガヴェインが」




 ──どごんッ




 空から人が落ちてきた。白が汚れて荒んだような灰のような髪。目は濁った泥のような青。その姿を見てユルルは思わず剣を握る手に力を込めた。



「お前がフェイとか言うやつか」

「ガヴェイン。彼に闇を分けてあげて。ほら、これ闇の果実」

「……あぐ」




 渡された闇の果実をガヴェインは口に含み飲み込む。内側から膿のように闇が溢れ出す。



「かはは、やーば、やーばいな。僕は観戦するから存分に戦って」

「強さを求める、強さの究極に至る。それだけが俺の生きる意味」

「……」




 フェイの黒髪が揺れるほどに突風がガヴェインから発生している。闇の星元の余波だけでここまでの現象を引き起こしていることにユルルは震えていた。



(前と全然違う……こんなに、闇が……)



「兄様……やめてください」

「見たことある顔だと思ったが、お前か。すぐに消えろ。お前のような女に存在の価値はない」

「いいえ、消えません。兄様、貴方はお父様を殺しました。その罪を償ってもらいます」

「罪など知らない。俺は強くなりたい。それだけだったんだ。お前なら分かるだろう。フェイ。俺には分かる、その強靭な肉体。この星元にすら物おじしない胆力。頂上を目指している者だ、俺と同じ才覚と感覚を持っている」




 フェイに向かって言い放つガヴェイン。彼もまた強さを求めている覇者であることは悟っていたらしい。



 フェイは星元は無い。それは自らのモーガンによって奪われてしまっているからだ。その『空いた器』に目をつけたのはシドー。伸び悩みと力への葛藤で揺れているフェイに力を与えようとするのが本来のゲームでの流れ。


 その流れのままに力を受け取ったフェイは暴走をしてトゥルーと対峙して、死んでしまう。


 だが、それは所詮の本来の流れなのだ。



「俺とお前では格が違う。強さに含まれる意味も気高さもな」

「お前は俺と同じだ。強さを求めるだけの獣だ」

「同列に語るな。傲慢にも程がある」




 闇の衝撃波が飛んでくる。それを光り輝きが一切ない聖剣において、切る。フェイの魔刀は現在鍛治師であるガンテツの元である。


 現在フェイの手元にあるのは護身用の剣と意味をなさない硬さには定評のある聖剣だ。



「強さを求める。何もおかしいことはない。人は相対的に物事を判断する。俺は自分が弱いことが許せなかった。他人よりも劣っている自分が見ていられない」

「……」

「それだけだ。それが許せないだから父を殺した。もっと強くなりたいと願う。お前もそうであるのだ、強さが欲しい。それが他人が持っていると許せない」



 ガヴェインは自らの星元をそのまま剣のように固めた。黒焔の剣とも言うべき業物を振るう。


「フェイ君ッ!」

「俺が戦う。少し下がってろ」



 フェイはユルルを下がらせて、聖剣にて応対する。



「ががががはははははははは!!! これが戦いだ!!!! 楽しい!! ハッピー! 素晴らしいこれが戦いだ!!」



 ガヴェインが戦いに狂喜乱舞する。彼の姿はすでに人の形をしているだけで、中身は人ではない。肌は徐々に真っ白になり。目の奥が青から赤になっていた。



「これがアビスの力を完璧に扱ったものだけが至れる境地である!! 刮目しろ! フェイ! そして、お前もアビスとなり俺の糧になれ!!!」

「前もいたな。エセ神父と同じか」

「聖杯の王を倒したのもお前だな! あれはなぁ!! 俺が狩るつもりだった!!」

「騒ぐな。程度が知れる」




 徐々に声が大きくなっていく。自制ができていないとすぐさま理解するほどだった。戦闘に気分が高揚しているのではない。単純に闇の大きさに耐えられていない。



「先生!」

「トゥルー君……」

「これは……先生、ここに居ると邪魔になる。これは天変地異と同じだ」




 激突に次ぐ激突、一つぶつかるたびに付近の古屋の屋根が外れる。近づくことが困難になり、目も開けていられないほどに風が大きい。



「素晴らしい。そこまでの戦闘能力があるのに星元がないのは惜しい!! 強さは総合的だ!! 精神、肉体、技術、そして星元!! お前は最後がない!!! それだけがない!! なぜだ!! なぜだ!! 惜しい!!」

「……」

「だから、俺に負ける!! お前は星元を取り込んで人間をこえろ!!」



 星元とは戦士としての差が如実に出ると言われいている。今までは純粋な身体能力だけで渡り合っていた部分はあったが、以前の宗教王との戦いでは魔刀を壊してなんとか勝利を得ていた。


 だが、戦いはインフレに次ぐインフレが起こっている。どう足掻いても戦えない時期もやって来ていた。




「お前もアビスになれ!! フェイ!!」

「……」




 撃ち合いの末、フェイの体にはヒビが入っていた。全身の骨が軋み始めていた。純粋な暴力ではガヴェインが上。



「嘆かわしい……これほどの強者もただ死んでしまうとはな!! 俺と同じステージまで上がってこい!! それを打ち倒し、俺は更なる上に行く!」



 フェイの体に自らの闇の剣を刺した。フェイの体の中には大量の闇が流し込まれる。丈夫な彼の体に異変が起きる。大きな淀みが皮膚に発生してずっと透明だった星元が闇に変わっていく。



「お前は果実を食べそうにはない! だから俺が直接流し込んでやった!! 目覚めろ!!」

「……ッ」




 髪が黒髪から銀に変わって、眼の色も黒から紅蓮に変わる。その様子を見ていたシドーに激震が走る



「これは……」



(元から器だったか。空っぽだった星元。だからこそ適応するのが侵食が異常に早い。ユルル・ガレスティーアとか他の兄弟の時は侵食にかなり時間を食っていたけど。これは……元がないからこその侵食か……その分自我を失うのも早いだろうなぁ)




(トゥルーは子百の檻から脱走した、義理妹を食ってるからねぇ。その子が光を持っていたから高濃度の闇でも自我を保てている。その事件が災厄の村と言われている所以だけど。光の血を飲む……残念なことに、それも抑えが効かなくなってるけど)



(フェイの場合は無理だろう。適応が早すぎる。このまま自我を保て……おい、嘘だろ。あいつ……平気で自我を保っている……!?)




 深い深い深呼吸を一度だけした。体中に亀裂が走り、竹が割れたようにに線が入っている。その間から血が吹き出している。



「……素晴らしい! それでこそ、それでこそ!! 本当の戦いだ、お互い全力で殺し合おう! そうすることによって、俺は更なる強さを得る!!」

「その武勇、喰ってやる」




 フェイが一歩踏み出した、踏み込んだ地面には足跡がくっきりと残る。土には闇の星元の一部が影のように残っている。



 残像が見えるような動きから、それすら見えない動きへと変貌を遂げている。打ち出した拳は空気による摩擦で微かに溶けるほどだった。



「ッ!!! いいねぇ!!!」

「……」

「聖騎士なら二等級以上……いや、一等級は確実!!! しかもその中でも指折りに入る!!」



 ──だが、惜しい



 フェイの体は未だかつてないほどに痛々しい程だった。星元操作が苦手な彼は、星元による急激な体の変化を緻密にコントロールできない。


 それは以前からだった。



 今度の闇はそれとは比にならない強化。粉砕的な骨折が起こり始める。だが、それと同時に闇の星元特有の再生能力が発動し、ネジ切れるように体が元に戻る。


 一発一発が激痛を伴い、さらには体が半壊しては戻るを繰り返している。


「お前、死ぬぞ!! 死ぬ間際だ!! 心臓には星元が宿る!! 闇の星元には再生能力が存在し、それによりお前は延命している!!! だが、今のお前は体の内側でも星元が暴れている状態だ、体の中で小さな星が爆発している!! もしそれが心臓付近で起こり、心臓が爆発すれば間違いなく死ぬぞ!! 魔術やポーションでは治せない!!! 仕切り直しをしよう!! ここで強者を失うのは勿体無い!!」

「黙れ……今いいところだ」




 全身血だらけ人間とガヴェイン、互いの一挙手一投足が死地へ追い込む斬撃。しかし、再生がほぼ無制限にできるガヴェインと常に死を内包しているフェイでは戦闘に差が出る。




「フェイ! 一旦引け!!」



 トゥルーが叫ぶがフェイはそれに応えない。



(馬鹿が! このまま再生を続けていてもお前は死んでしまうんだぞ! フェイ、一旦引け。それとも僕が無理やり引かせる……無理だ。ここに入り込める余地がないッ)



(見えないから、魔術による補填もできそうにない……星元をただ使うだけでは……いや、待て。そもそも使う必要がないのか)



(あいつは今まであんな無茶やり方で渡り合ってきていた。再生のたびに命をかけていることが異常ではない。常に命をかけて当たり前であったからこそこの状況下でも戦えている……)





 再生と破壊が常に目の前では行われている。一見するとフェイの斬撃は荒々しいものに見えるが、普段からフェイを見ていたユルルには清水のように美しい剣技に見えてた。


 ずっと彼に教え続けていた。波風清心流。極地が今まさに目の前に存在していた。




「あ、ありえん!? なぜまだ、生きている!?」




 ガヴェインもフェイの異常な生命力に驚愕を始めた。いつ死んでもおかしくない状況がずっと続いているのにも関わらず、まだ生きていた。


 聖剣には光がない。だが、闇が纏っていた。





「心臓だけがぎりぎりで爆発をしないだと……そんな都合がいいことが!」




 叫び驚いているガヴェインを見て、そこでトゥルーはあることを思い出した。現在フェイの体の中には化け物がいることを。



(そうか! フェイの体には退魔師がいる……それが星元操作に一枚噛んでいる。荒波のような星元がわずかに踏みとどまり使えているのは……中にいる化け物の所作)




「核心は見えた……黒点・黒弾」

 


 フェイの右手に纏っている闇が信じられないほどに輝く。腕は何度も折れて皮膚が剥がれて、関節が逆に曲がって。しかしそれが常に再生している。



 その黒い腕は弾丸のようにガヴェインの心臓を貫いていた。その速度は一等級に近いと言われているトゥルーの瞳にも映らないほどだった。



(み、見えない……紛れも無い……一等級クラスッ)



「がッ!?」



 ガヴェインにもトゥルーにも、この世の上位に存在する猛者にも視認ができない。通常の体の強度と星元による身体強化は掛け算のようなもの。しかし、それは今までは不完全だった。



 星元の量、操作、全てを彼は奪われて持ち合わせていない。



 それが戻った状態に近くなった。量は増え属性があり、そして、操作は内側の存在が微かに担う。


 正真正銘、100%の殴打。




「……あ、りえん。この強さ、躍動感。そうか、俺が、俺が、ここまで来ても上にいけないのは……」




 心臓を潰されたガヴェインは灰のように消えていった。これによりガレスティーア家の因縁は断ち切れた。



 だが、それよりも大きな波が時代に押し寄せていた。



 場所は円卓の城、円卓の間。



 聖騎士の中でも十二人しかいない、一等級聖騎士が揃う。



「アーサー、トゥルー、フェイの一等級推薦。だが、この中のトゥルーにはアビスの容疑がかけられている」

「へぇ、どうするのさ」

「フェイにおいては、複数人の推薦人。アーサーとトゥルーは単純な実力が大きい」

「どうでもいいからさ……取り敢えず、三人呼べ。話はそれからだろ」





■■




 闇の星元ね……おおー、ようやく主人公覚醒が来たかって感じだな。



『そんな悠長なことを言っている暇では無いです! 闇は精神に大きな作用を及ぼすのです! そして精神は体に大きな影響を出す。アビスとはそうやって生態系から離れた存在になった何らかの生物なのですよ!!!』


 あ、アビスってそう言う存在だったんだ。ここでネタバレするのね。



『今後はあまり使わない方がいい。と言うより絶対に使ってはいけません。ガヴェインという聖騎士もかなり元から変わり始めていた。あれは人間では無い』



 人間じゃ無い存在に勝てるのが俺ってわけか。



『私はアーサーです』



 知ってるけどどうした?



『嘗ては闇の星元の大元と戦いました。仕留めきれないほどにそれは強大だったのです。だからこそ恐ろしさも知っています、その力は安易に使うべきでは無い。あなたにも言っています』

『何じゃ?』

『あなた、彼の体の闇を僅かですが操作しましたね』

『ほほほ』

『笑ことでは無いのですが』

『わらわは問題ない。そもそもわらわは鬼だからのぉ』

『気になっていました。鬼、そんな種族はありません。ですが、鬼になっていると言うことは闇の星元による作用ですか』

『違う。妾は単純に恨みや嫉妬。それらが溜まりに溜まってそれが体に影響を出したにすぎん。元は純粋な人間じゃ』

『……闇に貴方も呑まれますよ』

『呑まれんよ。逆に吹き飛ばすまでじゃ。あの闇の操作は何となくわかった。あれを使えばこの小僧を取り込める』

『あなた……フェイ、聞いていましたね。あれを使ってはいけません。こんなふうに貴方を飲み込もうとしています。それは力も彼女もです』



 飲み込まれない。吹き飛ばして逆に俺の力にしてやるさ。と言うか展開的に力に呑まれるってありえないだろ。俺主人公だし。


 結局禁断の力って扱えるのが決まってるからね。そんなビビってない。



『あの、私の話す腰は聞いてくれまセんか? 貴方のために言っているのですが』



 ねぇ、全盛期のお前と今の俺、どっちが強い?



『会話のキャッチボールをしてください。ドッジボールになっていますよ。まぁ、いいでしょう。そうですね……私です。光はそもソも闇に対して大きな力を発します。闇とは本来のあり方を変える。光とは本来の光を取り戻す要素。だからこそ光は治癒などにも優れている』



 ふむ



『闇の再生はあれは本来の再生ではない。相反する力ということですね。ただ、本来の力に戻そうとする作用は非常に大きい。だから、光が有利です。戦闘になれば全盛期の私デす。しかし、単純な殺し合いならば違うかもしれません。私、か弱い女の子なので腕っぷしは苦手なのです』



 ふーん。まぁ、どうせ俺の方が強くなるし。実質的には俺の方が強いと言える。


 ユルル師匠の兄を倒して、一旦国に戻ってきた。


 ユルル師匠からは感謝された。キスされたり、一緒の部屋に泊まって色々としたりもしたのだが、それはさほど重要ではないので飛ばしておこう。



『超重要じゃろ』

『あれを重要ではないとかクソ男すぎませんか?』



 国に戻って訓練を再び始めているといつもより、視線が多いことに気づいた。まぁ、いつも注目をされているのだが。



「あ、あのフェイさんですよね!」

「フェイ先輩だ!!」

「うわぁ!!」



 誰だこいつら、女の聖騎士が数人いた。困るな。今訓練中だし、サインなら後にして欲しい。



「フェイ先輩! 一等級聖騎士に推薦されたって本当ですか!?」

「すごーい!!」

「もしなったら、ご指導お願いします!!」



 聞いてない。俺それ聞いてない!



 だがしかし、ようやく騎士も俺の価値をわかったらしい。ただ、それでも足りないがね。一等級の上を作って欲しいくらいだ。




「フェイ」

「アーサーか」

「うん。ワタシ達呼ばれてるよ? 城の円卓の間に」

「そうか」




 よーし、一等級聖騎士全員にあってくるか!


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