幕間 ユルル・ガレスティーア

 剣と剣の何度もぶつかる音が鳴り響く。とある朝、いつものようにフェイとユルルが剣舞を繰り広げていた。拮抗のように見えて、全くそんなことはなく、フェイの剣は宙を舞う。



「っち」

「……強くなりましたね」

「ふん、ここまでボコボコにされて強くなったと言われても皮肉にしか聞こえんな」

「いえ、そんなつもりはないのですが……でも、本当に強くなってますよ」



 ニコニコの笑顔でフェイにそのように告げるユルル。だが、本人のフェイは相変わらずの仏頂面で眉を顰めている。



「フェイ君、少し休憩にしましょう」

「あぁ」



 二人して、一旦剣を置いて、木に寄りかかる。相変わらずの仏頂面で腕を組み眼を閉じているフェイ。寡黙で盲目が彼の取り柄ではある。いつもであるのなら、ユルルも特に不要な要件を話したりはしない


「あ、あのー」

「なんだ?」



 だが、その日は無理に話しかけた。フェイが目を開けて彼女を見る。すると、ユルルは頬を少し赤くして、下を向く。



「そ、その、これ……」



 彼女は彼にそっと、袋から出した木の箱に入っているサンドイッチを差し出す。



「……これは?」

「ちょ、朝食です。その、たまたま、今日は朝は食べたくなくて……で、ですのでどうぞ」

「……そうか。では、貰うとしよう」


明らかに私情が混ざりに混ざったサンドイッチをフェイは口にする。普通の男性であれば、朝食を作ってくる異性、そして、ユルルの場合、明らかに顔に秘めている物が出てしまっているために色々と察してしまうのだが。




「ど、どうですか?」

「まぁ、悪くない」

「ほ、本当ですか!? う、嘘じゃないですか!?」

「あぁ」

「で、でも、他に何か言いたい事とかありませんか!? な、なんでも言ってください、リクエストでも……」

「特に無い。悪くない。それだけだ、それよりお前は食べないのか?」

「え? あ、わ、私は、別に……今日は良いです……」

「そうか」




俯いて、何も言わない。ユルル・ガレスティーアと言う今年で23歳になるが、恋と言うのをしたことがない。幼い時から、剣術バカであり、災難があり、只管に汚名を晴らすことに執着をしてきた。


恋などと言う概念は知っているが、それを己に見出すことをしなかった。


そして、彼女はかなり慌ててしまう性格でいつもアタフタしていることが多い。23歳で教え子15歳に恋を等をしてしまうなど言う自身が一度も体験をしたことがない未知。


だから、かなり、慌てている。


(あわわ、こ、こんな分かりやすい手段で気を惹こうだなんて。ば、バカじゃないの、私……)



「まさかとは思うが……わざわざこれを俺に作ってきたのか?」

「……!? い、いえ、ち、違います! その、今日はお腹が痛くて……」

「そうか」



(お、落ち着いて。この子は教え子、私は教師。適切な距離と保たないと……切り替えて、世間話を……)



「フェイ君のおかげで私は聖騎士として、居られます。フェイ君にまだ剣を教えることも出来ます。改めて、ありがとうございます」

「気にするな。俺にお前は必要だった。ただそれだけだ」

「……ッ」



とんでもない思わせぶりなセリフを言われて、再び俯いてしまう。これではいけないと気持ちを切り返る。



「あ、あー、それにしても、フェイ君は私の事を引き留めてくれたおかげで毎日楽しいです。もし、それが無かったらどうなったのかと考えると、少し、悲しくなりますね」

「そうか」

「はい。ダンジョンがある、自由都市でも行ってたのかもしれません」

「そうか。だが、その選択肢はあり得ないな」

「え?」

「もし、お前が除名されても俺の剣の師はお前であることは変わらない。最悪の場合は孤児院の俺の部屋で過ごしてもらうと考えていた」

「え、ええ!? で、でもそうだったらお金が、私の生活費とかかかってた場合が」

「俺の給料から出せば良い。お前の剣の指南代金は生活代金を出しても余りあると俺は判断する」

「……ッ」


ドキドキが止まらない。顔が真っ赤になって、手で顔を覆って完全に俯いてしまったユルル。



「……あぅあぅ」



言葉にならない。衝動が彼女を襲った。これで相手は真剣な表情で本心から言っているのだから、余計にたちが悪いと彼女は思った。




「どうした?」

「い、いえ……」

「……、今日はもういい」

「え?」

「色々、抱えているような気がする。そんな状態でも集中できんだろう。それに、毎日訓練は流石のお前もきついだろう。今日は帰れ」

「あ、は、はい」



(こんな、気持ちじゃ、まともに、教えてあげられるはずない……きっと、顔だってまともに見られないよぉ……)



(フェイ君は、私が前と抱えている気持ちが違うって、気づいたのかな……。うぅ、恥ずかしい……)



フェイはそう言って立ち上がる。訓練をする気はもう無いのだろう。彼女は顔が真っ赤で彼を見ることが出来ずに、その場で顔を隠すだけだった。


「ふぇ、フェイ君。ま、また明日」

「あぁ」



(あぁぁぁぁぁぁっぁ、ハズかしぃぃぃぃぃ!)



そう言って彼女は顔を隠して、猛ダッシュで三本の木のふもとから逃げるように去った。





■◆



先生、ポンポン痛いのかな?



俺は朝の訓練をこなしながらそんな事を考えていた。何だか分からないが、先生は訓練中も眼が合うとサッと逸らす。



それに何だか、慌てているようなよそよそしいような感じがする。うーん、俺の中で先生のイメージっていつも慌てているイメージだからな。特に変ではないような気もするが。



23歳であわわとか言っているし。いつも慌てて、心配性な感じがする。それに先生って結構神経質な感じがするし、ポンポン弱いのかな?



ポンポン痛くて、実は帰りたいとかは考えられるかな。でも、弟子の手前、そんなことを言いだすわけには行かないみたいな……



先生が、休憩と言ってサンドイッチを渡してくれる、おおーありがてぇ、キンキンに美味しくなってやがる。



まぁ、正直マリアの方が……それを言わない


――そう、俺は気遣いが出来る主人公である。


それにしても、先生は食べないのかな? 折角だから、食べればいいのに、やっぱりポンポン痛いのかな?



「まさかとは思うが……わざわざこれを俺に作ってきたのか?」

「……!? い、いえ、ち、違います! その、今日はお腹が痛くて……」

「そうか」


あー、やっぱりポンポン痛かったのか。それで自分用のやつを俺にくれたのか。万が一、反応的にヒロイン説も考えたけど、それはないようだ。



ん? 私がもし除名されたら? いや、アンタが居なくなったら誰が俺に剣を教えるんだよ。金くらい俺がだすぜ?



日本でも塾とか、習い事ってお金出すからさ、そんなにそう言うの抵抗がない。そう言うと、先生は俯いた。


そ、そんなにポンポン痛いのかな……。あー、先生苦労人らしいし、最近まで騎士団除名とか言われてたからな。俺とこうやって訓練することで安心感を得て、緊張感が溶けて


ポンポン痛くなったのかな?



「どうした?」

「い、いえ……」

「……、今日はもういい」

「え?」

「色々、抱えているような気がする。そんな状態でも集中できんだろう。それに、毎日訓練は流石のお前もきついだろう。今日は帰れ」

「あ、は、はい」



俺がそう言うと、先生は直ぐに訓練中止を宣言、やはりポンポン痛かったんだな。ダッシュで帰って行くし。無理に付き合わせて悪かったな。


――フッ、流石、だな。俺は気遣いが出来る主人公だから、賢明な判断が出来たぜ


俺の気遣いに先生が気付いたのか分からないが、師弟で気遣いをしあう。何て素晴らしい師弟関係なんだ!!


そうだ、今度お腹に良い、薬でも買ってあげようかな?




■◆



1名無し神

最近の転生者、面白奴居なくね?


2名無し神

あー、確かに。ちょっと、普通の奴多いよな。まぁ、でもしょうがない。


3名無し神

最初は転生させるだけで面白かったけどさ、やっぱり飽きがくるよな、あれだけ無差別に転生させたら


4名無し神

フェイって言うおもろい奴おるで


5名無し神

だれ?


6名無し神

あー、噛ませキャラ転生なのに自分の事を主人公だと思ってる奴だろ?


7名無し神

あいつ、クソおもろい


8名無し神

え? マジ、そんなやつおるのか?


9名無し神

どういう感じなん? 詳しく


10名無し神

魔術才能なし、剣術は才能アリ。あと精神が異常←ここ大事


11名無し神

ふーん


12名無し神

フェイ様のこと話してる?


13名無し神

フェイ様はウケル!


14名無し神

いや、最近の中でアイツはマジで熱い


15名無し神

転生させたん誰?


16名無し神

アテナだろ?


17名無し神

へぇ、気になるなぁ


18名無し神

円卓英雄記って言う鬱ノベルゲーの噛ませキャラに転生、しかし、気づかずに主人公ロールプレイしてる感じ


19名無し神

あ!! 俺そのノベルゲー知ってる! ロり巨乳のユルルちゃん大好きなんだ!


20名無し神

>>19

もう、フェイに誑し込まれとるで!


21名無し神

>>20

それ、まじ?


22名無し神

>>21

マジマジ、ガチガチに惚れてる。抱かれてもまんざらでもない感じすらある


23名無し神

いや、でもあれはしゃあない


24名無し神

判断早いしな!


25名無し神

もし、ユルルが人を襲ったら、フェイが腹を切ってお詫びいたします!


26名無し神

聖騎士長、ずっと笑ってたな


27名無し神

マジかよ。俺のユルルちゃんが……推しだったのに


28名無し神

諦めろ、もうフェイのもんだ。写真でシこっとけ


29名無し神

>>28

推しじゃ逆に抜けないんだよ!


30名無し神

それな! 推しだと逆に抜けない


31名無し神

ボウランとか結構良い感じじゃね?


32名無し神

あー、俺はアーサー


33名無し神

アーサーコミュ障すぎでキモイ


34名無し神

>>33

包茎は黙っとれ


35名無し神

>>34

包茎じゃないんですけど笑。勝手に妄想してだせえ


36名無し神

>>35

本当の事言われたからって、怒るな笑


37名無し神

これは、包茎だな。間違いない


38名無し神

先端がドリルのやつね笑


39名無し神

ドリル包茎笑


40名無し神

いや、でも、フェイ様が一番。早く死んでくれないかな?


41名無し神

>>40

怖い怖い怖い


42名無し神

なんで、死んでほしいん?


43名無し神

だって、死んでくれたら魂、私の物にして、ドロドロに溶かして一生側におけるじゃん


44名無し神

いや、マジでサイコパス。お前、フレイヤだろ?


45名無し神

フレイヤだな、このヤバさは


46名無し神

この、ユルルって子は処女なんだろうね? でないと認めないよ


47名無し神

処女厨が居るぞ笑。ってことはお前、ヘスティアだろ笑


48名無し神

いや、でもユルルちゃん可愛いな。ガチで俺は応援したい


49名無し神

でもさ、フェイ全然気づていないぞ笑


50名無し神

ポンポン痛いのかなって、バカか?


51名無し神

アイツの中で完全に師匠ポジだろ。あいつ思い込み激しいから


52名無し神

ドンだけヤバい精神してんだろうな。人間じゃ、稀じゃね?


53名無し神

>>52

主人公だと強く暗示がかかり

他者の暗示無効

主人公だから怪我も普通

怪我への恐怖耐性

主人公だから痛みに耐えるのは普通

痛覚への耐性


54名無し神

ヤバすぎだろ。何やコイツ。


55名無し神

精神はガチで歴代人類でトップクラスだと思う


56名無し神

ユルルちゃん、報われるかな


57名無し神

23歳までろくに恋とかしたことないらしいし、多難だな


58名無し神

可愛すぎる。


59名無し神

ユルル、フェイには既に、股ゆるゆるやな。焦ったユルルがフェイに逆夜這いの展開待ってます(笑)


60名無し神

>>59

死ね


61名無し神

>>59

死ね


62名無し神

>>59

死ね


63名無し神

キモすぎて草も生えない。


64名無し神

>>59

これゼウスやろ


65名無し神

この頭おかしい感じは間違いない


66名無し神

フェイって奴がそんなに好きになれん、キモすぎ


67名無し神

あ?


68名無し神

>>66

あ、フェイガチ勢に殺されたな


69名無し神

そんなの居るんか?


70名無し神

いるいる


71名無し神

結構人気出てきてる。死んだら魂はアテナ回収らしけど、かなりの金額で欲しいって奴が沢山いるらしい。フレイヤとか


72名無し神

お、そうなんだ


73名無し神

いや、フェイとか大したことないだろ


74名無し神

>>73

殺すぞ。フェイ様に向かって、そう言う事言うな。上から目線で言いやがって、お前何様だよ


75名無し神

>>74

いや、神様だよ


76名無し神


77名無し神

マリアはどうなん?


78名無し神

フェイ弱体化の元凶か。大体マリアが悪い


79名無し神

せやな、マリアが悪い


80名無し神

でも、マリア結構可哀そうやで。ワイはゲームやってたから知ってる


81名無し神

>>80

どういうこと?


82名無し神

>>81

両親がアビスに殺されたみたいな話やろ?


83名無し神

>>82

違う、ワイはクリアしたから知ってるけど、マリアの√マジで救いない。トゥルーのヒロインみたいな感じになるんだけど、結構可哀そうな感じになる。それに両親云々も色々裏がある


84名無し神

どういうこと?


85名無し神

>>84

マリア、記憶改竄され取るってこと。ワイは知ってる


86名無し神

まじ? マジで色々ヤバいやん。流石鬱ノベルゲー


87名無し神

まぁ、でもフェイが何とかするやろ


88名無し神

せやな


89名無し神

フェイがまだだって言って、全部解決やろ笑


90名無し神

と言うか、ユルルちゃんの時も思ったけど、シナリオ重くない?


91名無し神

シナリオライターがビターエンド好むからやろ


92名無し神

ワイ、知ってる。その人、素直なハッピーにはそんなにしない。入団試験に居た受験者半分以上死ぬ。それに、トゥルーとアーサーも選択肢ミスったら死ぬこと多いで


93名無し神

え? じゃあユルルちゃんは死ぬの? 死なないよね?


94名無し神

あそこで、フェイが見逃して、自由都市行ってたらエグイ目に遭って死んでた。


95名無し神

流石フェイやな


96名無し神

まぁ、もしかしたらなんやかんやで自由都市行くこともあるかもだけど、そしたら危ないかもな


97名無し神

まぁ、フェイが何とかするやろ


98名無し神

だろうな


99名無し神

謎の安心感ある


100名無し神

これからも見守っていきましょうね










――――――――――



名無しの神のモデルは読者の皆さんです。それと語るだけで何もしてこないですので安心をしてください。



面白ければ、モチベになるので感想、レビューよろしくお願いいたします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る